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採用ブランディング【第15回】テクニックに走るな。採用成功は本質を追求してこそ

2018年10月25日

■早期化への動きは止まらない

 前々回、「2021年新卒採用で起こる企業の戦術変更」というテーマで、経団連ルールがなくなったあとに起きることを書きましたが、直後、経団連は2020年度採用も現行通り6月面接解禁を発表しました。

 多くの人たちがネット上などでどんな変更が起こるか、という予想を展開しましたが結局、どの人も「早期化」の点では同じ見解でした。経団連もこのような動きも加味して、いたずらに就職活動をあおってはいけないと、現行通りを決めたのかもしれません。

 しかし、経団連ルールがなくなるほどのインパクトはないにせよ、インターンシップ参加企業が増えているのは事実ですし、私の肌感覚的にも企業の動きが早まっている実感があります。2年前までは1月に入らなければ動かなかった企業たちが、年内中に動き始め、今では秋くらいから翌年の3月を見据えるようになってきています。この流れを加味すると、経団連ルールがあるにせよ、ないにせよ、企業の動きが早まり、それに引きずられて学生の動きも早まっていくでしょう。

 結局、3月のナビオープンまでの水面下での動きが増えるだけなのではないかと考えています。年々学生数も減っていくわけですし、一気に社員数を確保できるチャンスの新卒採用はますます激戦になっていくと思われます。

■スペックで採用しがちな中途採用

 一方、新卒採用にも増して深刻なのは中途採用です。今は大企業の業績がいいこともあり、転職で給与が上がる時代です。そうなると、知名度のある大企業はますます有利になります。「働く場所」「給与」「福利厚生」という条件を重視する傾向にある中途採用では、圧倒的に大手企業が有利です。実際に私が担当している中小企業の中途採用では、なかなか採用できないと嘆いている方が多いように感じます。

 どの中途採用の募集原稿を見ても、新卒以上に「場所」「給与」「福利厚生」が叫ばれる傾向にありますが、考えてみてください。いくらそれらを声高に叫んだところで、大手企業には勝てないですし(上には上がいる)、仮にそれらで入社しても、同じ理由でまた他社に行ってしまう可能性が高いのです。

 そもそも給与を上げるということは多くの企業にとって難しいことですし、これから採用する人の給与だけ上げるわけにもいかないでしょう。「場所」「給与」「福利厚生」は容易に比べられるので、「スペック」で採用すると私はいっていますが、このスペックのみで採用する企業がいかに多いことか。そしてそれが本質でないか(もちろん重要なことではありますが)かは、少し考えていただければわかっていただけるはずです。

■なぜ中途採用を戦略的に行わないのか

 転職者はこのようなスペックを重視してしまいますが、本当にやりたい仕事だったら、場所や給与は関係ないはずです。もちろん精神衛生上、暮らしていけないほどの条件は問題外なのでここでは除外します。

 では企業は中途採用で本当に自社の魅力をしっかりと伝えられているでしょうか。伝えるためには、「自社の魅力=強み」の整理ができていなければなりません。「自分たちはなぜ今の仕事をやっているのか」、たとえ縁やなりゆきで今の場所にいたとしても、続けている理由があるはずです。自分だけで思い付かなければ、社内の活躍人材はどうでしょうか。がんばろうという意志がなければ活躍人材にもなれません。

 そして中途採用でほしい人材像は明確でしょうか。それはしっかりと社内の採用チームで共有化されているのか、どこにアクセスすれば、そのような人材に会えるのか、そのためのアクションプランを持っているのか......。結局、中途採用といえども、やることは新卒採用と変わりません。中途採用は思い付いたらすぐに媒体で募集できますが、その気軽さからこのようなことをしっかり考える企業はまれです。しかし競争が激しいからこそ、精緻に戦略を実行できなければ勝てないのです。

■テクニックに走るな。本質こそ近道

 総務省統計局の調査では、2016年での転職人口は306万人と発表されています。文部科学省の調査では、新卒が毎年だいたい40万人です。前者はまとまって動くものではないので、決まったスケジュールもありません。また上記のように、ステップアップのため、より大手企業を選ぶ傾向にあるので、採用する難易度は圧倒的に中途採用の方が高いのです。漁業でたとえれば、前者が一本釣りに近いのに対して、後者は網を張る感覚かもしれません。

 しかし、自社の魅力をしっかり伝える、この1点では同じです。条件での優劣、動く場所などに違いはあっても、採用戦略を打ち立てることの本質に違いはないのです。自社の魅力やほしい人材像を掘り下げたあとに、「ではこの強みに共感してくれる、こんな人物像はどこにいるのか?」と考えるべきなのです。それがいわゆるマーケティングでいうところのコミュニケーション戦略というものです。

 「自社にこんな人がほしい。でもなかなか伝わっていない。伝えるために、何をすべきなのか」、それを考えることこそ、採用の突破口になるのです。採用はテクニックに走るのではなく、本質を追求してこそ。遠回りのようで実は近道になるのです。

深澤 了
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