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RPAの活用【第2回】RPAの導入効果を検証する

2018年04月13日

 前回の内容でRPAがどのようなもので、なぜ今注目されているかについてはご理解していただけたと思う。次はどのぐらいの効果を生むものなのかが気になるところだろう。今回はそのRPAの導入効果を検証してみる。

■人事、給与業務のうち約70%以上の操作・運用はRPAで代行できる

 株式会社オデッセイでは2017年にRPAテクノロジーズの「BizRobo」を活用し、「SAP HCM(※)」を利用した人事業務をロボットに代行させる国内初のRPAソリューション「HRRobo For SAP HCM(以下、HRRobo)」を開発した。事前に実施した業務フローベースでの適用分析では、「SAP HCM」の人事、給与業務のうち70%以上の操作・運用がロボットで代行可能という結果が出ている。ロボットが24時間×365日で稼働できることを考えれば、人事部門は、ほとんどの定型業務から解放されそうだ。

※「SAP」は企業の経営資源を有効に活用し経営を効率化するために、基幹業務を部門ごとではなく統合的に管理するための、ドイツのSAP社が開発・販売するソフトウエアパッケージの一種。「HCM(Human Capital Management)」は、従業員の能力を企業の重要な経営資源と捉え、各従業員のビジネス活動の成果から人材開発による能力向上までを統合的に把握し、従業員の能力を最大限に活用し、継続的な人材開発を進める人事管理手法。

■絶大なRPAの導入効果

 「HRRobo」には、すでにSAPを利用した定型業務を処理する開発済のロボットが複数体含まれているので、そのロボットで導入効果を検証してみる。

(1)給与口座の登録・変更ロボット
 新入社員が大量に入社する毎年4月に、人事部の手を煩わせる給与口座の登録・変更業務がある。社員からの登録・変更申請を基に、銀行コードを全銀協のサイトで確認して人事システムに登録・変更する作業だ。この一連の作業をHRRoboに代行させると、人間が1件当たり約10分程度かかっていた作業が、約30秒程度でミスなく処理できるようになった。実に人間に比べると20倍以上の処理速度向上である。

(2)通勤交通費確認・登録ロボット
 通勤交通費(定期代)の申請・変更処理も煩雑だ。変更届の受領、記載内容の過不足確認、経路検索サイトを参照しての適正経路。さらに定期券金額の確認、払い戻し金額の算出、新規定期内容の人事システムへの変更登録、本人へ連絡など、非常に面倒な作業を人間が対応している。あまりに面倒なので、適正経路確認等を省略している会社もあるくらいだ。この作業もHRRoboに代行させた結果、人間が一件あたり約7分かかっていたところを1分と、7倍の速さで処理することができた。
 
 これらの結果から、RPAの導入は、人事業務に大幅な生産性向上をもたらすことがわかった。

 ただ、ここで認識しておきたいことがある。RPAの導入効果の考え方だ。一般的には、上記のように「〇〇倍の処理速度」等、人間と比べた処理速度が注目されがちだ。確かに処理速度が定量的に比較できるのでわかりやすい。

 しかし、実際の導入効果として大切なのは、処理速度が向上することではなく、その業務自体をロボットに任せることにより人間がかかわらなくてもよくなるということだ。その視点で導入効果を算出してみると以下のようになる。

中途を含めた新入社員500人/ 年、その他に給与口座者100人/年、通勤経路変更者500人/年の企業の場合

(1)給与口座変更・登録業務(対象者600人) 
 100時間(6000分)≒約13人日分の定型業務を削減
(2)通勤経路変更・登録業務(対象者1000人)
 約117時間(7000分)≒約15人日分の定型業務を削減

 この場合、この2業務をRPA化するだけで約1.5人月分(28人日分)の定型業務から人間が解放され、対応に要する人件費の削減にもつながることになる。つまり、上記のような業務を30業務程RPA化すれば、年間専任者2人分に匹敵する定型業務と人件費の削減も可能になってくる。規模の大きい企業であればさらに導入効果は増大するだろう。

■今後さらに拡大するRPAの導入効果

 この絶大な導入効果を生むRPA、今後はどのように進化していくのだろうか。日本RPA協会の発表によれば、RPAのレベルは「Class1」から「Class3」までの3段階に分かれるといわれており、現時点のRPA技術は「Class1」と定義されている。条件分岐で判断できる定型業務は自動化できるが、例外業務の対応は困難な状態だ。

 次の段階である「Class2」は、「AI(ディープラーニング)」などとの連携によって、非構造化情報も扱えるようになり、非定型の業務も、一部代行可能なレベルになるとしている。現時点でも、AIで手書き文字を認識して入力するという事例も出てきていることを考えると、「Class2」はそう遠くないうちに実現できるのだろう。

 そして、当面の最終段階である「Class3」では、RPAが高度なAIと連携し、業務プロセスの分析、改善から意思決定までの自動的に対応することが可能となる「高度な自立化」を果たすとされている。現時点の見込みでは、2021年ごろまでにはこのレベルに到達するらしい。

 このようにRPAがさらに進化すれば、その導入効果も加速度的に向上していくであろう。次回は、この魅力的なRPAを導入するうえでの留意点について解説する。

秋葉 尊
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