小松流 ビジネス力を上昇させろ!
著者プロフィール
小松俊明 (こまつ・としあき)
小松俊明 (こまつ・としあき)
リクルーターズ(株)代表取締役
グローバル・キャリアコンサルタント/東京海洋大学特任教授

グローバル企業で働くビジネスパーソンの転職事情に詳しい。大学ではポスドク・博士人材のキャリア開発に取り組む。元商社マンで、国内と海外における起業経験を持つ異色の経歴。代表作「デキる上司は定時に帰る」ほか、著書多数。講演、大学の講義のほかに、管理職の採用支援会社、リクルーターズ株式会社/代表取締役を務める。慶應義塾大学法学部卒業。

お問い合わせ info@recruiters.co.jp

極意の一覧
  「小松流 働き方の極意」は、身の周りにいる「デキる人、稼ぐ人、バランスのいい人」が日々考えていることや習慣をベースにした “意識改革のためのヒント集”です。これらを忠実に実践すれば、あなたも“デキるビジネスマン”と呼ばれるかも……。『月刊総務』に連載中の本編も、ぜひあわせてご覧ください!

68.35歳・45歳・55歳には要注意

2011-11-22

「今の会社で55歳を迎えている自分を想像できますか」
この問いかけに対し、あなたは何を感じただろうか。特に20代と30代のあなた。あまりにも先のことすぎて、その時までの人生を想像できないだろうか。もしそうだとしたら悪いことは言わない。これを機会に是非、真剣に考えてみてほしい。

実は55歳という年齢には、それなりの意味がある。若い人にとっては、ずっと先のことと思うかもしれないが、誰にとってもそんなに先のことではない。40代の読者の方であれば、そのことがよくわかるだろう。いや、55歳までに残された年数が40代の人には短いからそう言っているのではない。「時間の感じ方には変化が起きる」から、そう言っているのだ。

誰にとっても、これから過ごす未来の時間を実感することは難しい。言うなれば、若いうちは自分が年をとることを想像することが難しい。しかし、一定の年数を重ねてくると、これまで自分が過ごしてきた過去の時間を実感することは意外に容易にできる。その感覚が身を持ってわかるようになるのは、個人差はあるだろうが、おそらく40代に入ったころではないだろうか。

「Time flies」(意味:光陰矢のごとし)という表現がある。たとえば40代になると20代の10年間、30代の10年間が本当に短い時間の単位に思えてくる。つまり、人間は年を重ねていくと、なぜか「飛ぶようにあっという間に時間が過ぎる」ように感じるものなのだ。ようは自分が振り返って感じる20代と30代という時間と同じだけの時間しか、55歳までの自分には残されていないことに気づいた40代にとって、55歳はもうすぐ目の前の現実なのである。

さて55歳という数字の持つ意味だが、一昔前には多くのビジネスパーソンが定年を迎える年齢であった。つまり55歳が大きな人生の節目であり、キャリアのゴールという意味合いがあった。しかし今では多くの会社が60歳定年制をとっている。まして年金の受給開始は65歳以降であるから、55歳という年齢は現代に生きるビジネスパーソンにとってひとつの通過点なのだ。まさに年金生活を始めるまでの直前の10年間でもあり、この時期の過ごし方が、その後に続く老後に大きな影響を与えることだろう。

さて、次に少し時間をまきもどして45歳について考えてみよう。45歳はビジネスパーソンの多くがキャリアのピークを迎える時期である。それがゆえにさまざまなクライシス(危機)が待ち受けていると言っても過言ではない。
現実問題として、世の中からは終身雇用が消えつつある。大企業であっても例外ではない。今、会社を取り巻く環境は転職社会であり、人の流動性が存在する社会であるわけだ。これは出世競争が社内人材だけにとどまらないことを意味している。はるか20年前、30年前に同期入社した生え抜き社員とだけ、出世競争を意識していると足をすくわれる。今や外部からの転職組によって、自分のキャリアがある日突然閉ざされることは、日常茶飯事の出来事になっているからだ。

一方、45歳前後のいわゆる中高年を取り巻く転職事情も厳しさを極めている。退職勧奨(リストラ)を受けて会社を退職し、現在も再就職活動中の失業者の多くは、もともと転職する予定がなかった人が大半である。こうした昨今のビジネスパーソンの早期退職の現状があるだけに、60歳はおろか55歳まで今の会社に残れる実感を持てないと感じる若者が少なくないのだろう。残念なことだが、「今の会社で55歳を迎えている自分を想像できない」理由の一つには、こうした厳しい転職事情が関係していることは否めない。

以前であれば、業績が安定している大企業にさえ就職でき、自分から辞めさえしなければ会社に定年まで残ることができた。昇進や昇給には限度があるだろうが、そのことさえ自分が受け入れれば、子会社なり出向先で晩年を過ごすことができたのである。誰もが無事定年を迎えられたし、退職金もあてにすることもできた。年金に対する不安も少なかった時代であれば、まさに年金と会社の退職金(企業年金がある人もいる)があることで、一定の安定した老後生活を期待できたのである。
このようにキャリアのピークを迎える45歳前後で身に降りかかる出来事しだいで、どのような形で55歳を迎えることができるか、ここは大きな個人差が生まれるところである。だからこそ、今25歳や35歳であったとしても、45歳や55歳という年齢を意識しながら、自分のスキルや経験を磨き、必要な資産作りや貯金を始めることが大切である。悩みはどの世代にもつきないものだが、45歳や55歳あたりの年齢は光陰矢のごとしの勢いで時間が過ぎていくものだから、その時になって考えるのでは遅すぎる。もしお金をためなければならないのなら、45歳や55歳の時点で、もうそれ相応のレベルに達していなければならないわけで、そのためには少しでも早く始める必要があるのだ。もしスタートが遅れてしまったという人がいたとすれば、遅れを取り返すことを真剣に考えることが必要である。生活をもっと大幅に切り詰めるであるとか、逆にリスクをとってもっと稼ぎを増やせるような選択肢に踏み切る必要もあるかもしれない。何もしなければ、苦しみを先送りするだけである。年をとった人なら皆わかるものだが、若いころの苦労なら買ってでもするべきだが、年をとってからの苦労は誰もが避けたいと思うものである。

最後に35歳について考えてみよう。35歳という年齢から想像されることは二つある。ひとつはキャリアの問題である。もう一つはプライベートで、このころに所帯を持つ人が多いということだ。

まずキャリアの問題であるが、実際35歳前後から転職活動はやりにくくなる。もう若手ではないからだ。またこの年代になると、人によって経験や能力に大きな差が出始めている。会社でも、また対外的にもリーダーシップを発揮するようになるのが35歳である。このころの出遅れは、後になって大きく響くものだ。出世のピークを迎える時期を45歳から早まらせるのか、もしくはさらに引き延ばせるのか、それは35歳の迎え方次第である。そうした意味ではどの年代も大切であり、良い35歳を迎えた人の多くが、良い20代を過ごした可能性は高い。多感で情熱的な20代・30代は、誰にとっても伸びしろが大きいことを忘れてはならない。

プライベートにおいても、人によっては所帯を持つ年代である。子供を作り、さらに家族を増やす人もいる。何事も自己責任の時代と言われて久しいが、35歳前後で家族を作ることで、さらに新たな責任を背負い込むことになるわけだ。それであればなおさらのこと、そこからは45歳、55歳を意識した日々の過ごし方を考える必要性が増してくる。特に人の親になれば、自分の時間軸以外に、子供たちの人生の時間軸が組み込まれてくることになり、ことはもっと複雑になる。それだけ人生を豊かに生きることができるとも言えるが、今の時代、子育ては容易なことではない。未曽有の少子化社会がその証である。

以上のように、35歳・45歳・55歳にはそれぞれ大きな意味がある。それぞれの間には、10年間という均等な時間の塊があるように見えるが、前述のように感じ方が変わっていくため、実感としては「飛ぶように時間が過ぎて、あっという間に年をとってしまう」。私たちは目先の悩みも解消しなければならないし、日々の幸せを謳歌する必要もある。一方で人間は寿命をコントロールすることができず、平均寿命が80年を迎えている時代である以上、私たちはまずは「35歳・45歳・55歳」という節目の年代をどう乗り切るか、常に意識して毎日を過ごす必要があるのではないだろうか。「将来不安」というような漠然なとらえ方をするのではなく、「35歳までに何をするか」「45歳までにどうなりたいか」「55歳からはどうするか」、常に具体的に自分の将来を意識していきたいものである。