1.総務が押さえておくべきクラウド基礎知識①

車を所有せず皆で共有するカーシェアリングが登場していますが、コンピューターの世界でも「所有」から「利用」へ時代が移りつつあります。クラウドコンピューティングとはどういうものか、導入のメリットや課題など基礎知識をご紹介します。

クラウド活用のメリット

クラウドを活用する一番のメリットは自社で災害対策をしなくて済み、負荷を軽減できることです。自社サーバーを所有すると転倒防止用グッズの導入、サーバー室の耐震対策、火事などが発生しても大丈夫なように特殊な消化器が必要です。ほかにも高感度煙検知システムの設置、停電対策など、かなりコストがかかります。
また自社サーバーでは情報資源(リソース)を電力会社のように需要のピークに合わせなければなりません。正月やゴールデンウィークに処理が集中するのであれば、ピークに合わせた容量対策が必要です。つまりピーク時以外はリソースを余らせることになります。クラウド化すれば設備増強のリードタイムはなく、必要なときに必要な分だけ借りればよいので、コスト削減になります。
季節変動があり従業員数が増減する場合、自社サーバーでの運用では従業員のピークに合わせてリソースを用意しなければなりません。システムにかかる経費は一定ですので固定費となります。クラウド化すればアカウント単位での課金となり、従業員の増減に合わせて変動費化できます。
さらに、使った分だけ利用料を払う料金体系ですので、自社サーバーのような初期導入コストはかかりません。クラウドを長く使っていると利用料が導入コストを上回りますが、リソースを業務のピークに合わせる必要がなく、運用コストを下げることができ、結果的にTCO(システムの導入、メンテナンスなどを含めたシステム運用にかかる費用の総額)が減少します。
もう一つのメリットは導入のスピードです。自社サーバーにパッケージソフトを導入する場合、インストール作業や設定作業が必要で、すぐに使うことができません。SaaSを活用すればインストールの手間がいらず申し込みののち、すぐ使えます。
自社サーバーに新規システムを導入する場合、サーバーや回線、OSなどの仕様を決定し、見積もりを取ってから契約を行い、自社に搬入、セッティングする作業が必要となります。PaaS、IaaSを活用すればシステムの申し込みをし、早ければ一時間以内に環境整備が終わり、立ち上げられます。外部環境がめまぐるしく変わる現代では経営に俊敏さが求められます。サービスの立ち上げが遅れることによって発生する機会損失をなくすには、準備時間がなるべくいらないクラウドサービスに利点があります。

クラウド活用の課題

クラウド活用で懸念されるのがセキュリティの不安。外部に大切な顧客データを預け、もし漏えいしたら……といった懸念は当然あります。しかし、中小企業の多くではセキュリティに強い人材がいません。餅は餅屋に任せるのが一番です。クラウドサービス提供事業者は、顧客の情報資産を預かるため、人一倍セキュリティに配慮しています。またクラウドならソフトウェアのバージョンアップも提供側で行ってくれ、自社であれこれとセキュリティに気を使わなくて済むだけでも楽で負荷が軽減されます。クラウド提供事業者が信頼できる相手かどうかをよく吟味する必要がありますが、データを自社金庫(サーバー)に置くより、銀行の貸し金庫(クラウド)に預けた方が安全でしょう。
クラウドの一番の課題はネットにつながらなければ何もできない点です。全てのサービスはインターネット接続が前提です。ビルが法定点検で停電になる、ルーターが壊れてしまったなど、ネットが使えなくなると業務が止まりますので、その際の対処法を決めておく必要があります。経理部門であれば取引先への支払いは継続しますが、社員の出張・交通費清算は中断するなど、復旧するまで待って行う業務、緊急性が高く手作業で行う業務を決めておき、もしもに備えましょう。
注意点としては、SaaSを利用する場合、ソフトの自由度がないこと。お仕着せパッケージになりますので、仕様を改善してほしくてもクラウド提供事業者にリクエストできるだけで、すぐに反映されません。ソフトの自由度を上げるにはプライベートクラウドを活用するか、自社サーバーでシステム構築することになります。

クラウド利用で何がどう変わる?

クラウドの特徴はスモールスタート、トライアル&エラーができること。自社システムの場合、導入しても使い物にならなければ投資はムダになります。クラウドは、PaaS、IaaSを活用し、まずは小さなシステムを作り、使い勝手に合わせてどんどん拡充していくことができます。
ある運送会社ではクラウドでトラックの混載・配送システムを構築していますが、必要最低限の機能だけでオープンしました。社員から上がってきた要望や不満を整理し、次のバージョンアップに生かして、どんどん良いシステムに改良しています。必要となるリソースはクラウドなので自由に増やすことができ使い勝手のよいシステムが出来上がりました。
 クラウドに限らずシステムを生かすも殺すも社長次第です。五拠点を持つ自動車販売会社では、クラウド型グループウェアを導入。営業マンは営業日報をグループウェアに入力し公開、他の営業マンも参照しています。営業マンは自分の上司に報告する意図で営業日報を作成するため、他の営業マンが見てもチンプンカンプンの表現になってしまいがち。そこで営業経験のある社長や経営幹部が営業日報をチェックし、なぜ受注が取れたのか、どういった工夫をしたのかをコメント欄に入力しています。以前は毎日、社長が五拠点を回っていましたが、今は頻度を減らし営業日報でチェック。気になる日報はその場で営業マンに電話し、トラブルを未然に防いでいます。
※この記事は『月刊総務』2011年11月号<総務のマニュアル>より抜粋したものです。「最適なクラウドサービス導入、活用チェックリスト」などより詳細な記事は『月刊総務』本誌を併せてご覧ください。