月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

【総務の現場から】ITを駆使して、スマートに働く。ソフトバンク流働き方改革を実践

2019-04-11 15:30

今年1月、ソフトバンク コマース&サービスから社名変更をしたSB C&S株式会社。ソフトバンク創業以来続く、IT流通事業を担って37年。国内最大級のICT商社へと成長した同社では、働き方改革も積極的に推進。在宅勤務などの制度整備に、RPAによる業務効率化、副業奨励など、その多彩な取り組みについてうかがった。

取材・文◎石田ゆう子

スーパーフレックスと在宅勤務で働き方を柔軟に

ph_sbcs_01.jpg ソフトバンクグループの原点である個人および法人向けIT関連製品の製造・流通・販売および関連サービスを手掛けている同社。2014年にソフトバンク株式会社から分社したあと、四期連続増収増益を果たしている。働き方改革も以前から推進していたが、2017年、「Smart & Fun!―ITを駆使して、スマートに楽しく働こう―」とのスローガンを掲げて、本格的な取り組みをスタート。「私たちの考える働き方改革は、業務の効率化と、社員がワクワクして働けることの両輪。スローガンはグループ共通ですが、施策自体は個社で行っています」と、コーポレート管理本部本部長の市川隆博さんは話す。
 具体的には、(1)スーパーフレックスタイム制度、(2)在宅勤務制度、(3)Smart & Fun! 支援金の導入の3本セットで進めた。
 (1)は、コアタイムなしで、1日最低1時間の勤務がルール。業務の繁閑に合わせて自由に働き方を変えられるのがいい。
 (2)は、短時間勤務社員対象だったものを全社員に拡大した。原則、週1回出社のルールはあるが、運用は部門ごとに任せている。社員の予定は、社内ポータルサイトの予定管理システムで共有。申請は前日までにすればいい。
 「弊社は、社員の約半数が女性で、短時間勤務のワーキングマザーも多い。これまでは6時間働くために通勤と準備などで2、3三時間かけていたわけですが、在宅ならそれが不要。経営からしても、その通勤時間を仕事に充てる選択肢が用意できるわけですから納得感がある。今、500人近くが利用しています」

社員の意見2,000件を効率的な働き方に反映

 こうした施策を進めると同時に、スマートな働き方を実現するために廃止や改善すべきことを社員にアンケートを取った。「2,000件の意見が上がりました。想像と違ったのは、『長い会議をどうにかしたい』など、日々の切実な悩みや希望が多かったこと。でも、会議の在り方を見直すきっかけにはなった。すべての意見に対して、やめる、続ける、変える、の結論を出して実行していきます」。
 ほかにも、現場レベルでおよそ100の仕事をRPAで自動化。約70人分/月の工数軽減につなげている。
 このように効率化によって捻出できた時間を、自分のスキルアップや趣味の充実に使ってもらおうと考えたのが、(3)のSmart & Fun!支援金だ。用途不問の援助金で、1人に1か月1万円を2年間支給することにした。「社員からは、以前よりも気兼ねなく書籍を購入したり、同僚と飲みに行ったりできるようになった。また健康のためにボクシングや、ダンスを習い始めたなどの声が上がっており、好評です」。

副業を奨励することは定年後の生き方支援にも

ph_sbcs02.jpg さらに空いた時間を生かしてもらえるよう、2017年、副業を解禁。元々、申請のプロセスはあったのだが、Smart & Fun!の取り組みの1つとすることで、より広く認めていくと大々的に発信した。1年間で多数の申請があった。趣味の作曲を副業にした人、キャンプ好きが高じて製品開発のアドバイザーになった人、MBAの学校で講師になった人もいる。興味深いのは、コンサルタント業など、仕事で得た知識や経験を生かしている人も多いこと。「副業を推奨する背景には、定年後の多様な生き方を支援したいとのねらいもあります。早くから副業としてやることで、将来、それを生かしてもらえたらいいですよね」。

社内アワードともひも付け業務改革の意識を浸透

 Smart & Fun!の取り組みは、この2年をもって第1フェーズは終了。成功のポイントには、大きく次の3つがあったと考えている。
●プロジェクトのトップや経営層の意識改革
●意見を現場から吸い上げるためのキーパーソンを巻き込む
●本部長や統括部長など、判断権限を持った人をプロジェクトに入れる
 何よりも大事なことは、全員が本気で覚悟を持ってやっていくこと。
そのために、たとえば、役員の評価に、Smart & Fun!の項目を加えた。年2回の全社キックオフや、四半期に1回の全社朝礼には、必ずSmart & Fun!に関するプログラムを入れた。また、社内アワードの表彰カテゴリーに「業務改革」を加えて、Smart & Fun!の効率化で取り組んだことをエントリーできるようにした。
 従業員満足度調査を見ると、「有給休暇が取得しやすくなった」「組織として業務効率化・改善に取り組んでいる」など、Smart & Fun!にひも付く項目のポイントが上がっている。一方で、在宅勤務者からは「人と話したい」との声も上がってきている。いかにコミュニケーションの量と質を担保するかは課題の1つだ。ただ今後、5Gが本格稼働すれば、コミュニケーションの次元が変わるだろう。全国の拠点と5Gでつなぎっ放しの部屋を作るなど、同社らしくICTを活用した、新しい働き方を考えていく。
 一方、まだ在宅勤務やテレワークに抵抗がある人もいるという課題もある。スーパーフレックスも、業務の特性や管理の方針上、導入できていない部門がある。「それを全社で統一していきたい。いつでも、どこでも仕事はできるのだと、今後も語り続けていきます」。
 さらに、2020年に向けて、今までとは全く違う働き方、オフィスを形にしたいとの思いもある。現在、次なるSmart & Fun!のコンセプトを構想中だ。「形から入るのも大事。たとえば、本社をコミュニケーションスペースとして再定義してみる、など。社長からは、『思い切りやってみようよ』と、いっていただいているので、一度、振り切ったチャレンジをしてみたいですね」。


【会社DATA】
SB C&S株式会社
本社:東京都港区東新橋1-9-2 汐留住友ビル 2014年4月
設立:2014年4月
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 溝口泰雄
資本金:5億円
従業員数:1,770人( 2018年4月1日現在)
https://cas.softbank.jp/


SB C&S株式会社
コーポレート管理本部 本部長
市川隆博さん
いちかわたかひろ●1993年ソフトバンク株式会社入社。株主総会運営、採用、グループ統合などを経験後、2016年4月より同社で人事、総務、広報を統括。趣味はダイビングとヨット。息子が小さい頃はよく沖縄の離島にシュノーケリングへ。「最近は、体力仕事は若手に任せつつ、セーリングを楽しんでいます」。