金 英範さん
日産自動車株式会社 コーポレートサービス統括部 部長/一級建築士 MCR、CFMJ

より一層総務や管理部門の力になるべく、「総務の今を知り、これからの総務を創る」を新たな編集方針として掲げた『月刊総務』。それを記念し、今号は「総務のプロ」として知られる金英範さんにご登場いただき、総務の現状や課題、そしてこれから目指すべき総務像等についてうかがった。
文◎石田ゆう子
  • 豊田まずはあらためて、金さんの総務歴から教えてください。
  • 職歴でいえば、約22年になります。ただ、大学時代から世話好きで、幹事やサークルの盛り上げ役をしていましたね。
    大学卒業後は、設計事務所でオフィスの設計をしていたのですが、次第に施主側の方に興味が出てきて、海外で2年間、FMの勉強をしました。帰国後にモルガン・スタンレー・グループに入社したのが総務としてのスタートです。
  • 豊田外資系企業の総務というのは、どういったものでしたか。
  • プロ集団です。私は設備のプロとして入ったのですが、自分の横には電気系のプロ、家具のプロ、サービスのプロなど、各分野のプロがいました。思えば、ここでの六年間が、今も私のベースとなっています。
  • 豊田たとえば?
  • 大きいのは考え方です。私たちはサプライヤーを「業者」ではなく「コンサルタント」と捉えています。こちらは発注するプロであり、コンサルタントはサービスを提供するプロであるからです。

成功する総務は
モチベーションマネジメントがうまい

  • 豊田プロ対プロという立場で仕事をする、ということですか。
  • はい。ですからサプライヤーには指示するのではなく、むしろ「こういうことがしたい。どうすればいいのか教えてください」と、教えを請います。聞けば相手はプロですから、期待に応えよう、期待以上のことをしようとがんばってくれる。そこにイノベーションが起きます。成功する総務は、サプライヤーに対するモチベーション・マネジメントが上手ですよね。
  • 豊田ご自身も総務BPOのサプライヤー側を経験されていますが、立ち位置を変えることで違う景色も見えたのではないでしょうか。
  • 発注者には、サプライヤーを生かしてくれるタイプと、そうでないタイプがあることがわかりました。
金 英範 (きむ ひでのり)
早稲田大学建築学科卒業。オフィス設計事務所勤務を経て、米大学院へFM(ファシリティマネジメント)修士留学。1996年モルガン・スタンレー・グループ株式会社への入社を皮切りに、メリルリンチ日本証券株式会社など外資系金融機関を中心に、総務、FMをインハウスで実践。その後ジョンソンコントロールズ株式会社に移り、サプライヤー側から、総務、FMアウトソーシング事業を経験後、日産自動車株式会社入社。2016年4月より現職。
  • 豊田成功するのは前者のタイプですよね。
  • もちろんです。サプライヤーが「あの人のためならがんばろう」という気持ちになったら、発注者側は勝ちですよ。ところが、日本の大手企業では、人事システム上、2年くらいで総務部長が代わることが多い。だから業界のことをよく知らないまま、予算だけ用意して発注するといったパターンになりやすいのです。
    でも、お金でやる気が出るわけではありません。それより、相手が総務のプロである方が気合が入るし、プロ同士のやり取りの中でお互い成長もする。結果的に、予算以上の成果が出せます。そのことに、サプライヤー側に立つことで気付きました。
  • 豊田現在は日産自動車株式会社で、グローバル総務として活躍されています。外資系企業から、純日本型企業ともいえる同社への入社を決めた理由は何でしょう。
  • 従来の日本企業の人事システムからすれば、総務部長は次期役員候補が数年務めるポスト。その流れを止めて外部の私にオファーをくれたことに、改革への強い意志を感じました。そこには今でも感謝しています。
  • 豊田戦略的な総務を実践するには総務のプロが必要であると、経営陣が決断したということですね。
  • もちろん、海外の総務事情に詳しく、英語で交渉もできるということで、グローバル総務の即戦力としても必要とされていました。そのニーズに応えられるなら、とチャレンジしたわけです。
  • 豊田グローバル総務をうまく管轄するコツを知りたい企業も多いと思います。何かアドバイスを。
  • 私もまだ経験値は低いのですが、まず、日本が司令塔になろうとしないことです。たとえばアメリカの総務の方が、日本より20年は進んでいますから。私がやっているのは、総務の商社のようなこと。アメリカのやり方のいいところを吸収して、それをほかの海外支社が受け入れやすいようにアレンジして輸出する。あるいは、日本の経営陣から得た情報を発信する。こういったことがローカルからは喜ばれ、少しずつ何でも聞き合える関係になってきました。

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