月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】IoTで働き方を可視化&改善。本社内に"最高の集中空間"を開設

2018-12-13 15:04

オフィス環境から生産性と創造性の向上にアプローチ

 2018年7月1日、旭硝子株式会社から社名を変更した同社。AGCグループの中核企業であり、ガラス、電子、化学品、セラミックスの事業領域で、100年以上、先端製
品を提供し続けている。
 そんな同社では、再成長に向けた変革に2015年から着手。2016年に長期経営戦略"2025年のありたい姿"を発表。「成長を加速させるには、働き方自体を変えていかなくてはとの危機感がありました」と、総務部総務グループ マネージャーの酒井健司さんは振り返る。
 働き方を見直し、"時間の価値"を最大化するため、働き方改革部門横断プロジェクトチームが始動。よりフレキシブルに、より効率的な働き方ができるよう、さまざまな施策を行ってきた。
 たとえば、育児・介護に限定しない在宅勤務制度や、コアタイムなしのフレックスタイム制、内線電話の携帯化など。そうした中、会社の中でも柔軟に、働き方が選べるようにしていこうと、オフィスの在り方に立ち戻った。ファシリティマネジメントの知見を活用し、"個々人の持てる力を最大限に引き出す"オフィス環境を実現しようと、取り組みを推進した。そして今年の9月、本社34階のスカイテラスをリノベーション。デスクでも、会議室でもない、働き方が変わる"第三の場所"を誕生させた。
 「ここは、110周年事業の一環でもあり、働き方を自分で選べるオフィスのシンボル。今後は、執務フロアや工場でも同じコンセプトによるオフィス作りを展開していきたい。ゆくゆくはITツールを活用したスマートオフィスも実現できるよう、そちらの取り組みも行っています」(酒井さん)

3つの機能で働き方を変える"第三の場所"

 agc01.jpgスカイテラスは、機能定義された3つのエリアで構成されている。部門やフロアを超えて人がつながることのできる「コラボレーションエリア」。一人ひとりの生産性と創造性が高まる「イマジネーションエリア」と「コンセントレーションエリア」。コラボレーションエリアは、使い方も、レイアウトも自在。椅子だけにすれば100人以上が座れて、イベントもできる。コーヒーマシンのあるカウンターや、自販機などを備えたコーナーも併設されている。昼食時は仕出しの弁当販売も行われ、ランチタイムがいちばんにぎわっている。
 皇居が見える絶景を生かしたイマジネーションエリアは、気分転換や、発想を膨らませるのに適している。そして、注目は、コンセントレーションエリア。ここが、株式会社ジンズの「Think Lab」(集中を科学するワークスペース)の監修で生まれた"最高の集中空間"、「DEEP THINK スペース」だ。

同社の動態分析ツールとジンズがコラボレーション

 そもそも、なぜジンズとコラボレーションすることになったのか。きっかけは、資材・物流部 プロフェッショナルの高橋正人さんが、2016年に開発した「Smart Logger(スマートロガー)」。これはスマートデバイスを使って従業員の動態を分析するツール。元々、製造現場向けに開発されたもので、作業者が装着したスマートウォッチを、作業開始時に工程ごとのビーコンに近づけるだけで、作業内容や時間が自動集計される。情報はパソコンやクラウドで、ほかのツールと連携もできる。
 「誰が、いつ、どこで、何を、という作業分析が圧倒的に簡単にできます。空いた時間は改善を考えたり、行動する時間に充てられる。日本の製造現場は、改善が得意。見える化できれば、あとは得意な創意工夫につなげられる。これこそ働き方改革の一つです」と、高橋さんは話す。
 国内外の工場約70拠点で展開し、共同開発のSI企業の方で外販もし、製造現場の改善ツールとして定着してきた。次は間接部門でも活用を、となったとき、オフィスワーカーの分析には、集中の計測が必要だと考えた。そのデバイスとして最適だったのが、ジンズが開発した集中度を計測するメガネ型ウエアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」だった。

働き方を可視化し、改善。"集中"が働き方を変える

agc02.jpg 実験的に、社内の任意の社員に、JINS MEMEとSmart Loggerの組み合わせで動態分析を行った。JINS MEMEで分析すると業務別、時刻別、場所別の集中度が出てくる。自分自身を知ることは、改善につながる。たとえば、「どの仕事をどの時間に割り当てた方がパフォーマンスが良いか」と、無駄取りではなく、足し算の視点で改善に取り組むようになる。社内データの結果、場所別の集中度は、オフィスは30パーセント、Think Labは65パーセントだった。ここから、「社内にThink Labが作れないか」となった。スペースも予算も限られている中、効果はどうすれば維持できるかと、ジンズから監修を受け、そのノウハウをふんだんに取り入れた"最高の集中空間"を作り上げた。

 たとえば、ハイレゾ音源による「集中が続きやすい環境」や、ヒノキやかんきつ系の香りによる「集中に入りやすい環境」を実現。ほかのエリアとは防音ガラスで仕切り、余計な情報が入らないようにパーティションの色も黒に統一。発散思考席(低座、後傾姿勢)と、収束思考席(基本姿勢)が選べる2種類のブースを用意した。利用は、1回最長2時間までの予約制。「現在、9時から18時の間で9割は埋まっています。利用者に聞くと、ここで仕事をするとはかどるとの実感があるようです」(高橋さん)。
 スカイテラス自体、社員の利用は増えている。もちろん、仕掛けも行っている。コラボレーションエリアでスイーツパーティーや健康セミナーなど、ターゲット層の異なるイベントを実施。今まで足を運んだことがない人にも、一度は来てもらって魅力に気付いてもらえるよう、そして、いずれは、ここから自主的な活動が生まれるようにと考えている。


【会社DATA】
AGC株式会社
本社:東京都千代田区丸の内1-5-1
創立:1907年9月8日
設立:1950年6月1日
代表者:代表取締役・社長執行役員CEO 島村琢哉
資本金:908億7,00万円(2017年12月31日現在)
従業員数:6,401人(2017年12月31日現在)
http://www.agc.com/