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採用ブランディング【第2回】なぜ集めた中から選ぼうとするのか

2018年04月09日

■ほしい人物像が決まらなければ、メッセージが甘くなる

 「ほしい人材像は?」と聞いて、明確に答えられる企業は実はそう多くありません。また、それが採用にかかわるチーム全体に共有されている企業となると、ほぼ皆無に近いという印象があります。

 明確化するとは「素直で、元気で、コミュニケーション能力がある人」という、どこの企業でもほしがりそうな人材像を掲げることでもありません。また、急成長中の企業の経営者の中には、その自信から「どんなやつでもいいよ!」的なことを言う豪快な方もいます。その懐の深さは、とても尊敬に値するのですが、それだと結局、集まった中から採用するという形になるので、母集団を集めなければなりません。

 しかし、今は母集団すら集まらない時代になってしまいました。そのため、「ほしい人物像」を明確化し、その人にメッセージを届けるつもりで採用活動をしないと、どんな企業にもいえることをいってしまい、埋もれる、というスパイラルにハマってしまいます。

 なぜほしい人物像を細かく決めなければならないのかというと、伝えるメッセージが甘くなるからです。これがどの企業でもいえそうなことにつながっています。たとえば、「20代の異性をメッセージアプリで食事に誘う言葉を考えてください」といわれるのと、「隣に座っている異性を食事に誘ってください」といわれるのとでは、やりやすさが全く違うはずです。

 これはマーケティング的にいうと、「ペルソナ」を決めるということにつながります。ペルソナの重要性は多くの文献でいわれているため省きますが、商品開発や広告の現場ではごく当たり前の発想です。しかし、採用でこれを精緻に行っている企業はほとんどありません。では、ほしい人物像を明確化するにはどうすればいいのでしょうか。

 それにはまず

(1)自社の活躍人材像の資質を明らかにする。
(2)今はそうではないが、理想的にはこういう人に入社してほしいという資質を見える化する。

という2段階のステップを踏む必要があります。(1)(2)を合わせて整理すれば、本当にほしい人物像を明確にすることができます。

 しかし、そのままでは、完全無欠の「超理想の人物像」です。その資質の中で、絶対に持っていてほしい「MUST項目」は何なのか、あればプラス評価になる「WANT項目」は何なのかを決めておくべきでしょう。そうでなければ、1次選考の段階で、誰も残らなくなってしまう恐れもあります。そして、採用チーム全体でそのほしい人物像の資質を共有すれば、採用する人材のブレを減らしていくことにつながります。

■狙わなければ、メッセージは届かない

 自社の魅力を求職者に受け取ってもらうには、まず「誰に対してメッセージを送るのか」を決めなければなりません。つまりターゲットを明確化するということです。そのためには、「理想の人物像」をペルソナ化して、自社の求人に響いてほしい人をしっかりとイメージしておく必要があります。先にも例に出しましたが、「20代の異性」と「21歳女性、大学3年生、早稲田大学文学部、英語サークル、高校までバスケットボール部」という人物像があった場合、どちらの方が頭のなかに人物像を描きやすいか、ということです。具体的であればあるほど、言葉の選択が具体的になり、いろんな打ち手が考えられます。前者だと、考えた言葉の選択の判断基準がわからなくなるはずです。それを踏まえた上で、自社の魅力や強みがしっかりと整理されている必要があります。

 ここで大きな問題なのは、「自社の強みや魅力は、自分たちが認識していない、当たり前の文化にあることが多い」という点です。しかし、それこそが実は自社ならではの「強い文化」。これを認識するには、複数人で強みを考えるか、やはり外部の力を借りる必要があるでしょう。

 このように、ペルソナレベルまで精緻に自社のほしい人物像を描き、採用に携わる人たちがそれを共有することで、「誰を口説けばいいのか」がはっきりするという効果が現れます。実際、私たちの支援している企業では、このペルソナを決めた直後に、「本当に決めた人に近い人が来ました!」という声を聞くことがなんと多いことか。これは本当に来たのではなく、「気付くことができた」要因が多いと思います。ペルソナを決めたことによって、自社に入社させるべき人を早い段階から察知できるようになったのです。もしその人が実際に入社すれば、その後輩が今度は興味を持ち、自社を受けてくれるという流れを作ることにもつながります。

 またここで決めたペルソナは、採用ホームページやパンフレットにも生かさなくてはなりません。そうしなければ採用全体で一貫性が失われので、「採用ブランディング」どころの話ではありません。ペルソナレベルまで明確化した人物像に届けることを意図して制作することで、表現が際立ち、結果目立つ制作物ができるようになります。それが目を引き、人が集まるようになる、あるいは自社への愛着度を深めることにつながるのです。面倒くさい作業かもしれませんが、これだけ効果のある人物像の明確化をなぜ多くの企業がしないのか。謎で仕方がありません。

深澤 了
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