コラム

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"FMはお金で計る"という考え方

■「FM」、その理論とは?
 FMとは?と聞かれたら、「オフィスや不動産のコストを適正化する理論や技術」と私は答えます。
なぜ、その答えにいたるのか。そこで過去に私が取り組んだFMについて少し触れてみたいと思います。


■バブル時代から学んだこと
 私が日本HPの不動産部長になったのはもう20年も前の話です。

 1990年は、日本経済がバブル絶頂から少し下り坂に入った時代でした。それでもオフィスの家賃は高騰し、月坪10万円などというビルもあったほどでした。
この常識はずれともいう状況を打開するためにHPはワールドワイドで不動産戦略を展開しました。
そのときの基本は下記の4点でした。

【1】中長期にわたってコスト削減できるマスタープランを作成する。
【2】機能別に自社ファシリティか賃借かの基準を決める。
【3】自社物件は「不要」になったときのリスク対策を多角的に考えておく。
【4】投資判断はNPV(正味現在価値)で行う。

 この戦略展開の際に求められていたのは「コスト削減」「事業サポート」でした。


■経済的リスク低減の戦略
 リスク対策という点が目新しく、他との共同投資でビルを建ててリスク分散を図ろうと、GEキャピタルや年金ファンドと、アメリカのアトランタに共同のビルを建てたこともあります。

 日本では、神戸に工場を建てるとき将来の事業縮小を想定して、売却しやすいように土地を分割し、オフィスビルのような縦長の工場を建てました。これは15年後になって売却したときの決め手になったと聞いています。


■NPV評価
 自社ビルか賃借にするかは15年程度のNPV評価(正味現在価値法)で判断し、有利な案を採用するという、自社または賃借にこだわらない投資評価次第でした。
それまで借りていたビルを購入に切り替えた溝口の建物も、家賃を払い続けるよりも自社物件にする方が有利という判断からでした。


■FMコスト評価指標をつくる
 八王子の工場をオフィスビルに建て替え、そこに分散していた機能を集約もしました。
 これらの戦略で、日本HPのファシリティコスト指標「総経費に占める比率」は1993年に14%越していたものが、5年後の1998年には10%を切るまでに下がりました。
 第1次不動産戦略は功を奏した形となりました。


■お金には時間的価値がある
 NPV評価というのは、「金銭には時間的価値がある」ことを前提に将来の金銭価値を推定し、現在の価値に割り戻して評価することです。

 例えば、15年後に100万円にするためには、今いくら貯金しておけばよいか逆算するのです。
金利が高ければ、当然、元金は少なくてすみます。逆に金利が低ければ、沢山積んでおかなければなりません。


■金利ゼロの時代は別な評価も
 1990年当時は金利が5%台でしたから、NPV評価は非常に意味がありました。
しかし現在のようにゼロ金利が長期的に続くとなると、わざわざNPV評価をやる必要もないかもしれません。

 そういうときは、投資金額を何年で回収するかを推定する回収期間法(Pay Back Period)という方法を使うことができます。

 フリーアドレスを導入しオフィス環境を大幅に替えたいとき、面積削減によって家賃が浮く分を何年で元をとるかなどのプロジェクトで、私はよく使いました。その基準は2年でした。2年で投資コストを回収できるプロジェクトならOKという考えでした。


■長期と短期のFM戦略で使い分ける
 このように長期で投資評価をしたいときはNPV評価、短期で見たいときは回収期間法と使い分けます。ゼロ金利がいつまでも続くとは思えませんから、金銭に時間的価値の要素を盛り込んだNPV評価法が理論的には有効といえるでしょう。
ただし、上述したような短期のプロジェクトには回収期間法でもよいでしょう。

 FMマネージャには、「お金でFM戦略を冷静に評価する」という姿勢と知識は欠かせません。

小田 毘古
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