企業はいよいよ国際標準である「社会的責任の手引」(ISO26000)を使いこなして、慈善活動的CSRから本業CSRへ転換し、ポーター教授らによる社会課題と経済価値の同時実現を狙う競争戦略としての「共有価値の創造」(CSV)も織り込んでいく必要があります。
また、最新の国際的な共通言語であるSDGs(持続可能な開発目標)を使いこなさなければなりません。
さらに、企業は、投資家に対してもESGを重視してどのように持続的に価値を創造していくかという「ストーリー」を語り、メディアをはじめ関係者と良い関係(リレーションズ)を築く本来的な意味の「パブリックリレーションズ」が重要です。わかりやすくするため「三方よし」の考えも使い、「隠徳善事」では伝わらないので「発信型三方よし」として理解していきます。
筆者の31年の行政経験と9年の企業経験を活かし、「これならわかる共有価値創造とサステナビリティ経営の理論と実践」という実践的な角度で皆様と考えていくサイトです。地方創生もCSR/CSVの実践として紹介していきます。
CSR、IR、広報、ブランディング、経営企画など幅広い業務の責任者・実務家、そして経営層の関心にも答えていきます。


(※)CSR企業の社会的責任: corporate social responsibility   CSV共有価値の創造:creating shared value
ISO国際標準化機構: International Organization for Standardization   SDGs持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals

笹谷オリジナルコラム:

笹谷秀光の「協創力が稼ぐ時代」<第2回>
サステナビリティ新時代と「協創力」(2)

2017-12-25 11:00

世界標準で見る:サステナビリティという価値観

 社会・環境の変化が激しい中で、企業はどう戦略を描けばいいでしょうか。

 私の専門ですが、「CSR」に関連します。Corporate Social Responsibility、「企業の社会的責任」と訳されていますが、responsibilityとは「 response+ability」、反応する能力、つまり、社会対応力のことです。2010年に決まった国際標準ISO26000(2010年発行)では、CSRを本業活用で実施するという明確な方向性が打ち出されています。今は「本業CSR」の時代です。

 最近は、さらに、米国ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授らが「共有価値の創造」という考えを提唱しました(2011年)。Creating Shared Valueで、「CSV」と略されています。

 これは社会課題も解決し、経済価値も生んでいく、この同時実現しようという魅力的な考えです。

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2016年12月、ポータークラブ(一橋大学)にて

 

サステナビリティの世界共通言語: SDGs

 さらに、ご存知と思いますが2015年に国連で決められた「持続可能な開発目標(SDGs)」がまさに最新の世界共通のサステナビリティの共通言語となります。企業価値を向上させるうえで必須の要素となりました。

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 これからの企業戦略は、
第一に、社会対応性を高める(ISO26000を活用した国際標準のCSR)、
第二に、「持続可能な開発目標(SDGs)」を2030年目標として取り込み、世界標準の目標体系に即応する、
第三に、共有価値創造CSVのアプローチを経営戦略として活用する、
第四に、その結果を発信する(GRI/IIRCなどの国際的報告ガイダンスを使用)、
・・・この4点が重要です。

 世界的なルール・メイキングも変わってきています。国家を縛る義務的なものは合意が難しく、むしろガイダンス的なものを決めて、デファクトスタンダード化していく流れです。日本はいち早くルール適応から、ルールを使いこなす、さらにはルール形成に参加する方向に行くべきです。

 例えば、英国は五輪レガシーとして「持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム規格」ISO20121を残しました。そして自らの五輪をその第一号にしたのです。2012年ロンドン五輪・パラリンピックは「持続可能性」を目指す大会として高い評価を得ました。

 自分でルールを作り、自分に適用し、レガシーとする。欧州はルール・メイキングがうまいのです。

 

ESGのうねり:2017年はESG「実装元年」

 持続可能性について、2017年が重要な節目の年となりました。

「ESG」が今後おさえておくべき重要な言葉です。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字で、もともと投資家が投資先を選定する基準として重視すべき非財務情報を指す用語です。

 この3要素すべての側面で2015年には内外で重要な動きがありました。「E」ではパリ協定、「E」と「S」でSDGs、「G」ではコーポレートガバナンスコードです。

 そして、2017年7月には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESGのインデックスを発表し、世界最大の保有資産約150兆円のうち国内株式30兆円の1兆円分をESG投資に振り向けると発表しました。

 いよいよ、投資家も本格的にESGに向けて動く「実装段階」に入り、「サステナビリティ新時代」の幕開けです。経営情報を世界的な指針を活用して発信できるかどうかが企業戦略の要諦となっていることも、今後深堀りしていきます。

 

企業の力を生かしてサステナブルな社会を創る
「発信型三方よし」を経営戦略に

 こうして、社会課題が複雑化している現下の経済社会の中で、企業と関係者が連携、協働して新たな価値を生み出す「協創力」がますます重要になりました。

 五輪・パラリンピックはもちろん、企業のCSR/CSV/SDGsの応用局面です。

 このように「横文字」のオンパレードです。

 しかし、考えてみると、日本には近江商人の「三方よし」(自分よし、相手よし、世間よし)という、考え方がルーツとしてあり、これが上記の横文字、特にCSVに近い概念として活用できます。ただ一点、大きな違いは、日本には「陰徳善事」という「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」という心得があります。日本人らしい美徳ですが、グローバル時代には通用しません。

 そこで「三方よし」に「発信性」を加えるべきです。企業が的確に活動を発信して「明日のことを考えてやっている企業なら応援したい」といってもらえるよう、企業価値を上げるのです。

 このような「発信型三方よし」を理論化して、私は「協創力が稼ぐ時代」における新たな経営戦略として提唱しています。

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いいね!なるほど!またね!さすが!

 わかりやすく言えば、こういう活動には、まず「いいね」という共感が必要です。でも、なぜその活動を行っているのかを丁寧に説明すると「なるほど」と腑に落ちます。そんなにいいことなら「またね」となる。この「いいね、なるほど、またね」というサイクルを作っていけるかどうか。

 これは若い人たちの方が得意かもしれません。「いいね」マークなど私の若いころは無かったですから。「いいね!」は共感、「なるほど!」は理解、「またね!」は継続です。

 そうして、評価がついてきて「さすが!」となると万全ですね。

 この4つのサイクルの形成を目指すのです。

 このためには、企業は活動内容を的確に発信することが重要です。

 発信にもコツがあります。まず、物語性、ストーリーテリングの時代です。ストーリーになると「なるほど」感がでます。加えて、わかりやすさです。そして、それを戦略的に打ち出していく。

 これは、関係者の皆様、つまり「パブリック」にわかりやすく活動を伝える力ということもできます。単なる広報ではない「パブリックリレーションズ」が重要です。

 

クールジャパン、インバウンド、レガシーの「プラットフォーム」

 当面の五輪に向けてのキーワードはクールジャパン・インバウンド・レガシーの3つでしょう。この3点が相互に絡んでいることが重要です。

 五輪は世界に向けた企業の「発信型三方よし」の実践局面です。

 これだけ課題が複雑化してくると、一つのセクターだけで解決できることには限界があります。政策等で「協創」を促す活動の共通基盤が重要で、私は「プラットフォーム」といっています。企業はどう参加してビジネスにつなげていくか。役所対民間ではなく、関係者が相互に補完し合いながら、知恵を出していく必要があります。

「産官学」に「金労言」を加えた、関係者の総力結集です。「産官学金労言」と言われています。

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私がこのウェブ版で提起したいポイントは3つです。

第一に、みんなで活動する共通基盤、「プラットフォーム」に参加して協働する ------「協」。
第二に、WIN-WIN関係を作る、企業にもいい、社会にもいいという関係を構築する ------「創」。
第三に、これを学び、発信力をつける ------「力」です。

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