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採用ブランディング【第19回】社長が目立て!

2018年12月20日

■みんな社長の考えを知りたい

 いろいろな企業にヒアリングをすると、自分は絶対に人の前に立ちたくないという社長がまれにいます。ただし、採用はできていないからできるようにしたいという思いはあるようです。気持ちはわかりますが、心の中で「どれだけ悪いことをこれまでしてきたんだろう(笑)」と思ってしまいます。

 やみくもに前に出ろ、といっているのではありません。社長はいわずもがな、その会社のトップです。会社の目的である理念や自社の価値観、そして戦略、ビジネスモデル、自社商品の優位性など、何から何まで、いちばん情熱的に、実感を込めて話せるのが社長のはずです。

 求職者にいちばん近いのは、もちろん現場の人ですから、そのみなさんの実感もとても重要です。しかし、トップが何を考えているのか、これからどうしたいのかがわかることは、求職者にとってとても貴重なことです。特に大手企業にいれば、トップの話を聴く機会はそれほど多くありません。メディアで初めて知ることもあるでしょう。ましてや採用という場は自分の人生がかかっている場所。むしろ求職者は聴きたいのです。社長という存在は、本人が思っている以上に、影響力があることを自覚すべきでしょう。

■下手でも、一生懸命さが心を打つ

 大手企業で社長が採用に出てくる機会は、最終面接くらいです。出てこないこともあります。ましてや説明会に出てくることすらまれです。だとするなら、もし社長が採用にコミットできれば、大きな差別化ができます。採用は直接接点が自然な形である仕組みですから、それを生かさない手はありません。社長が語ることで、求職者の心が一気に動くこともあるでしょう。

 ある一部上場企業では、数年前まで年間数百回行われる説明会のすべてに社長が出てきて、語り掛けていたそうです。当時から100人以上の採用を行っていましたが、しっかりと採用目標は満たせていました。情熱的に、だけど論理的に自社の魅力を伝えられる強力な武器に社長はなり得ます。

 社長の中には「自分は話すのが下手だから」と嫌がる方もいますが、求職者の目線に立ってみれば、あまり関係ありません。それよりも、社長が一生懸命話していること自体、心を打たれるものなのです。「それだけ採用に力を入れている」=「未来を真剣に考えている」というメッセージが伝わるからです。もちろんうまいに越したことはないので、練習はすべきです。プレゼンは単に場数を踏めばいいだけの話です。

■ストーリーを語れ!ファン拡大のチャンス

 採用は同時に商品やサービスのことも知ってもらえるとても貴重な機会です。飲食業界なら、店舗を知ってもらうことで、すぐに売り上げにつながるかもしれませんし、BtoB企業でも売り上げにつながるチャンスです。自社を希望しているということは、同業他社も希望している可能性はあります。だとすれば、将来取引先になるかもしれません。

 その企業のことを真剣に考えている人たちの集まりが採用の母集団ですから、BtoB系の企業で、知名度が高くない企業ほどそこにチャンスがあります。しかも採用はマーケティングやブランディングの世界でよくいわれる「ストーリー」を込めて話すことができる場なのです。採用にはそれを聞いてもらえるだけの自然さがありますし、求職者はそのようなストーリーを聞いて判断したいとさえ思っています。

 ストーリーを難しく考える必要はありません。その商品やサービスを作った背景、プロセス(苦難を含め)、失敗体験、成功要因を自分なりの言葉で伝えるだけで、ブランドに深みを与えることができます。そこまで知った人は、そのブランドのことを好きになってしまうかもしれません。

 採用という場でそれができればまさに一石二鳥。自社の商品やサービスのことをよく理解し、その上で入社してくれるのであれば、その人の経験の中で、さらにブラッシュアップした改善ができるかもしれません。

■価値観をすり合わせる機会になる

 多くの企業は自社の仕事内容や給与、休日、福利厚生など、外側については一通りの説明をしますが、肝心の理念、戦略、戦術(ビジネスモデル、商品・サービスストーリーなど)についてはほとんど語りません。ここを語ることは、自社の心の内を少し明かすことを意味します。なぜならここには、自社の価値観を伴った判断が存在しているからです。

 それを開示することは、求職者が自分で「ここなら何ができるだろう」と考え、自分の価値観と照らし合わす機会にもなるのです。その上で、自社を志望してくれることは、自社への共感の下に入社することにつながるので、その人がいいパフォーマンスを発揮する土台になります。仮に自分にはちょっと違うな、と思えば、勝手に離れていくので、企業側にも求職者側にもメリットのある判断になります。

 知名度のない企業こそ、社長が前に出て語ること。創業社長ならより力強く話せるはず。だからこそちゅうちょせず、思い切って前に出ていってほしいのです。

深澤 了
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