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ファシリティマネジャーの条件

2012年10月19日

 ファシリティマネジャーとはどのような条件を備える人なのでしょうか。
ファシリティマネジャーとは、ファシリティマネジメント(FM)を実践する人ですが、多くの国内企業では、ファシリティマネジャーという職能を明確にはしていません。
経営企画や総務、管財、建築、施設、営繕など、それらを総合的に実践する人のイメージですが、実際はその一部を総務部や施設部系の人が実践しています。

 グローバル化した企業では、職能としてファシリティマネジャーの役割を明確にしているところがあります。
経営とは本業が上手くいくように、経営基盤の4要素「人・金・情報・もの(ファシリティ)」をマネジメントすることですから、これらを如何に上手くマネジメントするか、そしてそれらの状況を株主にも報告しなければいけません。そのためにはファシリティマネジメント部やファシリティマネジャーとしての職能が必要になるのは当然のことになるわけです。

 グローバル企業でのファシリティマネジャーは、プロとして自覚と職能を持っています。ですから、他の企業にもヘッドハンティングされるのです。
国内企業の総務の方はいかがでしょうか。多くの方は、サラリーマンとして就社(就職ではなく)し、あまりプロとしての自覚はありません。社内で経理や人事など経験し、その流れで総務も経験する。そして総会対応などと同様にFMをついでにやるというような方が多いのではないでしょうか。
そこで2〜3年何とかやり過ごせば、また別な部署で新たな経験をということになる場合が多いのが現状ではないでしょうか。

 中には、総務のような何でも屋の部署には来たくなかったなどと言われる方もいます。残念ながらそのような企業は、経営基盤の4要素のひとつ「ファシリティ」を効果的に実践できているとはいえません。ゆえに、その企業は、せっかくの宝物を無駄にたれ流ししているのです。プロがいませんので、効果的にFMもできません。もちろん将来は明るくありません。これが、多くの国内企業やお役所の姿です。

 でも、少しずつ変わってきています。民間もお役所もFMの必要性を感じて、取り入れ始めています。

 それでは、プロとしてのファシリティマネジャーはどのような素養を持つべきでしょうか。私の独断と偏見でまとめるファシリティマネジャーの条件5ヶ条です。


 まず、第1にファシリティマネジャーというぐらいですから、ファシリティ関連の知識を持つこと。
これは、ファシリティ(土地・建物・設備・家具・IT等)と財務・会計関連の知識です。どちらかというと文科系の方は、建築や不動産など技術関連の知識が弱く、理工系の方は、財務関連の知識が弱いのが一般的です。

 国内企業では、技術系の方のファシリティマネジャーが多く、かつ男性が圧倒的に多いのが特徴です。欧米などのFMの大会に行くと、MBAやマネジメント系の方が多く、女性の方が過半で、FMの考え方の違い、幅の広さを感じます。
一般知識として、世の中の変化を敏感に感じ取るセンスも必要です。


 2番目には、マネジメント能力です。
一般的に言うと目標に向かってチームをまとめていく能力です。そのための業務管理能力はもちろんですが、チームメンバーのモチベーションをあげながら、費用・時間等のバランスも考えられる能力です。

 そのためには、メンバーから信頼感を得られなければいけません。指導力はもちろん、メンバーを引き付ける魅力が必要かもしれません。それ以上にメンバーの力を最大限に引き出せることが必要かもしれません。そして関係部署との調整能力、あらゆる場面でのコミュニケーション能力が必要です。このような方はなかなかいないかもしれませんが、少なくともマネジャーと名のつく仕事をするからには、これらのことを目標において頑張って頂きたいものです。

 これらに反して困ってしまうファシリティマネジャー像は、せっかくメンバーやコンサルなどいるのに、細かなこと、例えばデザインや色決めなどなんでも自分でやって、周りには、ろくなやつがいないと言う方です。そして、自分がやった自分がやったと自慢する人です。自分が、能力ある周りの仲間や業者をパートナーとして使いきれていないだけなのです。人の意見を聞く能力がなく、逆に自分勝手にことを運ぼうとする人は、マネジャーには向きません。
まさに、皆の意見を上手くまとめていけるファシリテーターとしての能力は、ファシリティマネジャーにとっては必須と言えます。


 3番目は、企画力とプレゼンテーション能力です。
企画するためには、現状や真のニーズをしっかりと把握し、分析し、そこから課題は何か発見することが必要です。その課題解決のための企画であることこそ意味があるのです。

 現況をしっかり捉えていないで、いきなり企画しても、結局、後戻りしたり、方向違いの企画になったりします。そしてこれらの成果を、経営者に分かりやすく、短時間に説明できるプレゼンテーション能力が必要です。それらについては、本コラムの「経営者へのプレゼンテーション」をご参考にしてください。

 日常のプレゼンテーション能力と表現能力、コミュニケーション能力を合体したような能力として、日常会話はもちろんですが、電話やメールでの情報交換能力も大切です。これらについてもいかに気持ちよく、誤解のないように、タイムリーにコミュニケーションできるかも非常に大切なことです。


 4番目は、ヒューマンな能力です。
あなた自身が人間的魅力を持つことはもちろんですが、対人的な能力についてどれだけ備えているかも必要です。
人への思いやりやサービス精神、FMでは特にホスピタリティなどといって、心のこもったおもてなしを重視しています。オランダの大学等では、FMのホスピタリティを学ぶ学科があるほどです。FMを通して、人々におもてなしをして喜んで頂ける、ありがとうと言って頂ける、そのことに喜びと幸せ感を感じられることがファシリティマネジャーの能力というより素養かも知れません。

 かつてリッツ・カールトン・ホテルの日本支社長であった高野登氏からホスピタリティのお話を聞いた時、教育はもちろん大切だが、江戸しぐさの傘かしげ(雨の日にすれ違う時、濡れないように傘をさりげなく外側に避け合うしぐさ)ができる人を採用することの方がもっと大切ではないかというようなことを話されていました。
これはファシリティマネジャーについても同様に言えることかもしれません。このようなことに喜びを感じ、楽しめる人がファシリティマネジャーに適した人と言えるでしょう。

 ファシリティを通して、人々を、組織を、社会を幸せにすることに喜びを感じられる人、この素養さえ持っていれば、先の1番から3番までの内容は努力すればできてしまいます。むしろ、ファシリティマネジャーとして育てるには、そのような人に、後から技術等の専門的なことを教育した方が良いと主張する人もいるほどです。


 5番目は、語学力です。
グローバル化した現在、国内だけに目を向けていてはいけません。FMのプロとして成長するためには、海外のファシリティマネジャーとも積極的に交流し、情報を得ていかなければなりません。

 そのためには、国際語としての英語力を身に着ける必要があります。海外の企業に勤めてないから大丈夫ではなく、国内企業でも海外からどんどん情報がきますし、企業自体がグローバル化しないと生き残れない時代です。特に若い方には必須です。

 日本から世界に羽ばたくファシリティマネジャーがいっぱい出ることを期待しております。

成田 一郎
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