小松流 ビジネス力を上昇させろ!
著者プロフィール
小松俊明 (こまつ・としあき)
小松俊明 (こまつ・としあき)
リクルーターズ(株)代表取締役
グローバル・キャリアコンサルタント/東京海洋大学特任教授

グローバル企業で働くビジネスパーソンの転職事情に詳しい。大学ではポスドク・博士人材のキャリア開発に取り組む。元商社マンで、国内と海外における起業経験を持つ異色の経歴。代表作「デキる上司は定時に帰る」ほか、著書多数。講演、大学の講義のほかに、管理職の採用支援会社、リクルーターズ株式会社/代表取締役を務める。慶應義塾大学法学部卒業。

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極意の一覧
  「小松流 働き方の極意」は、身の周りにいる「デキる人、稼ぐ人、バランスのいい人」が日々考えていることや習慣をベースにした “意識改革のためのヒント集”です。これらを忠実に実践すれば、あなたも“デキるビジネスマン”と呼ばれるかも……。『月刊総務』に連載中の本編も、ぜひあわせてご覧ください!

55.名札の次は値札、そしてその次は...

2011-05-30

 ビジネスパーソンにとって『仕事』とは、生きるために必要なものである。その理由は生活するのに必要な資金を得るための手段であるからだが、それだけではなく仕事を通して人は生きがいを感じ、世界観や価値観にまで良い影響を得ることがある。後者の理由があるがゆえに、誰にとっても仕事をすることの意味は大きいのだろう。
 反面、人は仕事がうまくいかないことに悩み、人によっては体調を崩すことすらある。よって「どうしたら毎日の仕事を充実させることができるか」について考えることは、「どうしたら安全で豊かに生きることができるか」について考えることと同じなのである。

 さて、私たちが仕事を始めたとき、誰もが「名札」を身につけた。つまり、自分の名前で責任を持って一定の役割を果たすことを表明する意味で、名札を胸につけて私たちは仕事をしているのだ。それは「信用」や「信頼」につながる。つまり人は「名札」を見てあなたを認識して一緒に仕事をするかどうかを決めている。 
 
 働き方にもいろいろある。仕事の種類もたくさんある。そうした違いによって毎日の時間の使い方や働く場所、そして精神的・肉体的に感じる負担の度合いにも個人差がある。現実問題として派遣や契約社員、そして正社員など、雇用のあり方は多様であるし、世の中では、かつてのように終身雇用が保障されることもなく、転職社会を迎えている。自分が希望しなくても、会社からリストラされる形で雇用が継続できないケースも増加している。

 こうした最近の景気や雇用情勢もあってのことだろうが、会社に属さず自分で起業する人、いわばフリーランスで働く人も世の中に増えてきた。より自己ブランディングが必要な世の中になってきたわけだが、こうなると「名札」の次に意識されるのは「値札」ではないだろうか。
 
 「値札」というと、まずは収入を意識するだろう。ビジネスパーソンならば現に誰しも給料の額が決まっており、それが自分の仕事に対する対価である以上、わかりやすい「値札」が存在しているといえないこともない。もちろん、額面の給料以外の様々なトータルの待遇面(自宅から会社までが近いというような金額に置き換えにくいメリットも含めて)も、何らかの形でこの「値札」に含まれてもいいだろう。

 しかし今の世の中、高い年収を求めても、なかなかそのような稼ぎ方を誰もができるものではない。収入アップのために、いろいろと自己投資をしてスキルアップを実現するのはもちろん歓迎されることではあるが、そうした努力が必ずしも給料には反映されない時代でもある。
 企業はさらなる人件費カットに動いており、給料は上がるというよりも、今後も少しずつ下がっていく傾向にある。IT化も徹底されており、何事もよりお金をかけずに行う方向に向かっているのだ。要は自分の「値札」の値を高めたくても、世の中の景気や会社の事業環境、そして世の中の変化やそのスピードなどのおかげで、ビジネスパーソンの「値札」の現在値は、もうどの世代においても天井に達しているのである。

 では「値札」をもう一つ別の側面から見てはどうだろうか。つまり、仕事の対価としてあなたがいくら稼げるかを「値札」に書くのではなく、どのような価値を世の中に創出できるのか、それを「値札」に書くのはどうだろうか。造語であるが、「価値札」とでもいえるだろうか。もともとの「値札」に「価」の一文字を増やしただけだが、私たちは今後、色々な価値を世の中に創出していくことで「価値札」の数字を高めることができるというわけだ。ビジネスパーソンの新しい生きがいは「価値札」で決めてはどうだろうかという提案である。

 たとえば今回の震災に何か支援をしたのだとしたら、その価値の総額があなたの「価値札」に記される。あなたの部下であるトップ営業マンに悩みを打ち解けられたとき、とても適切なアドバイスをしてあげたことで、本人が退職を思いとどまったとする。このトップ営業マンが年間に一人で稼ぎだしていた1億円もの売り上げ、これがあなたの「価値札」の値段であるというわけだ。この考え方は、理にかなっていると思うがどうだろうか。

 このように「価値札」のルールは自分が得たものではなくて、他人に対して自分が与えた価値の尺度で測るところが大きな特徴である。親から遺産を相続したり、宝くじに大当たりすれば誰でも金持ちになれるが、人にそのお金を与えられるかどうかは別問題である。
 経験や知識、そしてノウハウなども自分で囲い込んでしまって、自分のためだけに消費する行動は見苦しいものだ。上司やベテラン社員がそうした行動をとることが、どれだけ若者のやる気をそいでいることか。他人と共有したり他人を育成したりしないのであれば、「価値札」の値はずっとゼロのままである。

 これからの時代、私たちには「名札」があって「値札」があって、そして「価値札」も身につけて生きていくのである。若者は将来不安など感じる必要はない。「価値札」を意識して生きていけば、毎日の仕事は充実し、人生も安全にかつ豊かに生きていくことができるのである。ことさら将来を不安がって縮こまるのではなくて、こう信じて頑張っていこうではないか。