月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい9月のトピックス

2019-08-26 10:52

2019.September

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾


●企業における法務部門の機能と役割

 従来、法務部門は法的リスクの未然防止や紛争発生時等有事の危機対応といった「守り」の機能が強調されていたように思えます。ところが、経済産業省が2018年4月に公表した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」において、法務部門には「ガーディアン機能(守り)」と「パートナー機能(攻め)」があり、わが国の企業が国際競争力を上げるためには、この2つの機能が十分に発揮されることが重要であるとされました。
 ガーディアン機能は「最後の砦とりでとして企業の良心となること」「コンプライアンス・ルールの策定と業務プロセスの構築徹底」「契約による自社リスクのコントロール」「損害を最小限に抑えるための行動」から構成されるものです。
 パートナー機能も四要素から構成され、第一が「戦略法務」と呼ばれる「ビジネスの視点に基づいたアドバイスと提案」。法令の観点のみならずビジネスジャッジに対する提案等が想定できます。第二に「ファシリテーターとしての行動」。新規プロジェクト等の必要な場面でスケジュールを把握し、社内外のリソースを確保・差配する役割などです。第三に「ビジョンとロジックを携えた行動」。「グレーゾーン」でのチャレンジに向けた行政機関が設ける各種制度の活用等が想定できます。第四に「法令、契約に基づいた正当な主張」。カルテルの被害者としての損害賠償請求訴訟の提起などが想定できます。

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久


●賃金と年休の時効見直し

 2019年7月1日、厚生労働省は「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が取りまとめた「論点の整理」を公表しました。
 報告書では、賃金等請求権の消滅時効の期間を「将来にわたり消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないか」とする一方、労使の意見の溝が大きく、引き続き検討が必要と述べられています。消滅時効の期間が長くなれば、現行3年の賃金台帳の保存義務についても労働基準法が改正されることでしょう。
 また、年次有給休暇について取得率の向上という現行の政策からすると「必ずしも賃金等請求権と同様の取扱いを行う必要性がない」とされ、現行2年の消滅時効の期間が維持される可能性が高くなっています。


●個別労働紛争解決制度の施行状況

 厚生労働省は、2018年度の「個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。これによると、相談件数は11年連続で100万件を超え、高止まりの状況です。民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申し出件数、あっせんの申請件数のすべてで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高件数になっています。
 また、法改正で新たに定義されたパワーハラスメントも、個別労働紛争解決制度の枠組みで取り扱われることになるため注意が必要です。

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ


●決算賞与の損金算入時期

 従業員に決算賞与を支給する場合において、その決算の事業年度で未払いの賞与をその事業年度の損金とするためには、以下の要件のすべてを満たす必要があります。
(1)その事業年度中に賞与の金額を各人別に、かつ同時期に支給を受ける全従業員に通知する。
(2)通知をした金額を、通知した全従業員に対して、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一か月以内に支払う。
(3)その通知をした事業年度に損金経理する。
 ただし、給与規程などに「支給日に在職する者のみに賞与を支給する」旨の定めがある場合は、(1)の要件を満たすことができず、未払いの賞与はその事業年度の損金とならないため、事前に給与規程などの確認をすることが必要です。

●役員退職金の損金算入時期

 役員退職金の損金算入時期は、原則、株主総会の決議等で退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、退職金を実際に支払った事業年度に経費計上した場合、支払った事業年度の損金とすることも認められます。
 なお、退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度において取締役会で内定した金額を未払金計上した場合であっても、未払金計上した事業年度の損金とはならず、原則通り退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度の損金となりますので注意が必要です。

『月刊総務』2019年9月号P7より転載