総務のトピックス

【税務トピックス】:

一般社団法人等に対する相続税課税の見直し

2018-05-17 16:00

相続税対策としての一般社団法人等の活用

 従来から相続税対策として一般社団法人等を活用するという手法が採られることがありました。一般社団法人等は「出資持分」という概念がなく、金銭の拠出を要することなく登記だけで設立可能であり、その設立に係る目的制限もありません。

 一般社団法人等は「出資持分の概念が無い」=「一般社団法人等が所有する財産は誰のものでもない」ということになるため、個人財産を一般社団法人等に移すことによって、個人の相続財産から切り離すことができたのです。

 例えば、賃貸用不動産を一般社団法人等に譲渡し、その不動産から得られる賃貸収入を全て一般社団法人等に帰属させることによって個人財産の増加を防ぐことが可能であったため、どれだけ利益が貯まっても、相続税の課税対象とはならなかったのです。

 さらに、一般社団法人等は役員である「理事」について特段の制限がないため、役員に自分の親族を加えることによって、相続税が課税されることなく「実質的な」財産所有権を親族へ移すことも可能だったのです。


平成30年度税制改正

 この一般社団法人等を活用した相続税対策は「行き過ぎた節税」といった声や批判も多かったことに伴い、平成30年度税制改正で一定の方策が講じられることになりました。

 平たくいうと、「身内で役員を固めている一般社団法人等については、その役員のうちの誰かが死亡した場合、一般社団法人等が保有している資産も死亡した役員の財産の一部として、一般社団法人等に対して相続税を課税する」ということになります。

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適用開始時期

 上記の改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員(相続開始前5年以内のいずれかの時において、特定一般社団法人等の理事であったものを含む)の死亡に係る相続税について適用されます。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の役員の死亡に係る相続税について適用されることとなります。

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中小企業向け租税特別措置に所得基準を追加

2017-08-14 10:30

 平成29年度税制改正により、過去3年の所得平均が15億円を超える中小企業者(以下、「適用除外事業者」といいます)については、平成31年4月1日以後開始事業年度から、中小企業向けの租税特別措置が適用対象外とされることとなりました。以下、適用除外事業者、及び、適用対象外とされる租税特別措置について、具体的に解説します。


適用除外事業者

 上記の「適用除外事業者」とは,中小企業者のうち、中小企業向け租税特別措置の適用を受けようとする事業年度(判定対象年度)開始の日前3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し,これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える法人をいいます(設立後3年を経過していないこと等の事由がある場合には,その計算した金額にその事由の内容に応じ一定の調整が加えられます)(措法42の4(8)六の二)。

 所得の金額は、各基準年度における課税所得の金額をいい、欠損金の繰越控除制度等の適用後の金額となります。

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(出所:財務省 平成29年度税制改正の概要)


適用対象外とされる租税特別措置

 次に掲げる中小企業向けの租税特別措置(要件の特例を含みます)について、適用除外事業者に該当するものの事業年度においては、その適用等を停止することとされました。

・研究開発税制のうち中小企業者を対象とした中小企業技術基盤強化税制(措法42の4(3)(4))
・地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除の投資規模要件の中小企業特例(措令27の11の3)
・公害防止用設備の特別償却(措法43(1)一)
・自動車教習用貨物自動車の特別償却(措法43(1)三)
・被災代替資産等の特別償却(措法43の3(2))
・中小企業等の貸倒引当金の特例のうち中小企業等の法定繰入率の適用に関する特例(措法57の9(1))


注意点

 本改正は,租税特別措置法に規定されている制度のうち,適用期限が平成31年3月31日以前に到来しないものに対して設けられています。今後、上記以外の中小企業向けの租税特別措置についても適用期限の延長に応じて、順次改正が行われることとされています。

 ただし、「交際費等の損金不算入の中小企業特例(800万円定額控除限度額制度)(措法61の4(2))」及び「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用(措法66の13(1))」については、適用期限の延長等があった場合においても、本改正の対象とはならない予定です。

 今後適用期限が延長された場合に、本改正の適用対象とされることが予定されている制度は、以下の通りです。

・中小企業者等の軽減税率の特例
・環境関連投資促進税制の法人税額の特別控除
・中小企業投資促進税制
・雇用促進税制の中小企業特例
・特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除
・中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除
・所得拡大促進税制の中小企業特例
・特定地域における工業用機械等の割増償却の中小企業特例
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
・中小企業者の事業再生に伴い特定の組合財産に係る債務免除等がある場合の評価損益等の特例


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馬券の払戻金の所得区分

2017-07-31 10:00

事案の概要

 多額の馬券の払戻金収入がある個人が、馬券の払戻金の所得(以下、「競馬所得」という。)を事業所得とし、外れ馬券の購入費用を必要経費に算入して確定申告したところ、原処分庁は、本件競馬所得は一時所得に該当するため、外れ馬券の購入費用の全額を必要経費に算入することはできないとして更正処分を行った事案があります(横浜地方裁判所平成26年(行ウ)第13号)。

 これに対し、個人(原告)がその取り消しを求めて提訴したが、結論的には、当該提訴は棄却され、原処分庁の主張が支持される結果となりました。

 本事案における、裁判所の主な判断は下記の通りです。

「競馬予想プログラムを用いて購入する馬券を抽出する作業は、日本中央競馬会(以下、「JRA」という。)に対して役務を提供されたものではないから、払戻金がJRAから受け取る対価であるということもできない。このため、(事業所得の要件である)対価を得て継続的に行う事業に当たるとはいい難い。また、下記の事情を総合的に考慮すると、本件競馬所得は、社会通念上、事業所得に該当すると認めることはできない。本件競馬所得が営利を目的とする継続的行為から生じた所得であると認めることはできないから、一時所得に該当する。一時所得である本件競馬所得の計算においては、的中馬券の購入代金に限り控除すべきである。」

(1)全ての判断を競馬予想プログラムに任せるのではなく、当該プログラムを利用して買い目の馬券を抽出した後、原告自身の主観的な判断に基づいて購入する馬券を決めており、また、個々の競走の結果を予想して馬券を購入していたことから、個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入は行っていない。したがって、要所において原告自身の判断を入れており、個々のレースの結果を自身で予想した上で馬券を購入していたことから、購入規模は別として、一般的な競馬愛好家による馬券の購入態様と質的に異なるものではない。

(2)交付される払戻金の総額が馬券の発売総額の約75%にとどまることから、一般的には、払戻金により相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性は乏しいといわざるを得ない。

(3)馬券の購入履歴や収支に関して帳簿等の作成を行っていない。

(4)過去において、競馬所得が損失となっている年がある。


所得税基本通達における取扱い

 所得税基本通達34-1(2)(一時所得の例示)において、馬券の払戻金の所得区分が下記の通り例示されています。なお、当該通達は、外れ馬券に関する平成27年3月10日の最高裁の判決を受けて、改正されたものです。

「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)」

(注1)馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。

(注2)上記(注1)以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。


解説

 つまり、本事案においては、営利を目的として継続的に馬券を購入しており、実際に一定の所得を得ていたようではあるが、払戻金獲得の偶発性、利益稼得の安定性及び継続性、並びに馬券購入の網羅性等の観点から、馬券愛好家が馬券を購入する行為と基本的には性質を異にするものではないとして、馬券を購入し払戻金を受け取る活動自体を事業とは認めてもらえず、事業所得の要件も充足しないため、結果として、事業所得でも雑所得でもなく、一時所得に該当すると判断されたと考えられます。なお、原告は、雑所得に該当するとの主張は行っていません。

 上記(注1)の通り、雑所得として、外れ馬券を必要経費に算入出来ることも、非常に限定的です。ただし、自身が個々の競走の結果を予想して馬券を購入していた場合において、過去における競馬所得が毎年生じている者の所得区分が雑所得と認められた事案があるため、留意が必要です(東京高等裁判所平成27年(行コ)第236号)。

 さらには、事業所得として認められることは現状では困難であると考えられます。
 
 このため、一般の競馬愛好家が高額な払戻金を得た場合には、一時所得として申告することが望ましいと考えられます。

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地方拠点強化税制の活用

2017-06-02 11:00

制度の概要

 平成27年度税制改正により、地方拠点強化税制(以下「当該税制」という。)が制定されました。制度主旨としては、企業の地方(※)拠点の強化及び移転を支援することにより、地方における良質で安定した雇用創出を通じて、地方への新たな人や物、情報の流れを生み出し、東京一極集中の是正及び地域経済の活性化を実現することを目的としています。

 そこで、企業が本社機能等を東京23区から地方に移転した場合(移転型)又は地方にある企業の本社機能等を拡充した場合(拡充型)における取り組みを支援するため、当該企業の設備投資を促進するためのオフィス等取得減税(特別償却又は税額控除)及び地方における雇用を促進するための雇用促進税制(税額控除)の特例が創設されました。

※ 当該税制の対象地区には定められない地域(地方)もありますので、対象となる地域については、移転・拡充先となる都道府県にご確認ください。


税制措置の拡充による要件の緩和

 平成28年度税制改正において、当該税制で拡充される雇用促進税制の適用を受ける法人等が、その同一事業年度において、所得拡大促進税制を受けられるようになりました。

 さらに平成29年度税制改正においては、ローカルアベノミクスを促進する観点から、オフィス等に係る税額控除率の維持及び雇用促進税制の特例の拡充として、無期・フルタイムの新規雇用に対する税額控除額を上乗せする等の措置が講じられました。
 
 例えば、東京に本社機能をもっている企業が、事業の一元化(拠点強化)のために10億円を投じて地方にオフィスを建設し、当該オフィスで100人の雇用が増えた場合、

  (1)オフィス等に係る税額控除
   7,000万円(10億円 x 7%)の法人税額控除

  (2)雇用促進税制の特例の拡充等
   最大8,000万円(80万円 x 100人)の法人税額控除

 つまり上記合計((1)+(2))で最大1億5,000万円の法人税額控除を受けることができます(但し、雇用促進税制とオフィス等に係る税額控除合わせて当期法人税額等の30%が限度額になります)。

 さらに2年目・3年目においても当該100人の雇用を維持した場合、各年において3,000万円(30万円×100人)の法人税額控除を受けることができます。

 当該税制の適用にあたっては、本社機能等の全てを移転する必要はないことから、本社機能等の一部移転や研究所・研修所を地方に集約することなど、現在の企業体制を見直すことで当該税制を活用することができるかもしれません。但し、適用要件として移転・拡充先となる都道府県知事に対し、「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」を申請し、平成30年3月31日までに認定を受けることが必要となります。


 平成29年税制改正「地方拠点強化税制の拡充」については、財務省ホームページのこちらのページを合わせてご参照ください。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei17/02.htm

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使途不明交際費の取り扱い

2017-04-17 13:00

 吸収合併によって消滅した法人が、購入した商品券の購入費用を接待交際費として計上した上、交際費等に係る損金算入限度額を超過する部分についてのみを損金不算入として取り扱い申告したところ、原処分庁は、商品券の使途が明らかでないことを理由に、商品券の購入費用の全額を損金に算入することはできないとして更正処分を行った事案があります(東京地方裁判所平成25年(行ウ)第627号)。

 これに対し、消滅法人を吸収合併した合併法人(原告)がその取り消しを求めて提訴しましたが、当該提訴は棄却され、原処分庁の主張が支持される結果となりました。

 本事案において、原告の主張が棄却された主たる理由は下記の通りです。

「本件商品券の使途を具体的に特定する事項を記載した書面等は何ら存在しないところ、商品券の使途に関する原告の主張には中核となる部分において変遷がみられる上、原告がその主張に沿うものとして提出する書証によっても、これを裏付けることはできず、そのほかに、商品券の使途に関する原告の主張及びこれに沿う証人の供述を裏付けるに足りる証拠は見当たらないのであるから、本件全証拠によっても商品券の使途は全く明らかでないというほかはなく、業務の遂行上必要であると認めることはできない以上、本件商品券の購入のための費用は、損金の額に算入することはできない。」

 なお、租税特別措置法第61条の4第4項において、交際費等の意義として下記の通り規定されています。
「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう」

 また、法人税基本通達9-7-20においては、
「法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない。」
とされています。

 つまり、本事案においては、商品券を購入し、(恐らく)事業関係者に対して配布したものの、具体的な配布先等を示す書面を保存していなかったためにその使途を明らかにすることができず、結果として「費途が明らかでない交際費」=「業務の遂行上必要であると認めることはできない」と判断されたと考えられます。

 一般的な接待飲食の場合、領収証を入手することによって日付や飲食店舗名が明らかになるとともに、接待相手先についても、当該領収証や仕訳帳の摘要欄に記載していることが多いと思われます。

 一方、一度に多量の商品券を購入し、必要に応じて得意先等に引渡すようなケースの場合、本事案のように、引渡日付や相手先等の適正な管理がなされていないケースも多く見受けられます。

 従って、こういった商品券等を多量に購入した場合においては、引渡日・相手先・使途(引渡理由)・枚数・社内担当者・捺印といった欄を設けた管理簿により管理し、税務調査においても説明できるようにしておくことが望ましいと考えられます。

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