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採用ブランディング【第20回】数ばかり追っているからいつまでも間違える

2019年01月08日

■リクナビができて母集団集めに集中すればよくなった

 企業の悩みの一つに母集団が集まらないというものがあります。昨今の少子高齢化、大企業志向の高まりを受けて、以前のように単に媒体に出稿するだけで人が集まる時代は終わりました。その話がまだ有効なのは知名度の高い大企業だけであり、中小企業にとって採用環境の厳しさは年々増しています。

 そもそもなぜ多くの人事担当者が母集団を集めることに注力するのでしょうか。それはリクナビが起こした革命によるものなのです。リクナビ(前身はリクルートブック)ができたことにより、それまでなかった採用マーケットができ上がりました。より効率良く、いい人材が集まる仕組みが作られたのです。そのおかげで、大体媒体に予算をいくら投下すれば、何人集まって、そこからどんなふうに選考していけば、内定を何人出せて、承諾がだいたいこのくらい、と計算できるようになりました。

 つまり、人材採用は母集団集めに注力すればよかったのです。ですが、長らく続いたこの信仰が、中小企業にとって終わりを告げていることは明白です。昔のように人が集まらない、だが今さらほかのやり方がわからない。だから人事担当者はひたすら母集団集めに頭を悩ますのです。

■成長しているのだから、必ず魅力はある

 採用ブランディングはもう何度もこのコラムでも言及しているように、自社の理念や価値観を、母集団集めの段階からぶつけ、共感してくれる可能性のある人を集めるという考え方です。こういうことをいうと、必ず「うちなんかに人が集まりますかね?」という質問が出てきますが、大丈夫です。魅力のない会社であれば、もうすでにこの世に存在しない会社になっているはずです。

 採用にいちばん苦労する企業は年間10〜20人程度採用を予定している(もしくは本当はそのくらい採用したいと思っている)企業です。そのくらいの企業は、成長は著しいですが、知名度がないことでかなり不利になっています。成長するということは、市場においては魅力が十分あるということです。それにもかかわらず採用市場で苦戦しているのは、採用において自社の魅力を十分に伝えられていないということ。すなわち、自社の魅力が整理できていないことと同義なのです。

 先に述べたように、採用ブランディングを行うと、自社にいかに共感してくれる人をそもそも集められるか、という思考になります。だから母集団の数が気にならなくなります。

■共感を考えず採用してきた日本の企業

 この「共感」という言葉はまさにブランディングの考え方です。デービッド・A・アーカーとともにブランド論を形作ったケビン.L.ケラーはその考え方を一歩進めて「『共鳴』こそ、ブランドイメージの形成における頂点である」と位置付けました。この視点こそ、これまでの採用活動においてまったく無視されてきた考え方です。

 とにかく人事担当者は母集団を集めることに躍起になってきたはずです。しかし、共感がなければミスマッチになる可能性が高く、逆に共感があることは、やりがいを持って一生懸命働く理由にもなりえるのです。採用がいつしか数でしか評価されなくなってしまったことが、このミスマッチの悲劇をもたらしているといえます。

 バブルの頃までは終身雇用が普通でしたが、今では年間380万人ほどは転職をします(学生は40万人ほど)。嫌なら辞めるでしょうし、まして今はどこも人手不足ですから、一昔前の転職と違って、給与も上がる可能性が高いです。つまり、採用時から、自社への共感がそもそも薄い人を採用しても、まったく本質的でないだけでなく、苦労して行っている採用活動そのものの意味までも問われかねないのです。これを繰り返してきたのが、日本の多くの企業の採用そのものなのです。

■採用数じゃない。共感数だ

 また、採用活動はなぜかPDCAサイクルが年に1回になることが多いと感じています。それは新卒採用のサイクルが半年〜1年で行われることが多いので、そのタイミングで予算作成が入るからでしょう。ここで数だけで採用を判断していると、今年は内定辞退が多かったから、もっと母集団を集めなければなない、だから予算を多く申請しよう、となります。そこでさらに媒体への予算投下やイベントを追加する施策を上司に提案するはずです。

 しかし採用したい人物像(ターゲット)も、自社の強みも曖昧にしたまま、そこで年間の計画を立てても、予算だけがかさみ、行動量も膨大になり、企業も人も疲弊するだけです。そして予算の少ない中小企業ほど不利になっていく、バッドスパイラルに今の採用は陥っています。

 採用ブランディングの考え方で数を重視するとは、たとえば、いかに今回の説明会で理念への共感が伝わったかということを調査して、次の説明会に生かす、というようなことです。採用数ではなく、共感数で採用を行わなければ、永遠に間違った採用を続けることになるのです。

深澤 了
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