月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】
訓練と実践から常にアップデート 生きた非常時対応の仕組み作り

2017-05-18 11:20

動車リースを中心とする車の総合管理サービス企業、住友三井オートサービス株式会社。同社ではBCP、非常時対応の仕組み作りに注力。専門家のコンサルティングを受けながら、マニュアルやシステムをアップデートし、継続的な訓練やシミュレーションによって、社内の防災意識も高めている。総務部の担当チームにお話をうかがった。

 

取材・文◎石田ゆう子

東日本大震災を教訓に安否確認システムを導入

 2011年の東日本大震災をきっかけにあらためてBCPを見直し、社内体制を整備してきた同社。そのタイミングで、BCP(事業継続対応)と、非常時対応(初動対応)を分けて考えることとし、総務部では、非常時対応を中心に担っている。「2011年はまず、東日本大震災での教訓を基に、それまでなかったインフォコムの緊急連絡/安否確認システム「エマージェンシーコール(R)」(以下、EMC)を導入。その訓練を始めました。同時に、東京のサーバーがダウンしてしまったときの代替サーバーを大阪に立ち上げ、その切り替え訓練を行ったり、非常用持ち出し袋を全社員に配ったりと、非常時対応の整備に取り組んできました」と総務部部長付の石渡康修さんは説明する。
 
 以降、毎年、全社員1,500人を対象に、EMCの訓練を年に3回から4回実施。当初は、総務も社員もやり方がわからずに安否確認の回答率は低かったが、指導と訓練を重ねるうちに回答率は99パーセントまで上昇。また、BCPと非常時対応の説明会を年2回ペースで継続開催。非常時対応マニュアルの携帯版を作成したり、歩いて帰ることを想定しての足裏に鉄板が入った安全靴や、社内宿泊時のマイクロファイバー毛布など、防災用品、備蓄品も充実させている。
 

効果大! リアルタイムシミュレーション訓練

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 繰り返しの訓練や説明会によって、従業員の意識向上をはかる一方、「役員」の意識向上に効果があったのが、「リアルタイムシミュレーション訓練」だ。これは、地震発生によって起こる状況をリアルな映像で見ながら、「この場合はどう対応するか」との質問に答えていくグループ訓練。「会議室の大きなスライドに、緊急地震速報から始まって、次々と状況が映し出されます。質問には約2分半で答えなくてはなりません」と総務部部長代理の後藤友洋さんは話す。参加した「役員」からは、「実際にこういうことが起きるのかとリアルにわかる。非常に効果がある訓練だ」と高く評価され、翌年、大阪・名古屋・福岡の支店でも実施することとなった。
 
 EMCは、震度5強以上の地震で、自動的に発信されるように設定されており、実際の地震発生時に実践もしている。その都度、経験を生かして仕組みをブラッシュアップ。「2015年の小笠原沖地震では、土曜日の夜でなかなか安否確認が取れなかったことから、EMCには、個人の携帯番号のみを登録するルールに変えました」と総務部長の雨宮和彦さん。社用携帯だと会社に置いて帰る社員が多いからだ。社員には、地震は夜間、休日によく起きているとの事実データを示して納得してもらった。これにより回答率はさらに良くなった。緊急連絡網も、このEMCデータから常に最新のものを作成するようにした。
 
 また当初、EMCは総務が発信し、全社員が総務に回答する仕組みだったが、現在は、部署ごとに社員同士が相互確認し、30分から1時間ほどで、部店長が総務部に報告するようにしている。これにより総務の負担が軽くなった。非常時には安否確認以外にもやることが増える、総務がどれだけ身軽にしておけるかは大切だ。今では、部のトップが部内の安否確認はするとの認識が浸透。「2016年の熊本地震では、ほぼ10分以内で安否確認ができました」(雨宮さん)。社内の意識が変わってきたことを実感している。
 

専門家の力も借りて総務部用マニュアルも作成

 マニュアルも充実させている。防災対策のコンサルタントに入ってもらい、総務部用の非常時対応マニュアルを作成した。これは、安否情報確認から、緊急対策本部の立ち上げまで、総務の「誰が、何をやるか」を、もっとも細かい行動レベルにまで落とし込んだもの。全九八ページにも及び、電子データと紙の両方で用意してある。「やることの優先順位が明確にしてあり、たとえ担当の私たちがいないときでも、ほかのメンバーが見ながらできるようになっています。BCP本部につなぐまでは、総務部がこのマニュアルを基に責任を持ってやります、というイメージです」(石渡さん)。マニュアル完成時には総務部で読み合わせをして実効性を確認。熊本地震では実践もした。そこで足りないところもわかってきたので、バージョンアップに取り組んでいく。
 
 熊本地震で明らかになった課題もある。一つは、備蓄食料が軽食すぎた。これは水で戻せるアルファ米など、おなかにたまるものに替えることにした。また、事務所の倒れたパソコンや散乱した書類を元に戻して、とりあえず動けるようにするのは社員自身だとの意識が薄かった。その意識が持てるような訓練がいる。これは、熊本地震の際の事務所のようすを映像で見せながら進めていこうと考えている。
 

社用車用防災用品も導入 今後はグループ展開も

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 このほか、全国の社用車220台に載せる、車用防災用品も導入した。これは、水、車中の気温の変化に耐えられる非常食、車に閉じ込められたときに使う工具などに、車を置いて逃げるときの方法や、車中泊の仕方などをまとめたマニュアルがセットになっているもの。車のリース事業を行う同社では、このセットをお客さまにも提供できればと、総務部発信のビジネスへの展開も考えている。
 
 「社員の意識向上には継続」と、同社総務部のみなさんは口をそろえる。ただ、同じことをしていると飽きがくる。EMCの訓練も、次回は安否確認をして終わりではなく、各部のBCP担当者が実際に来られるかどうか、報告してもらう形式でやってみようと計画中だ。「自分は担当だから行かなければいけないのだな、との意識が生まれ、それが当たり前になってくれるといいですね」(石渡さん)。今後は、同社をモデルケースに、グループ会社全体に活動を広げていければと考えている。
 
※『月刊総務』2017年6月号P40-41より

【会社DATA】

住友三井オートサービス株式会社
東京本社:東京都新宿区西新宿3-20-2
創立:1981年2月
代表者:代表取締役社長 露口 章
資本金:69億5,000万円
従業員数:約1,500人

住友三井オートサービス株式会社
総務部 (左から)部長 雨宮和彦さん
部長代理 後藤友洋さん
部長付 石渡康修さん

あめみやかずひこ●1987年入社。人事畑を中心に歩み、3年前より現職。オフの楽しみは、週に3、4回通うスポーツクラブと音楽鑑賞。「2015年の小笠原沖地震のとき、実はライブ会場にいて地震に気付かなかった。それもあって仕組み作りを進めました」。
ごとうともひろ●2005年入社。営業推進部を経て2年前より総務部。4月よりソリューション開発部兼務。学生時代は柔道で活躍。今ではそのITスキルと情報収集力で頼られる存在に。「子供2人も私の影響でPCやタブレットが大好きです」。
いしわたやすのぶ●1998年入社。主に営業職を経て2012年より総務部で非常時BCP対応に携わる。目下、一人娘(7歳)の子育て真っ最中。「自転車に乗れるよう一緒に練習。乗れるようになった今、休みにはサイクリングに出掛けています」。