コラム

リスクマネジメント / メンタルヘルス / メンタルサポート術

復職成功者が語る「社員のメンタルサポート術」
~【メンタルに不安を抱えた人が会社に望むこと】~
第2回 上司編

連載2回目 上司編
(部内全体でのサポート理解の促し)

うつ病は「心の風邪」と言われます。この表現は、誰しもが患い得る病だという意味ではそのとおりかもしれません。しかしながら、うつ病と風邪とでは、あまりにも違いが大きすぎて、私はこの表現は適切ではないと感じます。特に、風邪は同僚全員が何となく想像できる病であるのに対し、うつ病を患っている人の心模様はおそらく想像できない人がほとんどだという違いは、とても大きな違いと言えます。そして、この違いは、周囲との関係に表れてきます。

うつ病は目に見えるものでも、容易に想像できるものでもないため、知らず知らずのうちに、会社内、組織内で周囲との軋轢を生んでいる場合があるのです。その軋轢が不安を招き、何とかしなければという焦りを招くといった具合に、うつ病へと続く悪い循環に陥ってしまうことになりかねません。この悪い循環を断ち切るためには、本人の努力の他に、周囲のサポートが必要です。そこで、責任ある立場の方々にぜひお願いしたいのは、応援団になっていただきたいということです。

当事者にとって、少なくとも責任ある立場の方が全面的に応援してくれているという事実は、組織で働くうえでとても心強い支えとなります。えこひいきをしたり、過度に甘やかしたりする必要はありません。ただ、「最近どう?」「調子はどう?」とこまめに声をかけていただく程度で十分です。

責任ある立場の方々の、小さな心配りは組織の空気を大きく変える力があるものです。ぜひとも率先して応援していただけたらと思います。

そうはいっても、メンタルに不安を抱えた人にどういった仕事を割り振るかという実務上の問題もあるでしょう。シビアな価格競争が求められる営業の最前線に配置するのは、とても難しいことだと思いますし、特に「うつ病」を患っている人にとっては、決断を下すことはとてもストレスを感じるものですので、こうした判断・決定を要する役職に復職して間もない人を就けるのは難しいと私は思います。そこで、まずは周囲との軋轢を払拭できる仕事がベターではないでしょうか。

具体的には、データベースへの入力作業や図面の電子化、会議の用意、社内資料の作成など、地味だけれど重要な裏方仕事です。こうした地味な裏方仕事というのは、他の人があまりやりたがらない類のものです。しかし、誰かがこうした役割を担ってくれているおかげで、花形の仕事がうまく回っているのもまた事実です。私自身、復職してから「どう接したら良いか」と戸惑う周囲との壁をなくすために、裏方仕事を率先して引き受けましたが、とてもうまくいきましたから、自信を持ってオススメできます。

地味な裏方仕事というのは、チームの一員として、周囲から認めてもらえる力をもった仕事とも言えます。裏方仕事を黙々とこなしている姿は、周囲の見る目を変える力があるものです。メンタルの病気は本人の努力だけでどうにかなるものでは決してありません。周囲の理解と協力がどうしても必要です。

しかし、いつまでも「お客様扱い」をするわけにもいかないでしょうし、そのままの状態では、徐々に周囲は理解や協力とは真逆の「あの人がいなければ良いのに」という空気になってしまいがちです。そこで、メンタルに不安を抱える状態でも仕上げることができ、かつ周囲の役に立つ仕事である裏方仕事をまずは任せること。その仕事を責任ある立場の方が応援すること。この2つを行うことで、回復へとつながる良い循環を作っていけるのではないかと私は考えています。

酒井 一太
MENU