小松流 ビジネス力を上昇させろ!
著者プロフィール
小松俊明 (こまつ・としあき)
小松俊明 (こまつ・としあき)
リクルーターズ(株)代表取締役
グローバル・キャリアコンサルタント/東京海洋大学特任教授

グローバル企業で働くビジネスパーソンの転職事情に詳しい。大学ではポスドク・博士人材のキャリア開発に取り組む。元商社マンで、国内と海外における起業経験を持つ異色の経歴。代表作「デキる上司は定時に帰る」ほか、著書多数。講演、大学の講義のほかに、管理職の採用支援会社、リクルーターズ株式会社/代表取締役を務める。慶應義塾大学法学部卒業。

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極意の一覧
  「小松流 働き方の極意」は、身の周りにいる「デキる人、稼ぐ人、バランスのいい人」が日々考えていることや習慣をベースにした “意識改革のためのヒント集”です。これらを忠実に実践すれば、あなたも“デキるビジネスマン”と呼ばれるかも……。『月刊総務』に連載中の本編も、ぜひあわせてご覧ください!

72.中国人ビジネスパーソンから学んだこと

2012-02-02

20年以上ビジネスをしてきて、私がこれまで一番刺激を受けたのは、優秀な中国系ビジネスパーソンの存在である。私がかつて10年以上住んでいたマレーシアにも中国系がいたが、彼らはシンガポールや香港にいるようなビジネスライクな中国人ではない。むしろ、同じ中国系でも田舎の中国人という印象があり、私は人情味のある彼らの存在が好きだった。

一部のマナーの悪い人には閉口したが、彼らは見かけよりも実は情が厚く、親しくなれば仲間とみなしてくれる。プライドや見栄が強く、本音と建前を使い分けて人との間に壁を作りがちな日本人よりも、もっと付き合いやすい人たちかもしれない。

彼らと付き合っていて面白かったのは、グローバル企業で働くインテリビジネスパーソンでも、ローカル企業で働きほとんど英語も話せないビジネスパーソンであっても、後半の人生計画は皆、ほぼ同じであったことである。それは人生のある時点で会社勤めから足を洗い、「スモールビジネスをもつこと」を誰もが目指していたことだった。仕事帰りにコーヒーショップに人が集まれば、話すトピックと言えば、知り合いの○○が店を開いたらしいであるとか、中国で売れているある商品を輸入販売できないかであるとか、誰もが架空の儲け話で盛り上がるのである。私自身、その輪の中にいつも座らせてもらって、面白おかしい彼らの奇想天外な儲け話に腹を抱えて笑わせてもらった。どこまで本気なのか、または冗談なのか、最初は全く見当もつかなかったが、基本的に冗談みたいな話の一つ一つが、皆、それなりに真剣なブレストだったんだと今になってみれば懐かしく思う。

ところで私には一人、10年来の中国人の友人がいる。その人物は長年グローバル企業で働いた後、地元の銀行グループの資産運用会社に転身されて、今はその会社の社長をされている。現地では重要人物のようであり、毎日のようにメディアに登場され活躍し、実際とても裕福な方でもある。

その友人が裕福になったのは、やはり資産運用の専門家だけあって、若い時から長年かけて不動産や株を中心に幅広く長期投資をしてきたからだそうだ。高度成長期にある国に過ごしながら中長期で行ってきた投資は着実に実を結び、今日の資産を作るに至ったという。

その友人の人生後半の計画を聞きたくて、最近本人に聞いてみた。ある意味、予想通りの答えだった。つまり、資産運用会社の社長職を引退したら、彼も「自分でスモールビジネスをしたい」というのだ。資産運用を長年してきた彼によれば、「人生で一番やりがいのある投資は、人生後半に向けてスモールビジネスを確立することにある」というのが持論だったのだ。

長年付き合いのある親しい友人だったので、もっと突っ込んで質問してみた。「投資家で、すでに裕福なあなたがなぜスモールビジネスに関心があるのか?」と。日本人はしょうもないことを聞くんだなぁという目をして、彼はそっと本音を教えてくれた。「お金だけのためではないよ。スモールビジネスは、今後の自分が生きる道を切り開く鍵になるんだ」というのである。やりがいもそうだろうし、新たな情報や人脈のフローを作ること、人から言われたことをするのではなく、常に自分の人生の操縦桿を握って生きていることを実感できれば、長生きもできるんだと教えてくれた。

つまり、人生後半に主体的に生きるためにスモールビジネスが必要であり、人生を幸せな気持ちで締めくくるためにも、しっかりとスモールビジネスに取り組めよというアドバイスだった。どんなに輝かしいキャリアがあろうが、誰しもそれが永遠に続くことはない。むしろほとんどの人は、人生後半になって自分の意に反してビジネスから引退させられてしまうものだ。だからこそ会社で働くキャリアからの引き時は、他人に決められる前に自分で決めるべきだと言うのが、彼からもらったもっとも大切なメッセージだったように思う。そのためにもスモールビジネスのネタは、常に仕込んでおく必要があるのだろう。

日本は景気が悪く、雇用も不安定な時代に突入しているが、高齢化社会を迎えている中で、多くの人が定年の日まで会社にしがみつくことはできない可能性が高まってきている。引退後の人生は長く、人生設計の重点を20代から40代に置くのではなく、50代からの30年間にシフトすることを真剣に考えたほうがいいのかもしれない。スモールビジネスを大げさに考える必要はない。自分たちの周辺にある不便を解消するような話でいいのだ。まずは中国人ビジネスパーソンを見習って、仕事帰りに寄る居酒屋では会社や上司の悪口を言うのはもうやめて、スモールビジネスの儲け話で盛り上がるところから、日本人は始めてみるといいのではないだろうか。