|
失言癖がある人にとって、年末年始はつらい時期に違いない。「口は災いの元」というが、余計な言葉を発してしまったがゆえに、人間関係が悪くなった経験を持つ人はたくさんいるだろう。
今年もその時期が来たので、注意を促したい。
特に日頃から「早口」で持論をまくしたてるタイプの人は要注意だ。
頭の回転が速く広い見識もある、管理職ややり手営業担当者に多い。
自信家でもあるこのタイプ、確かに弁が立つがゆえに仕事ができるが、ただ人の話をあまり聞かなかったり、性格的に強情な人も多く、周りにストレスを与えているケースも目立つ。
そのため、本人も他の人とのコミュニケーションがうまく取れていないことにストレスを感じるようになり、そんなときに失言が飛び出すのだろう。これはまさに悪循環である。
年末年始は忘年会や新年会も多く、「お酒の力」がさらに加わることになる。その場合、思ったことを口にしたくなる衝動をいつも以上に抑えきれなくなり、取り返しがつかないような失言が増えるものだ。酒の席だからといって、言われたほうのおさまりがつく訳もない。「無礼講」なんて建前である。
失言によって上司や部下の覚えが確実に悪くなり、それが自らの成績悪化にもつながる。
そして年末年始に自業自得でまいた種は、春先にはしっかりと芽を育て、結果として職場から逃げるように「転職」という形で収束するケースも少なくないのだ。「春先に転職する人が多い原因は、年末年始の失言が原因である」という説があるかどうかは知らないが、あながち外れていないとは思わないだろうか。
「きじも鳴かずば撃たれまい」ともいう。「口は災いの元」と同じような意味である。自分を捕まえようとする猟師が近くにいるのに、つい「くぅぇ~」と鳴いて所在を明かしてしまう、うっかりものの「きじ」を例えたことわざである。
人間が不用意に不適切なことを言ってしまう場合に使うわけだが、ストレスを抱えていたり、疲労がたまっていたりする状況で失言は起きるようだ。またコンプレックスを刺激されるような出来事があった場合や、何か心が抑圧されるようなことがあったときにも、失言は増えるという。
その中でも、特に日頃から「早口」で話す習慣がある人は、心に浮かんだ思いをコントロールする間もなく、口に出してしまっているわけだから、「衝動」に対する「反応」のブレーキがきかなくなって、失言が生み出されていると分析できる。優秀なはずの「早口」ビジネスマンも、こうして足をすくわれることがある。
私は仕事柄、弁の立つビジネスマンの方に接することが多い。彼らは確かに考察力や洞察力があるわけだが、一つ注文をつけるならば、もう少しゆっくり話したらいいのではないかと思うことがある。
実際「早口」でまくしたてられると、聞いている相手はプレッシャーを感じるし、結局、話も色々な方向に飛ぶようになる。最終的に、聞いている相手は完全に取り残されてしまう。
「話がいろいろと飛んでしまって分かりにくくてすみません」などと当の本人は言い訳を言うが、弾丸トークにつきあわされた末に何を言いたかったのか分からないのでは、聞かされていたほうはいい迷惑に違いない。「早口」ビジネスマンの中には、こうして能力を疑われる結果になっているケースもあるだろう。
では「早口」はどうしたら直るのだろうか。
単純な話、まずはゆっくり話す練習を始めることだ。そのひとつの効果的な方法が、相手に話を早々にふってしまうことである。
つまり、ゆっくり話す練習をするには、「相手の話をじっくりと聞く練習」から始めるといいのだ。相手の話に対して、ゆっくりとあいづちをいれられれば話への理解も深まる。そうして相手のペースに合わせることで、自分も落ち着いた話し方ができるようになる。
管理職は時間に追われているためせっかちになりがちであり、その結果、「早口」上司も量産される。言うまでもなく、仕事ができる人イコール「早口」というのは大きな誤解である。
「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉もある。この言葉の解釈には諸説があるが、金よりも銀のほうが価値のあった時代の言葉がゆえに、「雄弁」のほうに価値があるという説は面白い。ただし一般には、「雄弁は大事であるが、時には沈黙が雄弁よりも効果的な場合もある」という意味で使われていることのほうが多いようだ。
どちらが正しいという議論はさておき、よくしゃべる人よりも、「寡黙で言葉少ない人」のほうが、時に凄味があるというのは納得できる話である。
2010年は、まずは「早口」をやめることから始めてみてはどうだろうか。
|