企業危機管理:公益通報者保護制度

最終更新日:2025年05月30日

公益通報者保護制度は、労働者や役員が勤務先などで法令違反を発見し、通報した際に不利益な取扱いを受けないよう保護する制度である。この制度は、公益通報者保護法(平成16年法律第122号)に基づき、2006年4月1日から施行されている。

制度の概要

公益通報者保護法は、労働者や役員が、勤務先などで法令違反を認識し、通報した場合に、解雇や降格などの不利益な取扱いを受けないよう保護することを目的としている。また、通報者の保護要件や通報先、通報対象事実などを明確に定めている。

通報の対象

通報の対象となるのは、公益通報者保護法の別表に掲げられた法律に規定する罪や過料の対象となる事実である。これには、消費者の利益の擁護、公正な競争の確保、環境の保全などに関わる法律が含まれる。具体的な対象法律の一覧は、消費者庁のウェブサイトで確認できる。

通報先

公益通報者保護法では、通報先を以下の3つに分類している。

  1. 事業者内部:通報者が勤務する企業や組織内の窓口。
  2. 行政機関等:通報対象事実について処分や勧告等の権限を有する行政機関。
  3. その他の外部通報先:通報対象事実が発生し、生命・身体に重大な危害が生じるおそれがある場合など、一定の要件を満たす場合に限り、外部機関(報道機関等)への通報も保護の対象となる。

通報者は、これらの通報先のいずれに対しても通報することができるが、通報先によって保護されるための要件が異なる。

通報者の保護

公益通報者保護法により、通報者は以下のような保護を受けることができる。

  • 不利益な取扱いの禁止:通報を理由とする解雇、降格、減給、契約解除などの不利益な取扱いが禁止される。
  • 解雇等の無効:通報を理由とする解雇や懲戒処分は無効とされる。
  • 損害賠償の請求:不利益な取扱いを受けた場合、通報者は損害賠償を請求することができる。
  • 行政措置:事業者が体制整備義務等に違反した場合、内閣府から勧告やその旨の公表が行われることがある。

事業者がとるべき措置

事業者は、公益通報者保護法に基づき、以下の措置を講じることが求められる。

  • 内部通報体制の整備:従業員数300人を超える事業者は、内部通報に適切に対応するための体制を整備する義務がある。
  • 公益通報対応業務従事者の選任:通報の受付や調査、是正措置を担当する者を選任する必要がある。
  • 通報者の秘密保持:通報者の氏名や通報内容が漏洩しないよう、秘密保持の措置を講じる必要がある。
  • 教育・研修の実施:従業員に対して、公益通報制度に関する教育や研修を実施し、制度の理解を促進することが求められる。

これらの措置については、内閣府告示第118号「公益通報者保護法に基づく指針」に詳しく定められている。


参考:消費者庁「公益通報者保護制度」

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