コラム

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経営改革に必要なファシリティ・マネジメント
1. 「働く人」を大切にする会社が生き残る
~ ハードだけじゃないファシリティマネジメント ~

100年に一度の危機で、日本のモノツクリは大きな壁に直面しています。失業者も増え、働くことを確保するのが第一で、近年盛んにいわれてきた「ワーク・ライフ・バランス」も、"ライフどころではない。まずはワークだ"という風潮になっています。


そんな逆境の中のモノツクリ企業の中で、働く環境を重視することで、みんな生き生きと輝いている会社もあります。そのひとつとして、岐阜県関市にある鍋屋バイテック会社をご紹介します。


「いい製品は、いい環境から」をスローガンに掲げる鍋屋バイテックの創業は1560年、桶狭間の戦いにさかのぼります。織田信長が鉄砲を武器として使った最初の戦いでした。鉄砲をメンテナンスするために鍛冶屋として始めたのがルーツです。その後、鍋釜も手がけるようになりました。関市は今でも金物の町として名高いですが、その歴史はここに始まります。


450年経った今、鍋屋は「楽しく働く」「失敗を恐れない」ことが他にはない特殊ねじや半導体製造装置の精密機械部品などを世界に供給している競争力高い企業に発展しました。
現在の岡本太一会長は、社長のとき、家族の名前まで覚えられるのは200名までだと、社員数をその程度に抑えてきました。社員の誕生日に、職場へ行って、「奥さんの○○子さんは元気か、三男坊の△△君は野球うまくなったか」と声をかけるためにです。社員を大切にする心が直接伝われば、働く人のモチベーションは自然に上がります。


鍋屋バイテックの働く環境作りは徹底しています。開発技術が生命線の会社ですが、「研究室に閉じこもるだけでは、いい製品は生まれない」と、プールやエアロビクス機器、マージャンまでそろえ、頭の切り替えを積極的に勧めています。休日にはそれらの施設を開放し、プール開きパーティなど、家族ぐるみでライフを楽しむことにも力を入れています。工場の作業服は別ですが、モノツクリの会社には珍しく、みな私服で自由に伸び伸びと働いています。人の個性を大切にする感性がこんなところにも表れています。


ひとりひとりの能力や技術を伸ばすことにも力を入れていて、職場にはスキルボードと名づけられた全員の取得した資格やレベルなどの一覧表があります。TOEIC450点と書かれた隣には800点の人もいたりして、ここでは発奮させる仕掛けになっています。厳しさも同居しています。


工場とは呼ばず、「工園」と名づけているだけあって、緑豊かな環境の中にきちんと整理整頓された建物が整然と並んでいます。オフィス環境もすばらしく、1993年の日経ニューオフィス賞で、ベストオフィス イン ジャパンに選ばれています。


また、早くから環境問題にも取り組み、2000年にはISO9001(品質)とISO14001(環境)を同時に取得し、2004年には日本では少ない労働安全衛生マネジメントシステムOHSAS18001の認証も取得しました。ここにも働く人に配慮した感性が表れています。品質・環境・労働安全衛生の3つを一元的に運営する統合マネジメントシステムを構築し、地球に優しい、安全で質の高い"モノツクリ"を実現しています。


「働く環境」は、個人々々の就業や研修システム、福利厚生を充実させることと同時に、オフィスや工場を自然環境と共生するように配置し、仕事がしやすく健康的に生活できる環境を整備することも重要と岡本さんは考えています。そうすれば、おのずとオフィスや工場などのファシリティにも関心が高まります。


ファシリティ・マネジメントは単にハードを整備するだけでなく、働き方や働く意欲をかきたてるための仕組みをつくるソフト・マネジメントでもあるのです。ハードとソフトがうまくマッチングすると、この大不況の中でも、モノツクリ企業として燦然と輝き続けられるのです。


これからしばらく「働く人の視点」からファシリティ・マネジメントを見る情報をお届けしたいと考えています。

小田 毘古
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