月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
ベンチャーから上場企業への成長を 人と組織作りから支える戦略人事

2017-01-19 10:02

写真、イラスト、動画のデジタル素材をインターネット上で売買するマーケットプレイス「PIXTA(ピクスタ)」を運営する、ピクスタ株式会社。創業10周年の、2015年9月には東証マザーズに上場。その急成長に合わせた組織改革に取り組み、人事評価制度も刷新。戦略人事部部長の秋岡和寿さんにお話をうかがった。

取材・文◎石田ゆう子

成長フェーズに合わせた未来を見据えた組織作り

 2005年の設立以来、PIXTAという強い事業モデルを柱に、ベンチャーらしい勢いで成長を遂げてきた同社。2015年の上場を機に、新事業や海外展開など、事業を拡大していくフェーズに突入。その成長に合わせた組織改革を行うべく、2014年に入社したのが秋岡さんだ。
 「1つの事業モデルを推進するのに最適化された組織から、事業拡大に耐え得る、かつ、推進できる組織体制に変えていく。事業に資する組織作りが課題でした」と振り返る。
 具体的には、組織の骨格、制度やルール、人材配置の3つの観点から改革に着手した。
 組織の骨格は、機能別組織から、事業部別組織に変更。PIXTA事業部のほかに、海外事業部、経営企画部事業開発グループを設けて、それぞれの事業部に収益責任を持ってもらう体制に。制度ルール面では、フラットにやっていた意思決定の在り方や、情報の流れを見直し、会議体などの全体設計をした。
 また、採用方針も大きく変更。「機能プロフェッショナルだけでなく、総合的にビジネス成果にコミットできる人、事業を牽引してくれるマインドを持った人材を採用していくことが大テーマに。そうした中で、インターンの学生を幹部候補生として育成することも始めました」。
 仕事に対して本気の熱意を持った学生を募集し、社員と同等の責任や経験を与えて、社員並みの成果を要求する。すでにこれまで3人のインターンが新卒入社。入社時点から中核的存在として活躍している。
 

「自律自走」を促すため人事評価をMBO形式に

 人事評価制度もMBO(目標管理)形式へと刷新した。「ねらいとしては、今後はより一層自分で能動的に考え、役割を広げて、ビジネスの成果、ひいては理念の実現にコミットしてくれる人材を、自律自走できる人材を評価しますよ、という経営のメッセージを明確にしたいとの思いがありました」。
 新制度では、上司と部下が目標を擦り合わせて設定し、それに対する達成度合いで評価をする。評価項目には、数値、自己評価、上司のコメントが入る。運用のためのシステムとして、社員の顔写真が並ぶクラウド人材管理ツール「カオナビ」を導入。従業員の情報や人事評価情報をまとめられるため、業務の煩雑さが軽減できるとともに、人事部が上司の評価のやり方などをフォローできる体制が整った。
 人材配置もドラスチックに進めている。新事業の出張撮影マッチングサービスのリーダーを28歳の女性に任せたり、開発部長を海外部長にコンバートし、ベトナム現地法人のトップを任せたり。また、インターンから入社し、1年目で台湾支店のリーダーに抜擢された人もいる。
 

拡大期にも心をつなぐ人事施策に注力

 改革を進める一方、組織が大きくなってくると見えづらくなる現場の声を吸い上げられるよう、メンバー全員の声をヒアリングする仕組み「目安箱」も作った。「4半期に1度、会社に対する満足度や、組織環境、経営陣、メンバーに対して思うところを上げてもらう。また、こういう仕事をしたい!とのチャレンジの意思を示せる欄も設けています。回答は、ほかの経営陣に共有されたいか否かを選択でき、されたくなければ私のところで止まるようになっています」。
 ほかの人事施策としては、4半期に1度、表彰制度「コマタアワード」を設置。チャレンジとコア事業、両方がエンジンとなって会社は前に進んでいるのだとイメージできるように、「チャレンジ賞」と「縁の下の力持ち賞」の2つを設けている。「ノミネートは自由。そこからメンバーが選び、最後はトップの古俣が決めます。メンバーのモチベーションアップはもちろん、経営陣には見えていないような大事な取り組みも吸い上げて、みんなが認める良い動きだとわかるようにする。一体感を持って前進しているのがわかる状況にしたいとのねらいがありました」。
 メンバー数が急増している中、「誰が何をしているかわからない」となりがちな状況を、改善する副次効果もあったという。
 

改革の成否は経営陣が鍵 社内活性化にも多様な工夫

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 MBO形式導入からもうすぐ1年。改革を進める上でのポイントはなんだろう。「いかに経営陣のマインドセットを変えていくか。MBO形式は、目標を話し合って定めるところが難しい。そして、リーダーがいかに部下の仕事を見て、評価をし、フィードバックするかが大切になる。そこでまずは部長から理解を深めて実践してもらおうと、2週間に1度、部長と私とで、マネジメントの考え方の話をし、場合によっては、私もMBOの面談の場に同席をし、アドバイスをしていきました。こうした改革は、短期的に成果が見えなくても、今やっておかないと絶対に苦労する話。この先のフェーズに耐え得る組織を作っていくのが私の役回りです」。実際、理解が深まってきた部長の部署から、うまく機能するようになってきているという。
 コミュニケーション活性化の施策としては、シャッフルされたメンバー数人でランチに出掛ける「ランチトーーク」や納会、部活動などがあって好評だ。また、行動指針「PIXTA WAY(ピクスタウェイ)」に沿った動きができているかをチームで照らし合わせる「WAY振り返り」も2か月に1回実施。チームは他部署の人とランダムに組むことで、お互いに見えないことが見える、学びや気付きが得られる価値ある場となっている。
 インターネット業界にいて、組織の在り方も変わってきているのを感じているという秋岡さん。「今は試行錯誤しながら、組織作りの壮大な実験をしている感じです。正しいと思うことは全部出し切って、良いモデルケースを作れたらいいですね。私たちはベンチャーで成長している中で、まだまだ不具合も起こったりしますが、成長はすべてを癒やす!との思いで、みんなでハッピーになれるよう、取り組んでいきます」
 
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※『月刊総務』2017年3月号P44-45より転載


【会社DATA】

ピクスタ株式会社
本社:東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル5階
設立:2005年8月25日
代表者:代表取締役社長 古俣大介
資本金:3億948万7000円(2016年9月末時点)
従業員数:61人(2016年6月末時点)

ピクスタ株式会社 戦略人事部 部長 秋岡和寿さん
あきおかかずとし●他社にて法人営業、生産企画、コンサルタントなどの経験後、MBA取得。2014年6月中途入社。組織作りから同社の成長を支える。オフも8歳と4歳の子供と全力で遊び、「可能性を追求していきたい」と成長を見守る。パパ友とのマラソン部で走るのも楽しみ。