著作権法:著作権の保護期間

最終更新日:2010年03月02日

著作権法:目次

(1) 保護期間とは

著作物を利用する際には著作権者からの許諾が必要ですが、一定期間(保護期間)が経過した著作権は保護されなくなります。保護期間は日本では50年間ですが、この期間は著作者が亡くなった年の翌年1月1日から起算します。法人や団体名義の著作物の場合は、著作者の死亡時期が判明しませんので、著作物が公表された日の翌年の1月1日から起算します。 著作者が無名・変名(著作者が誰かわからなかったり、ペンネームなので本人がいつ死んだのかわからない場合)である著作物の場合も、法人の場合と同じく、公表されたときを基準に起算します。欧米諸国では保護期間が70年の国があります。米国では、個人の場合は死後70年、法人等の場合は創作されてから95年保護されるそうです。なお、日本でも映画の著作物の保護期間が平成16年施行の法改正で70年に延長されました。

(2) 保護期間はどうしてあるのでしょう

ある日突然に優れた文化が生れるわけではなく、他のいろいろな文化の影響を受けて発展してきました。同じように、どんなに優れた著作物も、すぐれた先人の著作物から影響を受けていないものはありません。「真似る」、ということは文化の発展にとって、とても重要なことです。日本語の「学ぶ」という言葉が「真似ぶ」という言葉を語源とするいう話があります。ですから、著作物は一定の期間を過ぎれば、社会全体にとっての文化的遺産として扱い、自由に真似ることができなければなりません。著作者が権利を長い期間にわたって独占することは、文化の発展に寄与した過去の先人に対しても失礼なことだと言えます。

(3) パブリック・ドメイン

日本では通常、著作者が死亡してから50年間は著作権が保護されます(著作権法51条)。しかし、著作物を無名で又は変名で公表している場合、法人など団体名義の著作物の場合、映画と定期刊行物の場合は公表されたときから50年間保護されます(52?56条)。保護期間が過ぎれば、その著作物は誰でも自由に無許諾で利用することができます。ただし、著作人格権を侵害する利用、つまり著作者が生きていたらきっと嫌がりそうな、または著作者の気持ちを傷つけるような利用はしていけません(59条、60条)。保護期間の起算時は、死んだ日や公表の日ではなく、死亡又は公表した年の翌年の1月1日です(57条)。実演など、著作隣接権の保護期間は、実演、音楽の固定、放送などの行為の時から50年間保護されます。

(4) 戦時加算

日本は第二次世界大戦中、敵対国である連合国国民(他の国も同様かとも思えるが)の著作権を保護しなかったという理由で、戦争中に存在した著作物については保護されなかった期間を、保護すべき期間として加算しなければなりません。これは1951年のサンフランシスコ平和条約に基づくものですが、条約批准の日が国によって異なるのでちょっと面倒です。アメリカ・英国・オーストラリア・カナダ・フランスは条約の発行前に批准が済んでいるので、みな3794日(開戦日から条約発効の日までの日数)を加算すればよいのですが、ブラジル・オランダ・南アフリカ・レバノンなどは遅れて批准した国は加算日数が多くなるので注意が必要です。ちなみに、ロシアや中国はわが国と平和条約を結んでいないので、戦時加算はされません。同じ戦勝国なのに妙なものです。

(5) 昔の写真の保護期間は?

古い写真をインターネットで掲載したい場合、現行法で考えますと、その著作者、つまり撮影者が死亡して50年経過しているかどうか、という判断をついしてしまいがちです。ところが、現行法施行時(1971年1月1日)にすでに旧法によって著作権の全部が消滅している著作物については、現著作権法は適用されないことになっています(附則第2条)。そうすると、古そうな写真については旧著作権法の条文もみなければなりませんが、旧著作権法第3条には、「発行又は興行シタル著作物ノ著作権ハ著作者の生存間及其ノ死後30年間継続ス...」とあり、保護期間は著作者の死後30年間かと思いきや、同法第23条において「写真著作権ハ10年間継続ス。前項の期間ハ其ノ著作物ヲ始メテ発行シタル年ノ翌年ヨリ起算ス若シ発行セサルトキハ種板ヲ製作シタル年の翌年ヨリ起算ス...」とあり、写真の著作物については、写真を発行した年または種板(ネガのことでしょうか?)を製作した年の翌年から10年が経過すると消滅すると解釈できそうです。ところがどっこい、旧著作権法の附則の章の第52条の最後において、「第23条第1項中10年トアルハ当分の間13年トス」とあり、保護期間は13年となっています。そうなると、1940年に撮影された写真は、1941年1月1日から13年が経過した1954年1月1日には著作権が消滅していると考えられます。これを新法施行時から逆算しますと、1958年よりも前の時期に発行された写真、または発行時がわからない写真で1958年よりも前の時期に撮影された写真については、著作者がいつ死亡したかどうかに関わらず著作権が消滅しているということになります。以上は日本の法律が適用される場合の話です。それにしても、旧著作権法の構成は理解しづらく、本当にこの解釈でよいのか多少自信がありません。もし間違いがありましたら管理者までお知らせ願います。

(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)

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