月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】健康経営は、働き方改革との両輪で。家族も巻き込むことで推進に拍車

2018-10-11 10:30

1932年創業の通信ネットワークと情報システムのトータルソリューションプロバイダー、都築電気株式会社。同社では2016年から健康経営の取り組みに着手し、2017年から本格稼働。「働き方改革」と「健康増進施策」の両輪で推進し、2018年、健康経営優良法人(ホワイト500)にも認定されるなど、成果を出している。

取材・文◎石田ゆう子

社員と家族の健康増進をトップダウンで強力に推進

 2016年からワーキンググループ(WG)活動で、健康経営に取り組み始めていた同社。ただ、全社活動には至っておらず、健康経営に対する社員の認知度は低かったという。
 「働き盛り世代で健康を害する人もでてきており、果たして健康管理が出きているのか、とあらためて見てみると、健康診断受診率も90パーセント台後半で推移し、全社員受診が未達成の状況でした。会社としても、健康リスクのある社員への対応までは、なかなかできていないのが実態でした」と、経営企画統括部経営企画室長兼健康経営統括室担当部長の春名夏樹さんは話す。
 また、10年後までに人数の多い世代がいっせいに退職する。現状の仕事の進め方、働き方のままでは、仕事の量も質も維持できないのではないかとの危機意識も高まっていた。「加えて各世代にライフイベントや、家庭の事情を抱える人がいる。そうした制約はあっても働き続けたい人や、当事者でなくとも将来を危惧する人たちの不安を払拭し、誰もが働きやすい環境を整備することは、人財の流出を防ぐためにも経営の急務でした」と、健康経営統括室の田上翔子さん。
 2017年4月、トップが代わったことも一つのきっかけとなった。社長自身、「会社を支えるのは社員。家族も含めて健康でなければ本業に専念できない」との思いが強く、また、WGからも、組織を立ち上げて取り組むべきだとの提言があった。すぐに会社は動いた。2017年4月の社員総会で、社長が健康経営宣言。その場では、経済産業省 ヘルスケア産業課長(当時)を招いて講演もしてもらった。ここで会社の本気度を社員に伝えられたのは大きかった。2017年5月「健康経営統括室」を設置。室長には社長が就任し、トップダウンで強力に推進していくこととなった。

既存の制度を活用しつつICTツールなども整備

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 同社の健康経営は、「働き方改革」と「健康増進施策」の両輪での推進と、「家族」がポイントだ。定期健康診断受診率100パーセントの必達、総実労働時間5パーセント削減などを目標に掲げ、達成状況などのデータは、イントラネットの社内掲示板で「見える化」。ビジネスチャットツールも導入し、コミュニケーションの活性化、効率化をはかっていった。
 施策効果計測の指標作りも開始。労働生産性を可視化するような社内アンケートを実施し、その回答に、健康診断や人間ドックのデータなどを掛け合わせて、相関を取った。「たとえば、チャットツールの利用頻度が低い人は生産性が低い、というような相関性も見えてきました。この結果は社員総会で発表。今後の施策にも生かしていきます」(田上さん)。
 1年目の施策としては、「すぐにできることから」始めた。すでに制度としてあった早帰りデーの運用徹底や、テレワークを利用しやすい風土作りに努め、さらに、モバイルワークオフィスやサテライトオフィスを導入。誰もが働きやすい環境を整備し、健康経営強化月間や、テレワーク推進月間などと併せて、活用を啓発した。7月24日のテレワーク・デイズにも参加し、200人以上が実施。最近では、RPAの自社実践もスタートし、一層ICT基盤の整備を進めている。

健保の冊子も自宅に送付。家族ぐるみで意識改革

 一方で、社員の意識改革にも注力。全社員参加型のコンテストで、健康経営推進キャラクター「ヅッキー」を制作。随所に登場させ、自然と健康経営を意識できる場面を増やした。社内掲示板に投稿した健康経営関連の記事は、1年で215本。忙しい社員の目にも留まるよう、標題はキャッチーに、読みやすさを意識した。スマートフォンからも閲覧できることもあり高い既読率を誇っている。また、全国ワイガヤも実施。こうした現場の意見収集などは、WGと連携しながら進めている。
 さらに、「家族」にも直接アプローチ。健診のお知らせなど、大切な情報も載っている健保関連の冊子は、まず家族に届けようと、社長からのメッセージを添えて自宅宛てに送付。休暇奨励カレンダーも自宅に送付し、家族ぐるみで働き方、休み方を考えられるようにした。ハイリスクアプローチでは、血圧か血糖値が3年連続Dランクの社員に、医療機関受診推奨の手紙を本人に届けている。
 また、バランスボールの執務利用や、腰痛対策などの各種セミナーを実施したほか、血管年齢測定イベントを開催。このイベントを本社で行った際には208人が参加。社員の健康への関心の高さを実感したという。

抜本的改革を進め、心身の健康とともに生産性向上へ

 こうしたさまざまな活動が認められ、チャレンジ1年目にして「健康経営優良法人2018 大規模法人部門(ホワイト500)」に認定された。もちろん、苦労もある。たとえば、社員からの健康経営に対する否定的な意見。「ただ、それも、関心を持ってくれているからこそ出る意見。そうポジティブに捉えています」(田上さん)。なにより、「いいね」「会社が変わってきたね」という肯定的な声の方が多く、それが励みになっている。今の課題は、まだ本社のみの施策が多く、地域間格差があること。ワイガヤでも話し合い、今後は地方のニーズにも応えていく。
 2年目は、いよいよ抜本的改革に着手。現在、業務プロセスの見える化に向けて、全業務の洗い出しを進めている。無理・無駄・むらをなくし、生まれた時間を創造的な時間に充てる。または、休眠時間を増やしたり、プライベートの充実につなげることで、心身の健康とともに、生産性の向上をはかっていく。「社長からは、今年度を、健康経営社員認知度のピークの年にしたいといわれています。その先は、自走できるように、と。最終的には、健康経営推進室やWGがなくなっても、健康への取り組が自然とできている状態が理想です」(春名さん)。


【会社DATA】
都築電気株式会社
本社:東京都港区新橋6-19-15(東京美術倶楽部ビル)
創業:1932年5月1日 都築商店として創業
設立:1941年3月26日 都築電話工業株式会社として設立
代表者:代表取締役社長 江森 勲
資本金:98億1,293万円
従業員数:1,447人(2018年3月)
https://www.tsuzuki.co.jp/


都築電気株式会社
経営企画統括部 経営企画室長兼 健康経営統括室担当部長 春名夏樹さん
健康経営統括室 田上翔子さん
はるななつき●入社以来営業として30年。営業部長を経て、現在は、経営企画室長と、健康経営統括室担当部長を兼務。「最近の大きな出来事としては、今年2月に初孫が誕生。新たな働きがいを見つけました。長生きせねば!」
たがみしょうこ●2014年入社。3年間営業を経験後、健康経営統括室に。この仕事に携わっているからには自身ももっと健康的に、と、「食べることはやめられませんが、ボクササイズを始めました。みんなで一緒に健康になれる企画も考えたいです」