株主代表訴訟対策:役員賠償責任保険

最終更新日:2010年03月01日

株主代表訴訟対策:目次

役員賠償責任保険とは、取締役や監査役がその業務に関して、所属する会社や第三者に損害を与えてしまった場合、個人として負担しなければならない裁判費用や賠償金を補償する保険である。補償の対象としては、第三者からの損害賠償請求と株主からの損害賠償請求、株主代表訴訟が対象となる。現在、アメリカにおける役員賠償責任保険の普及度は、大企業において95%以上にも達し、我が国でも、保険料の税務上の取扱に関し、一定の限度で会社損金に認められることとなり、上場企業の約80%が加入しているものとみられている。特に、文書提出義務に関する事項につき民事訴訟法が改正され、文書提出命令の対象とされる文書の範囲が広くなったことにより、株主代表訴訟の原告における証拠収集が容易になり、また、刑罰法規違反に絞って提訴される傾向もあり、役員の敗訴可能性が高まりつつある。保険の内容や免責事由について十分理解する必要がある。

●保険内容

会社が契約者となり、全取締役と監査役が対象となる。契約締結時に既に退任している役員と、保険契約期間中の新任役員も対象となる。役員が死亡した場合、その相続人又は相続財産法人が被保険者となる。支払限度額は、支払期間中の総支払限度額として設定される。保険料の負担については、通常の企業保険であれば、全額会社負担となるが、この保険の場合、会社9割、役員個人1割の割合で負担させるのが一般的である。役員間の配分については、役員数での均等按分や、役員報酬に比例して按分する方法がある。役員個人分の支払額は、数十万円程度となる。補償の対象は、法律上の損害賠償責任のある役員が支払わなければならない賠償金と、訴訟、仲裁、調停又は和解を行うことにより発生した費用である。但し、役員が不当利益を得た場合や、違法行為、確信犯的な行為などの法令違反により損害が発生した場合は補償の対象外となる。

●免責事由

免責事由の主なものは、以下の行為について損害賠償請求が提起された場合。

(1) 被保険者の私的な利益、又は便宜の供与を違法に得たことについて

(2) 被保険者の犯罪行為、或いは法令違反を認識しながら行なった行為について

(3) 被保険者に対し違法な報酬や賞与が支払われていたことについて

(4) 被保険者のインサイダー取引によって得た利益について

(5) 違法な利益供与について

(6) 保険開始日以前の行為、或いは保険開始日以前に提起されていた訴訟について

(7) 保険期間の開始日において、損害賠償請求がなされるおそれがある状況を被保険者が知っていた場合の行為について

(8) 身体的障害、精神的苦痛、財物損壊、人格権侵害について

(9) 一定%以上の発行済み株式を所有する大株主からなされた損害賠償請求

(執筆:『月刊総務』)

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