総務のトピックス

CSR:

総務部門主導のCSR推進の意義と効用を再考する
社会や環境に対する責任を果たすことがビジネスと両立するという事実

2013-09-08 16:44

パタゴニアが証明する
企業の社会的責任と事業成長の相関関係

「CSR元年」と呼ばれる2003年から10年。CSRの重要性が至るところで論じられ、CSRという用語はビジネスの現場で一般的に使用されるようになった。しかし、企業の現場ではいまだ、CSRといっても企業の余剰利益の中から捻出する寄付行為や慈善事業など限定的に捉えられ、CSR活動も専任部署任せで他人ごとというケースが多いというのが実態だ。小誌編集部主催の「総務サロン」でCSRをテーマにグループディスカッションをしても、何をすればよいのか、どこから手をつければよいのかわからないといった意見が多く聞かれる。

このようなギャップの存在は、何に起因するのだろうか。それは、CSRを特別なこととして捉えてしまう、その出発点に一つの原因があるのではないかと思われる。そこで、小誌でも本業を通じてCSRに積極的に取り組み、事業にポジティブな成果を及ぼすことに成功している企業事例を積極的に取材し、掲載するようにしている。

まだまだ確立された手法が存在する分野ではないが、それでも、他社の成功事例を参考に、「もし、自社で行うとしたら」「自社の本業を通じたCSR活動とは」といった視点で事業を見つめ直すきっかけとしていただければと考えている。

中でも、パタゴニアの成功事例は群を抜くものであり、大いに参考となる。『月刊総務』2013年10月号の巻頭「企業トップインタビュー」で、パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんにご登場いただいた。
著書『社員をサーフィンに行かせよう』で知られるイヴォン・シュイナード氏が創業したアウトドアウェアメーカーだ。綿素材製品に使用するコットンをすべてオーガニックコットンに切り替えるなど、環境負荷を軽減するために徹底した取り組みを進めている。大幅なコスト増を伴うそのような活動は、営利を追求する株式会社の存在意義と両立し得ないのではないかと捉えられがちだが、パタゴニアは、社会や環境への責任を果たすことが事業にも良い影響を与えるという事実を証明している。

パタゴニアが扱っている製品が自然環境の中で使用されるものだから、そのような活動と親和性があるのではないか。パタゴニアの事例は特別で極端なケースなのではないか。他の産業、業種に属する企業が同様の成果をあげることはできないなどと思われるかもしれないが、インタビューで辻井さんも述べられている通り、社会や環境に与えるインパクトに、可能な限りの責任を取りながら事業に取り組む方が、より長い期間、経済活動を継続できるということが、あらゆる産業において当てはまるのは間違いない。大量生産、大量消費という時代は終わり、ソーシャルな視点での価値観が重視される時代へとシフトしているからだ。パタゴニアの活動が、あのウォルマートをも動かしたという事実がそのことを示している。

変革は小さいところから
総務部門主導で成功体験を全社へ

企業は社会とのかかわりにおいて初めて成立し得るのだから、ことさらCSRという言葉を用いずとも、社会に対するさまざまな責任を果たさなければ存続できないということは明らかである。そして、どんな事業も自然環境など人類の共有財産を利用して営まれているのだから、企業活動を永続させるためには、これら自然環境へ及ぼすインパクトを可能な限り軽減しなければならない。このことは誰も否定することはできないであろう。そして社会もそのことに気付いている。だからこそ、このシフトに企業が適応していかなければならない。

そう考えると、CSRというのは一部の専任者だけが担うというものではなく、企業の構成メンバー全員が、その企業の大切にすべきミッション、そしてそのミッションに基づくコアバリューに従い、遂行していくべきものであるということになる。総務部門こそが、このような企業文化を作り、活動を推進していく役割を果たす部署として機能するのではないだろうか。

それでは、具体的にどのような活動を進めていけばよいか。
まずは自分の会社の中を見渡してみることだろう。どんなに小さなことでも、それが社会や環境に対する責任を果たすことにつながるのであれば、その小さな成功体験を重ねることによって組織は確実に変わるもの。辻井さんのインタビューとともに、イヴォン・シュイナード氏による『レスポンシブル・カンパニー』をお読みいただき、「責任ある企業」「社会や環境に責任を果たすこと」とはどのようなことなのか理解を深め、パタゴニアと同じく、一歩踏み出していただければと思う。


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『レスポンシブル・カンパニー』
パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは

著者:イヴォン・シュイナード+
   ヴィンセント・スタンリー
訳者:井口耕二
発行:ダイヤモンド社

巻末に社会や環境への責任を果たす具体的で実用的な項目がチェックリストとして収録されている。

 

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