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やると一度決めてもだんだんと不安が持ち上がってしまい、自分の決心が鈍るような経験をしたことのある人は多いのではないだろうか。その典型例が「転職」である。
現状に不満を抱き、そしてそのような状況を打開したいと思ったことが原因で行動を起こして見事に転職を実現したとしよう。
ところが、転職先が決まりいざ働いている会社に辞表を提出した直後に、自分の心に押し寄せるものは何だろうか。自分で決意したにもかかわらず、「本当にこれでよかったのだろうか」とささやく、もう1人の自分の声である。その声は日増しに大きくなることもあるから、実に厄介である。
そして多くの場合、時を同じくして、あなたの心に潜むもう1人の自分にとって強い味方(敵?)も現れる。そう、職場やあなたの周辺にいる人たちである。下手をすると、自分がその会社を辞めようと決意した原因でもあった問題の上司や同僚たちから、退職の引き止めにあうこともある。
さらに困ったことに、あなたの心に潜むもう1人の自分は、本来あなたが毎朝鏡で見つめる、普段の自分よりもそうした周りの人の声に耳を傾けるようになるものなのだ。
不思議なものである。普段は人の抵抗には屈することない、戦闘能力の高いあなたでも、自分の心に潜むもう1人の自分が抵抗しだすと、手がつけられなくなってしまい、ときには理性すら失ってしまうこともあるのだ。
すると、他人から見れば、「それはちょっとおかしいだろう」と思うようなことを平気で考えたり、自分を正当化するための自己防衛の言動が増えてくる。これはまさに、自分の心に潜むもう1人の自分の声を抑えられなくなってしまった状態である。
私は人材コンサルタントとして、常に「転職の現場」にいる。つまり、多くの人が人生の転機を迎える、その現場に立ち会っているということだ。
言うまでもないが、転職をすることは大きな決断である。
毎朝起きる時間、家に帰る時間、そして通勤経路や生活エリアさえ変わるほどの大きな変化である。1日に長時間過ごす場所も一緒に仕事をする相手も変わる。収入も変われば出費も変わり、生活パターンすら変わるかもしれない。
それだけの変化があるわけだから、毎年転職しているような転職慣れした人にとっても、本人にすれば、できれば転職はこれが最後にしたい、または次は少なくても5年は働きたいと真剣に考えているという。
ただ自分の心に潜む、もう1人の自分の抵抗を抑えることは並大抵のことではない。
私はそうした状況に陥った人を何度も見ているが、そうした人たちは周りを巻き込み迷惑をかけながら、結局不安から生まれた「自分の心のざわめきに屈する」ことが多いようだ。最初の自分の志、そして決断を尊重できる人は、本当に一握りである。
ではどうしたら、自分の心の抵抗にあったときに、それを乗り越えていけるのだろうか。
これは言うまでもなく転職に限った話ではない。私は、次のステップを踏んで自らをもう一度見つめなおすことをお勧めしたい。
【1】1週間、結論を出さない
心に潜むもう1人の自分は、性急に結論を出すことを望んでいる(一気に心を侵すわけである。)。
だからこれに対抗するためには、直ちに決めておくべきことがひとつある。それは「1週間は絶対に結論を出さない」という約束事である。できれば大きく紙に書いて、毎日あなたが目にする場所(たとえば洗面所の鏡の横、パソコンなど)に張りつけるべきであろう。
疲れた時、弱気な時、あなたの心は大きく揺れるものである。冷静に考えて下した決断であったとしても、一瞬のうちに心変わりできるくらい、あなたの心に潜むもう1人の自分は影響力が強い。だから持久戦に持っていくしかないのだ。
日をあらためて、フレッシュな頭でもう一度考えてみるといい。どうしてそのような決断に至ったか、なぜ初志を変えてまで、心に潜むもう1人の自分の言うことを聞こうとしているのか。多くの場合、直感以上に優れた感性はないものであり、初志が正しい確率は高い。
あとから見つけた多くの不安は、自分の心の弱さのあらわれであると理性で理解することはできないだろうか。1週間の時間をかけて、1つのことを考えることができれば、あなたは初志を貫徹できるかもしれない。
【2】最後は自分で決める
他人のアドバイスを参考にするのはいいが、大事な決断をするときには、まずは自分なりのしっかりとした仮説を立てておくべきである。恩師であろうが、元上司だろうが、親友や親だろうが、それぞれの立場は異なるものであり、教養と知性、そして経験にあふれたあなた自身の判断に勝る結論を出せる人は、あなた以外にはいない。
義理のある相手や感情の絡む相手に相談することは、特に慎重にすべきである。
親しく信頼している相手だと思いこむことで、相手の判断に依存するようになり、自分の判断、特に直感を鈍らせてしまい、その後大きな後悔をすることになる。
だから、最後は自分で決める必要がある。
他人が決めてくれたことを追認したとしても、のちに後悔することになるから注意が必要だ。多くの先人達が、他人の強い意見を受け入れたことで、のちに後悔の山を築いていることは周知の事実である。
【3】できるだけ早く、自分の決意を親しい人に伝える
自分の心に潜むもう1人の自分が暴れ出す前に、親しい人に自分の決意を伝えてみてはどうだろうか。本当に親しい人ならば、あなたの不安をあおるような助言はせず、あなたの新しい門出を応援してくれるだろう。
何事にもリスクはあるけれど、挑戦する気持ちが大切なのであって、親しい友人が頑張ろうと決めているのにあえてマイナス要因を口にするような人は、腹に色々なものを抱えており、決してあなたの本当の仲間ではない可能性が高い。
朝令暮改を恐れる必要はない。ただ、自分の決意が他人の甘言で鈍るようなことは避けるべきである。
先行きが読めない時代に突入して久しいが、こんな時代だからこそ、他人の意見よりまずは自分の直感を信じてほしい。
そして自分の心の潜む、もう1人の自分という「赤の他人」には、細心の注意を払うべきである。
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