コラム

法務関連 / 民法 / 債権法

改正民法で変わる債権法【その3】連帯保証人制度

2019年05月24日

 債権保全のための人的担保として、日本の経済社会ではよく連帯保証人が利用されてきましたが、改正によりどのような変更があるのでしょうか。今回は、個人が連帯保証をする場合にポイントを絞って解説します。

■連帯保証人とは

 連帯保証人とは、債権者の債権回収を確実にするための担保手段の一つです。本来の債務者である主たる債務者と連帯して債務を弁済する責任を負い、通常の保証人よりも重い責任を負います。

 債権者としては、主たる債務者の返済能力への不安や万一の倒産の場合にも、連帯保証人から債権を回収できるので、安心して取り引きを行うことができます。便利な制度である一方、安易に連帯保証人になってしまい主たる債務者に逃げられてしまうなど不当な責任を負うことになる問題もありました。

■連帯保証人制度の重要な改正事項

(1)個人根保証契約の極度額について
 売買基本契約や取引基本契約といった継続的な取り引きの基本契約となるものなどに連帯保証条項を設定し、債権者の権利を保全するため担保される範囲を広範なものにするケースが多く見られます。

 たとえば、「連帯保証人は、売主に対し、買主が本契約上負担する一切の債務を連帯して保証する」というような条項です。このような継続的な取り引きから、将来発生し得る不特定の債務をまとめて連帯保証の対象とする契約を、法的には「根保証契約」といいます。

根保証の連帯保証人が個人である場合、資力に限りがある個人に対して過大な責任を負わせることになり、連帯保証人を保護する必要性が指摘されていました。

 そこで、今回の改正により、個人根保証契約については、必ず「極度額」と呼ばれる連帯保証人の責任上限を定めることが義務付けられ、これに違反する連帯保証条項は無効となることが定められました。

(2)事業に関する債務についての特則
 次に、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする連帯保証契約については、連帯保証人が公正証書により連帯保証債務を履行する意思を表示して行わなければ、効力を生じないとされました。

ただし、連帯保証人が主たる債務者の実質的な経営者(一定の議決権を有する株主や取締役)である場合や、主たる債務の内容が貸金等の債務でない場合などについては適用されないとする例外が定められていることには注意が必要です。

(3)連帯保証人に対する主たる債務者からの情報提供義務
 連帯保証人の保護のためのもう一つの改正点として、主たる債務者から連帯保証人に対し、自己の財産状況等を情報提供する義務が定められました。連帯保証人となる人が、自分に請求が来るリスクを知った上で契約が締結できるようにするためです。この義務違反があった場合、連帯保証人は後日連帯保証契約を取り消すことができる旨も定められました。

(4)債権者から連帯保証人への情報提供義務
 また、主たる債務者だけではなく、債権者からも連帯保証人への情報提供が義務付けられました。具体的には、連帯保証人からの債権者への問い合わせがあった場合の回答と、主たる債務者が「期限の利益」を喪失した際に通知することです。期限の利益とは、契約書の条項の一つで、分割払いの1回の支払い期限に遅れた場合、主たる債務者はペナルティーとして残債務を一括で精算しなければならないということを指します。

■最後に

 今回の改正で事業者として注意すべきことは、自身が(1)「債権者である場合」と(2)「債務者である場合」に分けて考える必要があることです。

 (1)については、まず自社の取引基本契約書に連帯保証条項がある場合に、極度額を設定するように契約書のひな型を改正することが挙げられます。また、主たる債務者が連帯保証人への情報提供を怠ることにより、連帯保証条項が取り消されることを避けるため、情報提供を義務付ける条項を入れるとともに、債権者としての連帯保証人への通知義務を怠らないようにしましょう。

 (2)については、経営者以外の第三者に連帯保証を依頼する場合には公正証書を作成することを忘れないようにしましょう。

白石 哲也
​​MENU