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人事 / 人材育成 / タレントマネジメント

企業力を高めるための「タレントマネジメント」【第1回】多くの企業は何を期待して「タレントマネジメント」を導入するのか

2018年07月04日

■「タレントマネジメント」とは

 雑誌やネットで「タレントマネジメント」という言葉を見るようになって久しい。改めて「人事労務用語辞典」(日本の人事部)で調べると、「人材こそ企業の競争力の源泉と見なし、採用から配置、育成、キャリア形成といった一連のプロセスを効果的に管理・支援する仕組みを指す」となっている。その通り、と思うが、私自身はもう少し具体的に「人材情報を活用し人材を計画的かつ効果的に採用、育成、活用することで企業競争力を強化する仕組み」という意味で理解している。別の表現をすれば、「人材の特徴が把握できる情報を活用することで、企業の財産である人材の力を効果的に見極めたり、引き出したり、高めたりすることができるシステム」ということもできるだろう。

 「タレントマネジメント」という言葉は、一般的に情報システムの名前として利用されることが多く、事実「タレントマネジメント」を実現する仕組みとして数多くのベンダーがクラウドサービスやパッケージソフトを販売している。その代表的な機能としては、「タレントプロファイル(人材情報の照会)」「サクセッションプラン(後継者計画)」「キャリア開発」「eラーニング(学習)」「採用管理」等がある。タレントマネジメント単独のシステムもあれば、人事/給与システムと一体となっているシステムもあり、「いざ、何を選ぶか?」となると迷うところだが、その点は次回以降で取り上げたい。

(図1)タレントマネジメントシステム(人事/給与一体型)の全体イメージ

タレントマネジメントシステム(人事/給与一体型)の全体イメージ.jpg

■「働き方改革」の影響? 今タレントマネジメントが注目される理由

 それでは、今、何故「タレントマネジメント」が注目されているのだろうか? 私は、大きく3つの理由があると思っている。

(1)企業の深刻な人材不足
 昨今、日本企業は必要とする人材が集められず非常に苦労している。今後も労働人口そのものが急速に減少することで、さらに人材の獲得が困難になると予想している企業も増えてきた。そのため、企業は採用や人材育成の質を高めることにより、ますます貴重な財産となる人材を最大限戦力化しようとしている。その実現手段として採用選考の時点で自社の業務特性にあった人材か否かを分析、判断し、戦力になる可能性が高い人材を採用する仕組みや、従業員のポテンシャルを見極め、優秀層を計画的に幹部へ育成する仕組みとして活用できるタレントマネジメントに注目しているのである。

(2)政府主導の「働き方改革」
 「働き方改革」では、長時間労働の是正が焦点となっており、先日参議院で可決・成立した関連法案では残業時間の上限が設定され、月平均は60時間が上限とされた。これを超えると罰則の対象となってしまう。
 以前、日本の労働者全体の残業を60時間/月に抑えた場合の影響を試算している興味深い記事を読んだ。その影響は、240万人のフルタイム労働者の追加確保が必要になるという結論になっていた。この試算の精度は不明だが、いずれにしろ「働き方改革」で労働時間の規制が厳しくなるのは間違いがなさそうなので、従来と変わらない業務量を限られた時間で処理できる生産性が日本の企業には求められることになる。つまり、従業員の生産性向上を後押しする仕組みとしてもタレントマネジメントが注目されている。

(3)日本企業のグローバル化の進展
 今に始まったことではないが、日本企業の海外進出は目覚ましい。それに対応するために、現地の法人を買収してグループ企業に加える動きも盛んだ。このように企業規模の拡大と組織の国際化が進むにつれて、人材管理の難易度が高まるのは当然の成り行きである。要は、「どこに、どのような人材がいるか」が把握しにくい(できない)状況になっているため、人材活用も進まない状況になっているということだ。

■タレントマネジメントはどう活用できるのか

 主な活用シーンとしては、適材適所配置を実現するための情報活用になる。たとえば、ポテンシャルが高いにもかかわらず、成果が出ていない従業員を割り出し、該当する従業員が担当している職務に求められる特性(適性、能力、経験、資格等)とその従業員の特性を照合させることで担当職務への適性度合いを確認した上で、より適性の高い職務に異動させる。これにより本人のモチベーションが高まり業務の生産性も向上するという仕組みだ。また、昨年ぐらいから注目度が急上昇しているRPA(Robotic Process Automation)を併用することによって、人間が担当する業務量を減らすことができるため、さらなる生産性の向上が期待できる。

 また、タレントマネジメントに期待されるのが、グループ横断的な人材の活用である。前述の通り、グローバル化が進み、企業の規模が大きくなると、人材管理が困難になる。そのため、グループの人材情報を一元的に管理し、日本本社はもちろん、各グループ会社でそれが活用できるようになれば、グループ人材を有効に活用できると考えられる。特に企業の将来を担う幹部候補生の育成については、候補者をグループ全体の中から選抜し、計画的に育成することによって国境を越えた優秀層の選抜人事を行うことが可能になってくる。まさにグローバル企業にとって、タレントマネジメントは必須の仕組みといっても過言ではないのではなかろうか。

 このように、現在の日本企業を取り巻く環境の変化によって、「タレントマネジメント」が必要になってきているのだと思う。

 次回はこの注目を集める「タレントマネジメント」を有効に活用するために導入する上で何に留意すべきかを考えてみたい。

秋葉 尊
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