企業年金:確定拠出年金

最終更新日:2010年03月10日

企業年金:目次

確定拠出年金とは、加入者個人ごとに掛金拠出額と運用収益が明確に区分されており、年金受取額は運用実績により変動するという制度で、企業が導入する「企業型年金」と自営業者等が加入する「個人型年金」の2タイプがある。

企業型年金

労使の合意により、確定拠出年金制度を導入した企業が採用するタイプで、対象者は60歳未満。企業は規約を作成し、掛金拠出は規約に基づき拠出限度額の範囲で企業が行う。拠出限度額は企業年金の加入の有無によって異なり、企業年金に加入していれば年30.6万円(月額2.55万円)で、企業年金に加入していなければ年61.2万円(月額5.1万円)となり、企業の掛金拠出は損金算入される。なお、加入者が企業の掛金に上乗せして拠出することはできない。

個人型年金

60歳未満の自営業者や企業年金に加入しておらず、かつ企業型年金を導入しない企業の従業員(以下、企業従業員)が加入できるタイプで、対象者は60歳未満。掛金拠出は拠出限度額の範囲内で個人が行う。拠出限度額は自営業者が年81.6万円(月額6.8万円)だが、国民年金基金に加入している場合には、国民年金基金との合計額で年81.6万円(月額6.8万円)となり、企業従業員は年27.6万円(月額2.3万円)となる。なお、個人型の拠出は全額所得控除できる。

加入対象者

企業型年金は、企業型年金を導入した企業の60歳未満の従業員が加入対象者となる。但し、規約において加入対象者となることについて一定の資格を定めることが可能。個人型年金は、60歳未満の自営業者、企業型年金を導入しない企業の従業員が加入対象者となる。なお、専業主婦(国民年金第3号被保険者)、公務員及び企業年金(厚生年金基金・適格退職年金)の加入者で企業型年金を導入しない企業の従業員は加入対象外となる。

給付

老齢給付金、障害給付金、死亡一時金の3つがある。老齢給付金は、年金または一時金で支給され、加入者が掛金拠出期間と運用だけ期間の合計で10年以上の場合は60歳から請求することができ、遅くとも70歳までに請求しなければならない。障害給付金は加入者が60歳になる前に傷病により一定以上の障害状態になった場合、年金または一時金で支給され、死亡一時金は加入者が死亡した場合にその遺族に対し一時金で支給される。

脱退一時金

確定拠出年金は、老後における生活保証のための給付という観点から、原則として中途で脱退することが認められていない。しかし、当面の間、加入者であったものが、専業主婦等加入対象外となった場合で、

  1. 60歳未満
  2. 現在確定拠出年金の加入者でないこと
  3. 障害給付金の受給権者でないこと
  4. 加入期間が1か月以上3年以下、または請求日の前月末個人別資産額が50万円以下であること
  5. 加入資格を喪失してから2年未満であること

に限り脱退することができ、一時金を受け取ることができる。

運営管理機関

確定拠出年金の加入者の立場に立って行動する代理人のようなもので、企業型の場合、企業自らがなることができるが、法人で主務大臣(厚生労働大臣及び内閣総理大臣)の登録を受ければ誰でもなることができる。運営管理機関は資産残高の管理等の個人情報記録、加入者が行った運用の指示のとりまとめ及び給付に関する事務を行う記録関連業務と、確定拠出年金における運用商品の選定及び提示並びに運用方法に係る情報提供をする運用関連業務の2つに大きくわかれる。

資産管理機関

企業型年金において拠出された加入者の年金資産を受け入れるとともに、企業の個別資産と加入者の年金資産を分別管理する機関。したがって、企業が倒産等で破綻した場合でも、流用されることなく加入者の年金資産は保全される。

資産管理機関は企業型年金では主として信託銀行、生命保険会社、損害保険会社、農業協同組合連合会が、個人型年金では国民年金基金連合会が行う。法人で登録を受ければ誰でもなることができる運営管理機関とは異なる。

加入者教育

確定拠出年金は自己の責任において年金資産の運用手段を決定し、その運用実績に応じて年金を受給する。このことから、加入者は金融商品の内容、リスク、リターン等の特性についての正確な知識や判断力が要求され、投資教育が必要となる。したがって、投資教育は非常に重要で、これが十分になされずに加入者が年金資産の運用において損害を被った場合は、加入者から損害賠償を起こされる可能性があるので加入者教育する側は注意が必要。

税制上の取り扱い

まず、掛金の拠出時における「企業型年金」は全額損金算入、「個人型年金」は全額所得控除となり、所得税、住民税が減額される。以下、「企業型年金」「個人型年金」共通で運用時における積立金(年金資産)は特別法人税が課税される。ただ、特別法人税は現在凍結中である。最後に、給付時において老齢給付金は年金で受給する場合は雑所得で公的年金等控除を適用することができ、一時金で受給する場合は退職所得となる。障害給付金は所得税、住民税ともに非課税。死亡一時金は相続財産として相続税の対象となる。

(執筆:有限会社人事・労務 代表 矢萩 大輔

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