小松流 ビジネス力を上昇させろ!
著者プロフィール
小松俊明 (こまつ・としあき)
小松俊明 (こまつ・としあき)
リクルーターズ(株)代表取締役
1967年東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。総合商社で海外営業の後、キャリア情報誌の編集者、外資系ヘッドハンターを経て、採用戦略コンサルティング会社、リクルーターズ(株)を設立。近著『デキる上司は休暇が長い』(あさ出版・刊)など著書多数

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71.やりたい仕事 VS やれる仕事

2012-01-19

最初の就職で「やりたい仕事」に就ける人は多くはない。実際、新卒学生の就職の現状は「就社」であって、業界と会社までは絞り込めたとしても、職種そのものを選んだわけではない。たとえば海外の油田を開発するような国際的な仕事がしたいと思って総合商社に入っても、希望がかなわず経理部に配属されてしまえば、自分がやりたいと思っていた仕事とは全く無縁のキャリアを総合商社の中で築くことになる。このように、最初はたまたまあてがわれた仕事、もともと希望していなかった仕事からキャリアを始める人が大半かもしれない。

その状態が長く続き、社内で軌道修正ができないことに気づいたころ、はじめて転職を意識するようになる。20代までは未経験の職種に応募することも、まだギリギリできるかもしれない。しかし、多くの場合は若手採用と言っても、中途採用は即戦力採用を前提としているから、異業種・異職種転職は難しいものである。つまり、「やれる仕事」のほうが「やりたい仕事」よりも格段に評価されるのが現実であるのだ。

やりがいを感じる仕事

雇用形態や諸条件にこだわらず、薄給の見習いとして「やりたい仕事」を始める覚悟があれば、異職種転職も実現性があるかもしれない。しかし、そうして「やりたい仕事」を選択するためには、給与以外にも犠牲にすることはいろいろとあるに違いない。もしそうした大きな犠牲をはらって得ることができた「やりたい仕事」が、実は選択を誤っていたことに後で気づいたとしたら(つまり勘違い)、その代償は計り知れないのではないか。だから多くの人はそうやすやすと異業種転職はしないものだし、いざとなったら二の足を踏む人が多いのが現実である。

では「やりたい仕事」のとらえ方は、時間とともに変えていくことができるだろうか。たとえば今の仕事にはもともとあまり興味がなかったとしても、やっていくうちに面白みを見つけることはできないのだろうか。もともとやりたい仕事ではなかったが、わりきって仕事に打ち込んでいるうちに知識と専門スキルを身につけ、誰もが認めるような実績を作る人がいる。それが他人から評価されるようになり、いつの間にか「やれる仕事」が「やりがいを感じる仕事」に進化するのである。「やりたい仕事」よりも「やりがいを感じる仕事」のほうに価値があるのではないだろうか。

思わぬ形で初志を実現することもある

学生時代に映画研究会に打ち込み、本気で映画監督になりたいと思っていた若者がいた。まさに「やりたい仕事」があったわけだが、現実は建築学科を卒業し、地元の工務店に就職した。1級建築士として、小学校から図書館、研究所から工場に至るまで、数多くの建造物の開発に取り組んだ。仕事にやりがいを感じ、建築分野の専門家として仕事に打ち込んでいた。

転職も経験した。業績が急激に悪化した会社で働いていたときは、リストラの憂き目にもあった。そうした中で新しく転職した会社は、偶然にもテーマパークを運営する会社であった。テーマパーク内に数多くのアトラクションやレストランを設営する。改修工事もある。テーマパークがゆえに、ヒット映画をモチーフにした遊戯施設もたくさんある。若いころに志した「映画監督」になる夢は閉ざされたままだったが、思わぬ形で、つまり「建築士」として映画のセットを再現した遊戯施設を設営することになったのだ。

これを運命のいたずらと言うのだろうか。自分が若いころ情熱を燃やした映画と関わる仕事に就くことができたのである。それも建築士という、言わば専門家の立場でテーマパーク設営に関わるのだから、仕事のやりがいは大きかったと言う。この話のように、思わぬ形で自分の初志が報われることもあるから人生は面白い。この人の場合、建築士として仕事に打ち込んでいたからこそ、人生後半にさしかかってこのような運命が待っていたのかもしれない。

「やりたい仕事」ができなくて最初はつまずいても、「やれる仕事」に打ち込んでいくうちに、それを「やりがいのある仕事」に進化させればいいのだ。ビジネスパーソンにとって仕事とはそうしたものであるべきだろう。そして誰しも職業人として、この社会における「自分の役割」を見出すに違いない。そうすれば、いずれは自分の仕事を「ライフワーク」と呼べるようにもなるのではないだろうか。

今、世の中は就職難であるが、若者は希望する就職先が見つからなくてもそう落胆することはない。「やるべき仕事」に打ち込んで、どんな世界でもいいからその道の専門家を目指そう。そうすれば、いずれ思いもかけないチャンスが待っているかもしれない。