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「ナショナルのあかり」というテレビCMを覚えていらっしゃるだろうか。ナショナルは当時の松下電器(現パナソニック)の一大ブランドであったが、このCMは約30年前、1980年代にカンヌCMフェスティバルでグランプリをとっている。今になってそのCMを久しぶりに見返してみたが(無料の動画サイトで簡単に見つかる)、「世の中にあかりを灯す」というメッセージと映像が、見事に戦後の日本の復興と発展を連想させてくれる。
時は流れ2011年に起きた大震災、そして2008年の金融ショック以来今も続く景気後退と不安定な雇用を考えると、このCMは今こそ日の目を見たほうがいいのではないか。(実際はCMを作った会社の名称が変わっているため難しいかもしれない。だから個々人が動画サイトで確認してもらうしか今のところ手立てはない。)
ちなみにこのCMはその後も進化を遂げている。21世紀に入って注目された「ナショナル~21世紀を照らすあかり編」が記憶に新しいだろうか。このCMには一つ、秀逸なコピーがあった。
「明るいだけでは未来は暗い」
これである。このコピーを震災後の今、読み返してみると、さらに味わいが深い。ビジネスパ-ソンにとって、深くいろいろと考えさせられることはないだろうか。
「明るいだけでは」という部分を、いろいろな言葉に置き換えてみるとイメージがふくらむ。「給料アップだけでは未来は暗い」「出世だけでは未来は暗い」「住宅取得だけでは未来は暗い」。私たちの毎日の現実は、給料や出世、住宅や教育ローンなどにかなり縛られているのかもしれない。しかし、仮に収入が増えてもそれだけではまだ「未来は暗い」ままであると感じるのはなぜだろうか。
震災で何もかもが一瞬のうちに壊される様を見て、私たちはモノではない、もっと何か大きなもの、強いものを得なければ安心できなくなってしまったのではないか。高級なモノを消費するだけでモチベーションが上がるという人は、本当のところではずいぶん減っているのではないだろうか。
さて「なぜ明るいだけでは未来は暗いのか」、これを考えたとき、また一つのCMを思い出した。日産自動車のセレナというミニバンのCMである。その中にも忘れがたいコピーがあったことを皆さんはご存じだろうか。
「モノより思い出」
この楽しい車があれば、あなたは親として自分の子供が一生の財産とするような素晴らしい思い出を作ってあげることができる。こんなCMであった。今は人々の将来不安が購買欲に勝るようになり、モノが売れない時代になってしまった。いうなれば、モチベーションを上げるためのモノはいらなくなったのである。
このCMがいうように「思い出」は大切である。そして「思い出」は、もちろん子供だけのものではない。
世の中は不景気であるが、同窓会ブームであるらしい。高齢化社会が到来し、人間関係が希薄な時代であるからこそ、人々は「つながり(絆)」を取り戻したくなったのだ。昨今のソーシャルメディアの爆発的な成長も、日本人が「絆」を取り戻したいことが背景にあるとみてもいいのではないか。
今、多くの人が感じている将来不安を打ち消せるのは、もはやモノに象徴される豊かさではない。こんな時だからこそ、「モノより思い出」「モノより絆」が大切であるというメッセージのインパクトはとてつもなく大きく、これらのコピーにも再度スポットライトがあたることを願いたい。
「人の世の幸不幸は、人と人とが逢うことから始まる」と言ったのは、詩人の相田みつを氏であるが、今、世の中には効率化という名のもとに直接会わなくても会ったような気になるバーチャルな関係が増えている。国内外の会議はスカイプやビデオ会議で事足りるし、自宅やオフィスでも気楽に動画で映像を見られるようになったので、情報収集のために人と直接会うことも減ってきている。
しかしこれも相田みつを氏の指摘の通り、人を不幸にしているのだとしたら、私たちは時代の流れに逆行するような言動をもっとしなければならないということになるだろうか。なぜ明るいだけでは未来が暗いのかというと、「人」が不在になっているからである。つながりや思い出は、人と人が逢うことから始まる。
時代に逆行してでも、もっと人と逢おうではないか。
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