著作権法:職務上制作した著作物? 法人が著作者になるとき

最終更新日:2010年03月11日

著作権法:目次

著作物を創作した人は、その創作のときに著作者としての権利(著作権と著作者人格権)を手に入れます。しかし、一定の要件を満たすとき、法人など(会社や国、学校等)が著作者になることがあります。(プログラムの著作物の場合の違いに注意)

(1) 法人が著作者になる場合の4つの要件

●法人の発意(企画・決定)により、その指揮のもとで著作物を制作すること。従業員同士でアイデアを出しただけでは法人の発意とはなりません。法人の中で企画制作について決定する権限のある者の意思によって決定されなければなりません。

●法人の従業員が職務上制作すること。雇用関係に基づき、その法人の指揮監督のもとで制作すること。請負契約に基づいて著作物を制作した場合には、請負人が著作者です。 しかし、創作活動において独創的な役割を持たない単なる補助者では著作者にはなれません。 派遣社員が派遣先で職務上制作した場合はどうでしょうか。この場合は、 派遣先企業が著作者になりうると考えてよいと思いますが、解釈が分かれていますので、事前に契約で取り決めをしておいた方が良いでしょう。

●法人の名前で公表されること(プログラムの著作物の場合はこの要件は不要)

●従業員に制作を任せるときの契約や勤務規則などで、この規定と異なる定めがないこと。雇用契約で、「権利は従業員に帰属する」と定めた場合などは、会社は著作者にはなりません。従業員を採用するときに、従業員が創作した著作物の一切が法人に帰属するような雇用契約をしても有効ではない、と思われます。

※著作者としての権利は本来、作品を創作した人間に与えられるべきです。著作権法が著作者の思想感情を保護することによって文化の発展を目指していることを考えても当然のことです。この規定を、法人が著作物の制作において重要な役割をもつようになった現実にあわせての特例だと考えれば、上記4つの要件は狭く解釈し、個人の思想感情が十分保護されるよう慎重に運用すべきと思います。 

※プログラム著作物の場合だけ、「3」の要件をはずしたのは、プログラムは著作社名の表示がされないで利用される場合が多いからです。

(2) 映画の著作物

映画はたくさんの著作者による創作活動を寄せ集めて作られます。ひとつの作品の中にたくさんの著作者、たくさんの著作物が存在します。映画という作品としての権利を一人に集中させないと、利用を許諾する際などに不便なことになりますので、映画の著作物の場合は特別な規定があります。つまり、映画制作のために制作するという契約で制作された著作物の著作権は、映画製作者に属することになります。この場合、著作権のみが映画製作者に帰属するので、著作者人格権は個々の制作者に残ります。※頒布権について: 映画の著作権には、映画の著作物に特有の権利である頒布権が含まれます。映画の頒布についての許諾は映画製作者権利です。しかし、映画の一部だけを利用したり改変したりする場合には、著作者人格権を侵害する恐れが出てきますので、該当する部分の著作者の同意が必要になるかもしれません。

(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)

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