コラム

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経営改革に必要なファシリティ・マネジメント
5.多様な働き方を阻害し競争力を弱める"PC持ち出し禁止"
~IT時代の新しい働き方に本当に必要な管理とは?

言行不一致の日本企業
「どこでもオフィス」という言葉が一般的になってきました。情報化が進み、ノートブックPCを持っていれば、街中では無線LAN、家では光ファイバーで高速な通信やデータ処理が可能な時代になっています。


企業も生産性の観点から、フリーアドレスや在宅勤務などで、社員の仕事の内容や生活に合わせた働き方を推進しています。次世代育成支援法も、このようなフレキシブルな働き方を積極的に採用することを勧めています。官民あげての支援でワークライフバランスも押し進めようとしています。


しかし、企業はこれらの新しい動きに積極的かというと、そうでもない事例がこのところ増えています。その一例にPCの「社外持ち出し禁止」があります。ウイニーのウイルス問題や企業の機密情報、個人情報の漏洩など、PCを媒体とした犯罪やトラブルも跡を絶ちません。このため、ノートブックPCの社外持ち出しを禁じ、会社の仕事はオフィス内に限定するところも多く、その大半は日本の企業です。


この流れは時代に逆行しています。なぜこんなことになってしまっているのか、そこには日本企業の「画一的なメカニズム」が見てとれます。


多様な人財の多様な考え方による多様な働き方
日本といえば「モノヅクリ」。効率的な工場の生産システム、きちんとした就業制度、上から下への管理体制など、優れた製品を生み出す一糸乱れぬ仕組みは日本企業の財産であり、工場型の運営には最適でした。しかし、このシステムを会社全般に広げたことが、IT時代の新しい働き方には障害となっています。


研究開発、営業などには、"多様な人財の多様な考え方による多様な働き方"が企業の活性化と成長に欠かせません。画一性からの脱皮が求められています。ダイバーシティ、多様性の尊重がこれからの企業の鍵を握ります。


私は前回のコラムの中で「会社のルールも最低限にして性善説をベースにした"働く仕組み"の中で、働く人が伸び伸びと育っていき、多くの"自立・自律できる人財"を育てていくかがこれからの企業の進むべき道でしょう」と述べました。しかし日本企業のPC持ち出し制限を見ていると、ダイバーシティどころか、画一性へ逆戻りしているように思えてなりません。


PC管理は性善説で対応すべき
その一方で、すべてのデータをサーバー側でコントロールできるシンクライアントPCが普及したら、持ち出しを緩和しようという声もあがっています。これなら情報漏洩などの問題を防げるからです。「究極のセキュリティ対策がない状況では、社員は信用できない」と言っていると同じことです。


例えばIT産業を例にとると、日本の名だたる会社はすべて「右ならえ」で持ち出し禁止です。一方、外資系の企業、IBM,HP,シスコシステム、アクセンチュアなど、いずれもPC持ち出しを制限していません。それもシンクライントではなく、現状のPC主体で、ファイアオール、暗号化など可能な限りのセキュリティ対策をしていますが、根底に流れるのは「社員は良い環境を提供すれば、正しく良い仕事をする」という性善説の考えです。


なぜ外資系にできて、日本企業にはできないのでしょうか。「自立してない社員」の日本、「自己責任」の外資というバックグラウンドが見えてきます。


画一性が日本をダメにする
同じ考え、同じ行動をしていれば安全、責任は自分にないという、画一的マネジメントに慣れきってしまった弊害がこのPCセキュリティに表われています。またウイニーや個人情報保護法などの事故や規制にあまりにも敏感に反応する"あつものに懲りてなますを吹く"状態に陥っています。


フレックス勤務を取り入れたある大手企業が、最近、利益が減ったからフレックス制は中止したという話を聞いて非常に驚きました。なぜフレックスと利益が関係するのか?ここにも「画一的労働がいちばん良い」という経営者の本音が見てとれます。「多様な働き方」が会社の将来につながるなどとは想像もつかないのでしょう。


「グローバル競争に勝たねばならない」と経営者がいくら力んでも、ITを使いこなせず、ダイバーシティを理解できないようでは勝ち目はありません。自ら競争力を失う働き方をしていることに気づかなくてはいけません。

小田 毘古
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