契約書作成の目的は、合意内容の再確認やその内容につき後日の証拠とすることや、そもそも契約の締結を慎重にさせるという効力もある。
契約書を作成する際は、対象となる取引内容の理解があって、そこから記載事項を確定していく。無効となる条項に該当するようなことはないと思うが、一応、民法上の契約に関係する知識は一通り勉強しておくべきである。契約書の日付や収入印紙についての知識も必要となる。当事者のどちらが契約書の雛型を作るかは、取引上の力関係に拠るところが大きい。企業規模が大きくなればなるほど、定型の契約書が存在し、それに従わざるを得ない状況となる。
但し、それを鵜呑みするのではなく、疑問点を質問したり、変更は無理と思われても、自社の権利につき主張すべきところは主張しておく。それにより、なにかあった場合に誠実に対応しなくいはならない、という印象を植え付けることができる。
契約書を作成する際は、契約の対象となる取引や行為について、十分に把握することが必要となる。業務フローを明確にし全プロセスを繋げた状態にて書き出してみて、そこから以下の項目について明確にしていく。
この中から、書面に明記し確認しておくべき項目につき、契約書の内容としていく。
契約書に記載すべき事項としては、契約の当事者、契約の趣旨、契約の目的物、契約によって発生する債権・債務の内容である。実際の契約書の内容としては以下の通り。
契約書の日付は、通常、その契約内容の効力の発生日となるはずである。
但し、契約書の作成より前に契約の効力が生じている場合は、「この契約は平成○年○月○日に効力を生じていることを確認する」というような文言をいれておく。或いは、契約書調印の日より後に契約の効力を発生させたい場合は、「この契約は平成○年○月○日より発効する」というような文言をいれておく。ただ、実務上は、そこまでの文言は入れておらず、契約書の作成が効力発生以降の場合は、当事者間の合意のもと、バックデイトで日付を記入しているケースが多い。
契約に関して、民法上では、私的自治の原則や契約自由の原則という規定がある。当事者同士の関係では、どのような契約を締結しようと構わないし、当事者間で取り決めたルールに従うのも構わないとされる。よって、法令の規定より当事者間の合意の方が優先される。
但し、公の秩序を保つために強制される規定については、これと異なる内容の合意をいくら当事者間で行ったとしても、それは無効となる。公序良俗を保つために強制される規程を強行規定といい、当事者間の取り決めを任意規定という。企業間の契約において、強行規定と異なるような内容で合意することは殆どないが、一般的知識として押さえておくべきである。
商業取引に関する契約文書で、課税物件表に掲げるものには税金が課せられる。契約の成立や、契約内容の変更や補充に関する文書であれば、「○○契約書」という表題でなくても、印紙税の対象となる。よって、「覚書」であっても、実質的な内容が契約書であれば、印紙の添付が必要となる。添付する印紙には、時限措置として、印紙の額が従来のものより軽減されている場合もあるので注意すること。該当する印紙を貼り忘れたとしても、契約書の効力には影響は無い。
但し、貼り忘れは脱税となり、印紙を貼り忘れた場合は、印紙税額の3倍、印紙の消印を忘れた場合は、同額の過怠税が徴収される。その際に押印される消印は、契約書に使用した印鑑でなくても良く、また、契約者全員の印鑑も必要ではない。当事者の内、だれか1人の押印、それも認め印が消印として押印されていれば、それで事足りる。
(執筆:『月刊総務』)