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採用ブランディング【第1回】なぜ企業は自己分析をしないのか

2018年03月07日

■自分を磨き上げていく学生たち

 今年も3月1日から採用のナビ媒体が軒並みオープンし、本格的に就職活動が始まりました。とはいえ、昨年の8月から行われているインターンシップへの参加企業も増えており、それに引っ張られる形で学生の参加者も増えているので、ようやく大っぴらに始められる、というのが企業側の本音かもしれません。

 学生はここから「志望動機」「自己PR」を磨き上げ(今まさにその最中でしょう)、人気企業の倍率を突破していきます。学生側からすれば、これを磨き上げることが内定への近道にもなりますし、ほかの個別の課題も、これの「派生」ともいえるものなので、基礎をしっかり固めるというところでしょうか。内定をいくつもゲットできる学生は、大手企業の採用数増加という要因以外にも、「志望動機」「自己PR」を見事なまでに磨き上げているという特徴があります。

 それは自身の半生を振り返っての、「強み」「弱み」の棚卸しであり、エントリーシートや面接は、それがどのように志望する会社で生きるかを問われているプレゼンテーションの場です。彼らの主張がよければ、評価したくなるのは、企業側の立場に立ってもよくわかる気がします。

■学生にだけ自己分析をさせて、相変わらず何もしない企業

 一方で、企業側はそうした学生の動きを見つつ、相変わらず「どう選別するか」という視点で採用を行っています。そのため、いつまで経っても「母集団が集まる」時代の選考方法を変えられず、多くの企業が「どうしたら母集団が集まるのか?」という点に課題をフォーカスし続けています。

 しかし、採用ブランディングの観点でいえば、どんどん進む大手志向の時代に、知名度のない企業が同じ方法を行っていても、とうてい勝てるわけがないということです。大手企業は黙っていても人が集まるので、必然的に「落とす」選考をするほかありません。それにもかかわらず、いつの間にかこの手法が採用のスタンダードになっています。

 今までのようにナビ媒体が効果を上げ、たくさんの人が勝手に集まるような時代ではすでになくなっているのに、いつまで経っても企業側は、○人採用したいから○人集めなければ、という「母集団」にこだわっています。ナビ媒体が採用を見える化したことは、この確率論のような採用方法を、一見科学的にしました。しかし、それだけに頼ってしまうことで、採用予算がますます増えていってしまうという無限地獄への始まりも引き起こしています。この意識や採用方法をどう変えるか。それが今、多くの企業に求められていることなのです。

■自分たちの棚卸しをしなければ、一生採用できない時代へ。

 待っていてはダメなのですから、自分たちから仕掛けるのです。そのため、採用イベントなどによる「ダイレクトリクルーティング」が主流になりつつあり、大手ナビ媒体のイベントも、半年後まで地方も含めてすでにキャンセル待ちになるほど激化しています。

 しかし考えてみてください。これは学生優位の採用です。学生の後ろにはたくさんの企業のオファーが待っています。そこから自社に選んでもらうのに、まさか丸腰で採用活動に臨もうとしていないでしょうか。学生はたくさんの企業から「選別」されることを前提で、志望動機や自己PRを磨き上げているのに、ほとんどの企業はみずからの採用「勘」と「経験」に頼り、上から目線で採用を行おうとしています。これではただ採用する手法が変わっただけであり、いくらダイレクトリクルーティングだといって、イベントに出たところで結果を出せるわけがありません。

 企業も学生と同じように、自社の「強み」や「弱み」の棚卸しをし、何を中心に訴求すべきか(=採用コンセプト)を決めて臨まなければ、せっかくの魅力も伝わりません。「学生って、仕事内容とか、休日とか、福利厚生とかそういうのを重視するよね」という漠然とした肌感覚で、だいたいどの企業も同じような説明をしますが、そもそもその方法自体が差別化をはかれず、埋もれてしまう原因になっています。

■当たり前になっていることこそ企業の魅力

 「うちに魅力なんてありますかね?」

 そういう質問をされることがよくあります。しかし魅力がなければ、そもそもその会社は存続していません。なぜ自社の棚卸しが難しいのかというと、学生が志望動機や自己PRを考えるに苦労しているのと一緒です。当たり前すぎて、気付かないことがたくさんある。だから学生たちもOB訪問や学生同士の勉強会などを通してそれらを磨くのです。

 しかし、その「当たり前」になっていることこそ、強い文化 ― 企業の「らしさ」であり、もっとも重視しなければならないことです。なぜなら、学生たちは、入社してきた際に、まずその文化にさらされることになり、なじめなければ結局辞めていってしまうからです。そしてその文化は、企業設立や事業の目的そのものである「理念」にいちばん強く現れます。

 理念を土台にした採用コンセプトを作ることによって、もっとも差別化された、効率的で本質的な採用ができる。まさにこれが採用ブランディングなのですが、気付いている人たちは残念ながらまだまだ少ないのが現状です。絶対に採用できるようになるゾーンなのに、行う企業が少ないのです。

深澤 了
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