総務のトピックス

【会計トピックス】:

会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方

2016-06-24 17:12

 2016年2月18日に金融庁及び東京証券取引所より『会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(2)』(以下「本意見書」という)が公表されました。本意見書は、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という)の諸原則のうち、取締役会のあり方に関し、コーポレートガバナンスを実現していく上で、現時点で重要と考えられる視点を示したものです。

 今回は、コードの適用状況を確認するとともに、本意見書が示す実効的なコーポレートガバナンスを実現していく上での視点について要約します。


コードの適用状況

 2015年6月よりコードが適用され、2015年12月末時点では全上場会社の約7割にあたる2,485社が適用状況を公表しています。なお、コードは法令とは異なり法的拘束力を有する規範ではないため、その適用に当たっては、「諸原則を"実施"するか、実施しない場合には、その理由を"説明"するか」が求められています。

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 上表のとおり、東証第一部・第二部の会社のうち約8割が、コードの諸原則の90%以上を"実施"している中、取締役会に関係する項目は"実施"の比率が比較的低くなっていることが特徴的です。これは、会社経営の根幹に係わり慎重な対応が必要な諸原則であるため、コード適用直後の2015年12月末時点では"実施"の状況まで至っていないのが実情と考えられます。

 ただし、取締役会の実効性の評価については今後の取組みとして"説明"している会社が多く、今後、本格的に"実施"することが予定されている会社が多くあることがうかがえます。


企業を取り巻く経営環境の変化と取締役会のあり方

 上述の背景のもと本意見書は、上場会社を取り巻く環境が大きく変化し続ける中、取締役会のあり方に関し、形式的な対応ではなく、実効的なコーポレートガバナンスを実現していく上で、次の項目に着目しています。

  ・最高経営責任者(CEO)の選解任のあり方(補充原則4-1(3)、4-3(1)等)
  ・取締役会の構成(原則4-7から9、4-11等)
  ・取締役会の運営(原則4-8、4-10、4-12から14等)
  ・取締役会の実効性の評価(原則4-11)


(1) 最高経営責任者(CEO)の選解任のあり方(補充原則4-1(3)、4-3(1)等)

 CEOの選解任は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していく上で、上場会社にとって最も重要な戦略的意思決定であり、そのプロセスには、客観性・適時性・透明性が求められます。
 そのため、CEO候補者の人材育成及び選任には、中長期的な観点から、十分な時間と資源を確保することが重要です。また、選任のための後継者計画の策定及び運用にあたっては、不透明なプロセスによらず、客観性・適時性・透明性を確保することが求められます。そして、CEOに問題があると認められる場合には、取締役会が適時・適切にCEOを解任できるよう、取締役会の経営陣からの独立性・客観性が十分に確保されていることが重要です。

(2) 取締役会の構成(原則4-7から9、4-11等)

 経営環境の変化や経営課題の複雑化に対応して求められる役割・責務を果たしていくため、取締役会は、必要とされる資質・多様性を備えるとともに、独立性・客観性を確保していくことが重要です。
そのため、取締役会の構成は、会社の事業・ステージ、経営環境や経営課題に応じて、資質のバランスや多様性を充実させていくことが求められます。また、取締役会の独立性・客観性を確保するとともに、監査委員会・監査等委員会(以下「監査委員会等」という)が業務監査・会計監査等の重要な役割・責務を適切に果たすべく、監査委員会等の独立性・客観性を確保することが必要です。そして、取締役会や監査委員会等の独立性・客観性が確保されるか否かは、CEOが経営判断等を行う上で、取締役会等の「独立した客観的な立場」という特性を活かす意思があるかどうかにかかっています。

(3) 取締役会の運営(原則4-8、4-10、4-12から14等)

 上場会社やその企業集団が経営環境の変化や経営課題の複雑化に対応していくためには、取締役会における戦略的な方向付けや会社の業績の適切な評価等に関する議論を充実させていくことが重要です。
 取締役会においてこのような議論を充実させていくためには、論点の明確化、議案の絞り込み等、運営上の工夫が必要です。また、社内業務執行取締役は、執行役としての役割にとどまらず、取締役として職務執行の監督等を行う役割も担っていることについて、認識を深めることが必要です。そして、会社が取締役会において、独立社外取締役も議論に貢献できるよう環境整備(常勤監査役等との情報交換等)を行うことや、独立社外取締役がステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映することが重要です。

(4) 取締役会の実効性の評価(原則4-11)

 取締役会の資質・多様性やその運営を充実させていくための取組みが有効に行われているかなど、取締役会全体としての実効性の評価を行い、次の取組みに継続的につなげていくことが重要です。
 そのため、評価の実施に際しては、取締役会メンバー1人1人による率直な評価がまずもって重要と考えられます。また、取締役会が果たすべき役割・責務を明確にした上で、それに照らして取締役会の構成・運営状況等が実効性あるものになっているかについて、実質的な評価を行うことが必要です。そして、取締役会が、その資質・多様性や運営を充実させていくためのPDCAサイクルを実現していくためには、自らの取組みや実効性の評価の概要について、ステークホルダーにわかりやすく情報開示・説明を行うことが重要です。


おわりに

 本意見書では、資質とリーダーシップを有する取締役を計画的に育成・選任し、独立性・客観性を備えた取締役会を構成すること、取締役会の適確な評価を行うことにより、取締役会の実効性向上に向けたPDCAサイクルを作り上げることが期待されています。従来、黙示的には認識されていた事項ですが、経営環境が変化し経営課題が複雑化した今日においては、これらの示唆を明示的な課題として受け止め、会社を積極的に変化させていくことが取締役に求められている役割であると考えられます。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
    ( http://www.akj-partners.com/