コラム

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経営改革に必要なファシリティ・マネジメント
2. 「ワーク・ライフ・バランスより"ライフ・ワーク"・バランス ~ 株式会社シグマクシス」

この不況下、毎月採用を続けている会社があります。昨年5月にゼロからスタートして、もう200名を越す社員が働いています。シグマクシスという会社です。


三菱商事とRHJインターナショナルの合弁で作られた会社で、ビジネス・コンサルティング・サービスを生業としています。代表取締役CEOは倉重英樹さん。独特の経営理論を持っていて、これまで日本IBM副社長、PwCコンサルティング、日本テレコムなどの経営に携わってこられました。「社員のモチベーションを最大化することが仕事の成果につながる」と主張されます。倉重さんは「理想的な会社を作り上げたい」と、いろいろな要素を新しい会社に盛り込みました。


働き方での柱は「ライフ・ワーク・バランス」を実現するために、いつでもどこでも価値創造ができる仕組みや制度を整えました。"ライフあってのワーク"と、世の中でいうワーク・ライフ・バランスを逆にしています。
「会社に必ずしもこなくていい。自分がもっともパフォーマンスを出せる場所で仕事していればそれでよい。アウトプット重視」を明確に打ち出し、そのための情報システムやWEB会議システムなど、個人個人のワークスタイルを支援する仕組みを完璧にしています。全員が裁量労働の対象です。また、ダイバーシティにも力を入れていて、「キャリア」と「出産育児」を両立しながら、自らの専門性を追求できる環境として、育児休暇、看護休暇の他、出産祝金が第一子10万円、第二子20万円、第三子は何と100万円支給されます。まさに国が泣いて喜ぶような少子化対策を企業がやっているのです。


オフィスは「森の中で働く」ことをイメージしているだけに、とてもユニークです。自由な発想と創造性を発揮できるオフィスデザインにこだわりました。「オフィスで働くことが楽しくなる」「人に自慢できるオフィス」も、社員のモチベーションアップにつながると、オフィスの効用を倉重さんはよくご存知です。


2008年9月1日、シグマクシスの新オフィスがオープンしました。その日の倉重さんは自らのブログにこう記しています。
「オープン当日、私は昼すぎに外出先から新オフィスに入った。先週末まで寄せ集めの椅子とレンタル机で仕事をしていた社員たちは、「森」をデザインモチーフにしたオフィス空間で、激変した環境に照れくさいような、でも明らかに輝いた顔をして新しいオフィスの中を動き回っている。(中略)「おやつの時間です」と秘書から声がかかった。初日にあたり、ビジネスパートナー各社からシュークリームやらドーナッツやら甘いものがどっさり届いているので、中央のマーケットで広げ、全社員でいただくのだという。仕切りがないので、大きいフロアでも声をかければ全員に届く。「おやつですよー!」というスタッフの掛け声に応じて、あちこちから社員たちが集まってきた。コーヒー片手におやつを食べる社員たちから笑顔がこぼれる。(中略)私はドーナッツにしようと、カラフルなドーナッツが並ぶ箱を覗き込み、「これは何? そっちのは何?」と、あるスタッフに尋ねた。最初は答えてくれたスタッフも全部を把握しているわけではなさそうで、しかも場の面倒をみるのに忙しく、しまいには「いちいち聞かないでください。どんどん召し上がれば、中身が何か分かりますよ」と言われてしまった。健康のことを考えると何個も食べられないから聞いたのだが、それでは、と小さいのを1つだけ手にとり、社員の輪に加わった」(日経ビジネスON-LINE/倉重英樹のCEO日記"会社を創る")


倉重さんはこうも言っています。
「会社経営でいちばん重要なのは人、Human Capitalである。社員のモチベーションを高める要素として、オフィスは大切な役割を持っている。自分のオフィスを友達や家族に自慢でき、"見に来て"といってくれたら、その社員はそこで働くことに喜びを感じ、会社への帰属意識も高まっている証拠だ。経営改革の中で、それまでのやり方を変える必要に迫られたとき、オフィス移転やレイアウトチェンジのタイミングで、働き方などビジネスプロセス変革にチャレンジするのが、もっとも効果的だ」


オフィスは単なる仕事の場所ではありません。一日の少なくとも3分の1を過ごす生活の場所になっている人も多いでしょう。そのオフィスを経営改革のツールに使うことはライフ・ワーク・バランス推進の観点からも、とても重要なことなのです。


オフィスの形だけ変えてもうまくはいきません。社員の「働き方」を考えることが先であることは言うまでもありません。トップの意志が鍵を握ります。

小田 毘古
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