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採用ブランディング【第14回】新卒採用をあきらめると、経営効率が悪くなる

2018年09月28日

■能力が高くても文化にフィットしなければ活躍できない

 9月3日付の東洋経済オンラインに、「いま『新卒採用を諦める勇気』が必要なわけ。そもそもなぜ新卒にこだわっているのか」というコラムが掲載されていました。しかし、本当に新卒採用はあきらめるべきことでしょうか。新卒がなぜ幹部候補になりえるのかというと、何色にも染まっていない新卒を、自社の文化風土の中で育て、その中で実力を発揮しやすくするからこそなのです。

 どんなに能力的に優秀な中途でも、文化風土になじめなければ、活躍人材になることはありません。これはプロ野球のトレードを例に見てもわかることです。人気球団にいるときは、「素材はいいがどうして活躍できないんだろう」といわれ、別の球団に行った途端に活躍する。こういう例はいくらでもあるのです。

 もちろん、新卒でも文化になじめなければ活躍ができません。しかしなじめれば、ほかの文化の色がない分、吸収も早い。だからこそ、経験を蓄積していくことができます。採用ブランディングは「理念・価値観」で採用する方法ですから、新卒時点で、理念や価値観をしっかりと理解し、共感して入社してもらえることで、活躍人材になる角度はグッと上がるということです。

■採用のやり方が間違っているからあきらめたくなる

 前述のコラムの文中には6000万円のコストが浮いた、とありますが、10人採用するのに6000万円はそもそもかけ過ぎですし、かなり間違った方法で採用していたことがうかがえます。3人の人件費を社会保険まで含めて2000万円ほどと換算すると、4000万円を採用活動自体につぎ込んでいたことになります。それだけやって採用できないなら、あきらめる気持ちもわからないではありません。しかし、採用は途中でやめてしまうと、積み上がった資産が一気に崩れ去りますし、始めるときはまた一から積み上げていかなくてはならないというのは悩ましいものでしょう。

 ただ実のところ、新卒採用は広告やプロモーションよりも、口コミや先輩の同行に大いに左右される傾向にあります。だから1人、自社にマッチした優秀な人が採用できると、そこからさらに採用できることがあるのです。その人を媒介に、後輩や友達を紹介してもらう作戦を取ることは採用では常套手段ですし、そうでなくても、自然と後輩たちが集まってくることもありますから、採用は芋づる式で上手になっていくものでもあるのです。そもそも大いなる勘違いは、新卒採用よりも、中途採用の難易度が低いと思っている経営者の多いということ。逆です。中途採用は、採用に着手する難易度が低いだけなのです。

■中途採用のほうが楽であるというわな

 中途は、いつでも着手できるもの。極端いえば、思いついたときが採用するときかもしれません(私は勧めませんが)。新卒はある程度年間スケジュールで動くので、着手のタイミングが難しいと考えがちですが、その心理的なハードルを越えれば、実は新卒の方が採用難易度ははるかに低いのです。

 少し考えてみるとわかりますが、中途が働く場所や給与、休日休暇など、企業の「スペック」で判断されがちである一方で、新卒もそこは重視しつつも、より理念や価値観で企業を選ぶからです。これは以前からもお伝えしている通り、弊社の調査結果では、新卒内定者の約70%が理念・価値観を重視し、そのうちの約95%が志望動機に影響すると答えています。

 中途も基本的には同じなのですが、やはり仕事の現場を経験している分、スペックも重視されます。このことからも、中途ほど大企業志向になりますし(特に今は転職で給与も上がるので)、だからこそ中小企業は中途採用がしにくいともいえます。

 このようにして中小企業が成長を志向して社員を増やしたいと考えれば、新卒採用を計画的に行っていくことが、経営効率を考えても絶対にお勧めなのです。

■新卒採用は企業成長のレバレッジになる

 アルバイトから社員にすればいいだろうという意見も聞きますが、学生にとってアルバイトと入社はまったく違います。アルバイトほど、「場所、時給、休み」が重視される傾向にあり、理念や価値観が効きにくいのです。しかしまったくそれが効かないかというと、もちろんそうではありません。

 たとえばスターバックス(スタバ)でアルバイトすることは学生たちにとっては憧れであり、就職活動で話せるいいネタになるとも考えています(スタバでのバイト経験者の多くが面接でうれしそうに語る場面もたくさん見てきました)。つまり、ブランド力があるところは、その限りではないのです。ただ、企業ブランド力をつけることは一朝一夕には難しいことです。これはスタバだから成り立つことでもあります。

 しかし採用市場に限ったブランド力だったらどうでしょうか。採用ブランドを高める、つまり就職したい人気企業になることは、やがて企業ブランド、つまり売り上げを上げ、企業を成長することにつながります。どんなに採用に困っている企業でも、面接で会い、「ごめんなさい」をする人間は採用する人数以上にいますし、求職者もある程度は「本気」でその企業のことを調べますから、自社のことを知ってもらういい機会でもあるのです。

 採用は自社のファンになってもらう絶好の場。まずは採用市場に集中して、そこから売り上げが広がっていくと考えれば、新卒採用は企業を成長させる絶好のレバレッジとなるはずです。

深澤 了
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