月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

FAQ形式の社内ポータル導入で問い合わせが減少、業務効率アップ

2018-07-12 10:35

日本のインターネットの草創期から、インターネットインフラサービスを提供しているさくらインターネット株式会社。総務、経理、人事、法務、情報システムなどのバックオフィスを担う管理本部では、FAQツールによる社内ポータルを構築。各種申請や手続き窓口などの情報を集約し、問い合わせ工数の削減につなげている。

取材・文◎石田ゆう子

自己解決を促進できるよう社内ポータルを導入

 レンタルサーバー、クラウド、専用サーバー、ハウジングなどのデータセンターサービス事業や、IoTプラットフォーム事業などを手掛ける同社。最近では「平成30年度政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」の委託契約を締結し、衛星画像データを活用、提供する新事業にも取り組んでいる。そんな同社の管理本部では、以前より、各種申請や手続き窓口などの情報が探しにくいとの課題があった。「情報は、社内Wikiや、グループウエアに載せていたのですが、どちらに載せるかは作成者の判断。情報の更新を管理する仕組みもなく、新旧の情報が混在し、必要な情報を探すのが難しい状態でした」と管理本部 総務部 総務グループの井之上篤子さんは話す。探しにくいから聞いた方が早いと、管理本部に問い合わせる人が多かったという。
 それでも社員数が200人くらいのときは、何とか対応できていた。しかし、会社の成長とともに社員数が一気に倍増。「気軽に聞いてもらえるのも管理本部のホスピタリティー的なところではあるのですが、聞く方も答える方も時間を取られることになる。また、総務部に聞くというより、井之上さんに聞く、というように属人化し過ぎている文化もなくしたかった。自己解決を促進できる、社内ポータルサイトを立ち上げることにしました」(井之上さん)。

「したいこと」で探せるFAQ形式のポータル

sakura01.jpg 目指したのは、情報を知りたい人が、自分で探して解決ができる、管理本部は手を出さない状態。では、どうしたら社員が迷わずに情報を探せるか。情報を探すときは、「申請したい」など、したいことが最初にある。それに向かって検索してもらえるものをイメージした。「それならばFAQ形式がいい、と、コストパフォーマンスよく、FAQサイトを構築できるツール『OKBIZ. for FAQ』を導入。2015年9月、社内ポータルサイトをリリースしました」と話すのは、同部 情報システムグループの小泉行生さん。

 たとえば、名刺の発注なら、名刺、とキーワード検索すると記事が出てくる。記事の中には、情報が置いてある場所のアドレスのリンクなども張ってある。入り口はポータルで探してもらって、その先は、別のツールに飛ぶ場合もあるといった形だ。基本的には、これを見れば解決できるようになっているが、わからなかったときの救済として問い合わせ先も明記。「Slack(チャット)でも、気軽に聞いてもらって答えています。そうした返しのときも、ポータルのここを見てね、と省略化できていますし、続けるうちに問い合わせも減ってきています」(小泉さん)。

作って終わりにはしない。ゼロ件ヒットの改修に注力

 構築時に力を入れたのは、載せる情報の精査。実は、過去にも2回、社内ポータルを立ち上げようとしたが、全社規模でしようとしたために収拾がつかなくなり頓挫した。その反省を踏まえ、今回は、管理本部内の情報に絞った。探す側はやりたいこと起点で探すことから、「経費精算」「社内システム」といったものごとでカテゴリーを分類。社内Wikiなどに載せていた情報を一覧にし、一つひとつ項目出しをしていった。準備期間は約半年に及んだ。

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 リリース後もすぐにみんなが使ってくれたわけではない。習慣を変えられずに管理本部に聞いてくる人もいた。そこに対して「ここを見てね」と、地道に活動することで、次第に使われるようになっていった。「技術者などは、ポータルのことを教えると探究心からいろいろと検索するようになる。逆に、『この項目がない』『ここが違っているよ』などと、一歩進んだ改善を提案してくれる。みんなで作り上げるような形になってきています」(小泉さん)。

 今も日々、項目出しは続けている。「作って終わりにはしない」というのは、導入時からいっていたこと。プロジェクトは、各部1人か2人のメンバーで構成されているが、記事自体は、管理本部全員で作っている。情報システムグループでは、同じ問い合わせが3回来たら記事にするとのルールで運用している。また、載せているのに問い合わせが何度も来るものは、もう一度記事を確認し、情報を追加したり、書き方を変更する。

 「運用でいうと、このツールでは、ゼロ件ヒットのリポートが出せるので、それを週に1回確認。ゼロ件ヒットのワードから予想される質問を考えて加えたり、類義語検索の機能もあるので、その言葉を追加したり。また、FAQの匿名アンケート欄に寄せられた意見も参考にして、全社員を巻き込んで、より精度の高いものにしていっています」(井之上さん)。

 さらに半年から1年に1回、FAQの棚卸しも実施。閲覧されていない記事は、非表示機能で見られないようにする。再び必要になることもあるので基本的に削除はしていない。

問い合わせの減少を実感 将来的には全社の情報も

 地道な活動の結果ヒット率は上昇し、およそ87パーセントに。問い合わせも、管理本部内の8割が「減った」と実感している。導入から2年を機に全社アンケートも実施したが、使っていないという人は、ほぼいなかった。ただ、FAQの記事が増えすぎてしまったことが新たな課題に。「2018年5月現在、登録記事数は530件。たとえばタイムカードで検索すると34件出てくる。この中から探さないといけない。もう少し検索性を上げるために、記事自体に検索されそうなタグを、想像して付けるようにもしました」(小泉さん)。
 今後は、管理本部だけでなく全社の情報が集まったポータルを目指したいと井之上さん。しかし、決め込んだルールや手法を「こうしましょう!」と押し付けるのは避けたいという。「管理本部が始めた今回の取り組みに賛同してくれる部門や社員が徐々に増えた結果、気が付いたら全社的なものになっていた、というのが当社らしくていいのではと思います」(井之上さん)。
 


【会社DATA】
さくらインターネット株式会社
本社:大阪府大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪タワーA 35F
設立:1999年8月17日(サービス開始: 1996年12月23日)
代表者:代表取締役社長/最高経営責任者 田中邦裕
資本金:22億5,692万円
従業員数:連結563人(2018年3月末現在)
https://www.sakura.ad.jp/


さくらインターネット株式会社
管理本部 総務部
総務グループ 井之上篤子さん
情報システムグループ 小泉行生さん
いのうえあつこ● 派遣社員を経て、2012年2月より正社員。広く社員にかかわれる総務の仕事が大好き。以前はバンドをやっていたが、最近の趣味は家庭菜園。また、「外部のワークショップなどに行くのが楽しい。将来的にはファシリテーターのスキルも磨きたいです」。
こいずみゆきお●2008年8月入社。開発職を経て、現在は主に社内システムの管理・サポートを担当。オフの顔は、かわいい盛りの娘たち(小学校2年生と保育園年長)の良きパパ。バレエや水泳などの習い事に付き添うなど、育児に奮闘中だ。