文書管理の技術:捨てる技術

最終更新日:2015年04月21日

文書を削減するときに以下のような課題がある。


  ・必要な文書まで捨ててしまう

  ・削除対象文書の抽出や、判断に多大な時間を必要とする


それらを踏まえた適切な管理のための「3つの基本ルール」とそれに関連した技術には、次のようなものがある。


【基本ルール1】≪組織の記録≫と≪属人的な記録≫の保管場所を分ける

≪組織の記録≫は、「法定保存文書」、「訴訟対応文書」、「組織内で利用する文書」の文書のことである。

「組織内で利用する文書」は、組織活動の記録そのものであり、製造業における製造図面にように誰が見ても組織の記録と認められるものから、検討資料のように判断が分かれるものまである。この判断基準を組織内で共有しておくことが重要である。

個人でしか理解できないような文書、下書き、メモ類は≪属人的な記録≫であり、組織として必要な情報であれば、第三者が利用できるように加工してから≪組織の記録≫とする必要がある。


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(図表-5)


【基本ルール2】保存期間を設定する

≪組織の記録≫の文書ごとに、必ず保存期間を設定する。≪属人的な記録≫にも保存期間を設定するが、最長1年程度と限定的にするのが望ましい。ファイル基準を使って、文書ごとに、その「起算日」と「保存要求根拠」を記録しておく。「起算日」の例には、作成日、登録日、申請日、帳簿閉鎖日、契約締結日などが、「保存要求根拠」には、法律条文、時効、社内手続きなどがある。


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(図表-6)


【基本ルール3】定期的に廃棄作業を実施する

保存期間を設定しただけでは、「仏作って、魂入れず」になるので、設定した保存期間に沿って、定期的(半年または少なくとも1年に一度)に、廃棄作業を実施することが必要である。重要なのは削除候補の抽出や削減作業を個人任せにしない工夫、人手をかけない工夫であり、以下のようなツールを効果的に活用することが望まれる。


(1)紙文書の保存期間管理

紙文書を束ねたファイル(バインダー)の背表紙に、保存期間、廃棄予定年月日を記入する。さらにファイル基準表(台帳)は、表計算ソフトなどを利用し、保管期限を迎え廃棄候補となったファイルのリストを出せるようにしておく。紙文書を対象とした管理ソフトの多くはこのような機能を持っている。


(2)電子文書の保存期間管理

ファイルごとに保存期間を設定し、保存期間を迎え廃棄候補となった文書のリストを出力する。文書管理ソフトでは、これら機能やアドオンで管理ツールを作成するインターフェースが提供されている製品がある。ファイルサーバーそのものでは、保存期間設定の機能はないものの、サードパーティ(他社のOSや機器などに対応する製品を作っているメーカー)からは、これら機能が提供されている。


(3)電子ファイルの削除候補

削除候補となる電子ファイルには、以下のようなものがある。

・保存期間が切れている

・一定期間アクセス、更新がされていない

・中身が同じ(重複)やファイル名が類似している

・データ容量が大きい、業務と無関係な画像・音声ファイル


(4)保管委託(外部倉庫やデータセンター)

活用の少ない捨てられない文書は事務所で保存するのではなく、専門業者に委託することで、「保管コスト」

「セキュリティ確保」「災害対策」などの課題解決も同時に図る。

委託先の選定については、サービスレベルや契約条件を確認する必要がある。


※参考「JIIMA文書情報マネジメントセンター サービス・ガイドライン」


『月刊総務』2014年6月号 総務のマニュアル「一から始める文書情報管理業務マニュアル」(執筆:溝上 卓也 JIIMA講師))より再編さん

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