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FMではやってはいけない御柱祭の教訓
前回、信州諏訪の御柱祭とFMの共通性ということを書きましたが、引き続き、こんどは御柱祭で垣間見た負の部分から、FMを推進するうえで"他山の石"になると思われるお話をいたします。
■目の前で人が落下した
5月の連休には、建て御柱といって、諏訪大社に運び込んできた丸太を神社の四隅に立てて、御柱祭はフィナーレを迎えます。
20m近い丸太を立てるには、ワイヤを丸太に取り付け滑車を通して徐々に引き上げていくのですが、丸太の先端から下部まで、10人から30人もの氏子を乗せたまま立てていくのです。
最初は、丸太に横一線に立っていますが、角度が急になるにつれ、氏子は足場を支えに垂直に立つ形になります。
5月8日下社の春宮の建て御柱で、その事故は起きました。
私の見ている目の前で、ほぼ垂直に立った柱の先端に乗っていた3人が、突如落ちたのです。
2人は15mの高さからまっさかさまに神社の石畳にたたきつけられました。
もう1人は、命綱のカラビナが柱を支えているロープに入っていたようで、逆さに吊り下げられたままロープ伝いに急降下していきました。命綱をしていなかった2人は即死、命綱をしていた1人は軽傷でした。
おおぜいの氏子の歓声は、突如悲鳴に変わりました。
■事故は慣れと油断から起る
「命綱による安全確保」は、事前の申し合わせでどの地区も知っていたことだったそうです。しかし、あえて徹底まではせず、それぞれの地区に任せていたそうです。
そういえば、既に終わっていた上社の建て御柱の写真を見ても、命綱をつけている人もいれば、つけていない人も結構見られます。
過去の歴史の中で木落としや川越しで死者が出たことはあるものの、建て御柱で死者は出たことはなかったそうです。この事故で、「命綱による安全確保」は、地区や個人の判断に任せていたことが、わかりました。
今回の事故は、柱が揺れないように左右で支えていた何本かのワイヤの1本が、留め金ごとはずれ、そのはずみで御柱が急にゆれて揺れ方が大きかった先端の3人が振り落とされたものでした。
過去、事故が起きたことがない建て御柱であったこと、そのために「安全確保の徹底」が形骸(けいがい)化していて、個人の判断に任されていたこと。死ぬ覚悟で乗るといわれる木落としが無事終わったことなど、まさに慣れと油断が生死を分けたのです。
■FMの安全対策も訓練、演習が大切
総務やFMの重要な機能に「安全(Safety)」があります。
万一、地震や火事などの災害が起きたとき、まず人の安否を確認し、怪我した人を速やかに救助して家族の安否を確かめます。
次にオフィスや工場の被害を調べ、早急に修理し、立ち上げるには何をすべきかをプライオリティをつけて判断して対応策を遂行します。これを災害復旧計画 (Disaster Recovery Plan)と言います。
これは、BCP(事業継続計画:Business Continuity Program)に連携して、総務やFM部門がやるべきリスクマネジメントです。
特に災害復旧計画(Disaster Recovery Plan)の「人」に係わる行動は、アクションプランと呼ばれる細かい行動計画を用意する必要があります。そしてこれに沿って、「人」が予想したように動くか、ひんぱんに訓練しなければなりません。
企業では火災訓練や避難訓練など定期的に行われていると思いますが、形骸(けいがい)化していませんか?
また、災害時の行動マニュアル、管理体制など、紙に書いたものがたいてい用意されていますが、このとおり組織が、人が動くか検証しているでしょうか?
特に管理体制は社長がトップで、その下が総務担当の役員、総務部長やFM部門長などの
組織表になっているのが一般的ですが、いざ災害が起きたとき、これで命令系統が機能するでしょうか?
私の経験した抜き打ち的な演習では、社長も役員も近くにおらず、連絡もとれず、自分たちで決断、行動しなければならなかったということがありました。基本的には、その災害が起きたときの現場がすぐ対応できる組織表にしなければ意味がないのです。
最近は、自然災害のほか、テロ、誘拐、サリンなどの化学物質攻撃、機密漏えいなど、総務FM部門が対応しなければならない、危機対策の範囲が広がっています。
それは、立派な建前をいくら並べてもダメで、頻繁な訓練や演習を行い、基本事項を徹底して無意識でも動ける習慣を身につける必要があります。
御柱祭の事故は図らずも、FMのリスクマネジメントの大切さを思い出させてくれました。
■観客へのサービス精神に欠ける御柱祭
御柱祭では、案内書の予定時間とおりに、木落としも川越しも、建て御柱も進行しません。1時間遅れなどはざらです。
下社秋宮一の御柱の場合、11:30予定の建て御柱を、私は朝9時から一般観客席で立ったままで待っていましたが、予定時刻になっても始まりません。御柱の周りで何をやっているのか、まったくわからないまま立ち続けるのです。
午後1時を過ぎても動きはありません。裏手に建てる御柱が通るので道を空けろと、ぎゅうぎゅう詰めの観客席がさらに押されて悲鳴があがり、4時の列車で東京へ帰るという老夫婦はつらさと悔しさを残して帰っていきました。
結局、柱が建ち始めたのは午後3時半、4時間遅れです。この間、なぜ遅れているのか説明は一切ありません。
前々日に事故があったので、慎重なのは理解できますが、神事だから遅れるのは当然、イベントではない、そこのけそこのけという観客無視の姿勢はいただけません。
PRプロモーションをやって、全国から100万人以上の観光客が来て、大成功と言っていますが、来た人にとっては不親切極まりない運営です。
これなら、予定時間表など配ったり宣伝などせず、氏子だけの祭りに徹すべきではないか、と思ったほどです。
■FMの基本は「サービスを受ける人への奉仕」
FMはハードを守り、"人"にサービスする機能です。利用者に必要情報をタイムリーに流し、よいコミュニケーションを保ちながら、"お客様にサービス"する精神が必要です。
ただ「管理」や「規則」をふりかざしての対応は、反発を受け、思うような効果は上がらないでしょう。
説明なしで数時間待たされた御柱祭の経験は、図らずもFMの基本である、コミュニケーションやホスピタリティの大切さを再認識させてくれました。
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