パワーハラスメント:つながらない権利

最終更新日:2025年06月30日

「つながらない権利」とは、労働者が勤務時間外や休日に、電話・メール・チャットなどの手段で業務連絡に対応する義務を免除される権利を指す。ICT(情報通信技術)の進展により、労働者が常時業務にアクセス可能な状況となった現代において、心身の休息や私生活の尊重の観点から、国際的にも重要な労働者保護のテーマとして注目されている。

国際的な動向

2016年、フランスが労働法典を改正し、「つながらない権利(droit à la déconnexion)」を法制化したのが世界初とされる。その後、EU加盟国の中でフランスを含めた8か国において、勤務時間外の業務連絡に関する何らかの法的整備が行われるなど、各国でワークライフバランスの観点からの労働環境整備が進められている。

日本国内の動き

日本では、2021年に改訂された「テレワークガイドライン」において、勤務時間外の業務連絡が労働者の生活時間を侵害するおそれがあることが指摘され、長時間労働対策として、時間外メール送付の抑制やシステムへのアクセス制限などが推奨されている。

2022年7月には、厚生労働省の「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書において「つながらない権利」という用語が初めて明示され、ICTの進展によって仕事と私生活の境界が曖昧になることを防ぐ観点から、国際的な事例を参考に今後の制度設計を検討していく必要性が言及された。

さらに、2025年6月現在は厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会において、「つながらない権利」の制度化に向けた議論が進行中である。

第196回(2025年3月)、第198回(5月)、第199回(6月)の分科会では、複数の委員が勤務時間外の業務連絡による生活侵害の実態を報告し、社内ルールの限界や顧客対応とのバランスを踏まえた法的措置の必要性について意見を述べている。特に、社内努力だけでは十分な効果が得られないこと、労働者が連絡を拒否した際に不利益を受けない制度設計の重要性が指摘された。


参考:

厚生労働省 労働政策審議会・労働条件分科会 第199回資料

第134回労働政策フォーラム「ICTの発展と労働時間政策の課題─『つながらない権利』を手がかりに─」趣旨説明

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