下請法とは、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、親事業者(元請)による下請事業者への不公正な取引行為を防止することを目的とした法律である。1956年(昭和31年)に制定され、中小企業を保護し、公正な取引の推進を図っている。
同法では、製造業やソフトウェア開発、デザイン制作などにおいて、資本金の規模や業種に応じて親事業者・下請事業者の関係が定義される。たとえば、資本金3億円超の親会社が資本金3000万円の企業にシステム開発を委託する場合、その関係は下請法の適用対象となる。
下請法で禁止されている主な行為には以下がある。
納品が完了しているにもかかわらず、契約で定めた期日までに代金を支払わない、あるいは一方的に減額する行為。
明らかな不良品でないにもかかわらず返品する、著しく低い価格で発注することなど。
下請けが作成した成果物やデータを対価なしに提供させる行為。
これらに違反した場合、公正取引委員会または中小企業庁が調査・指導を行い、勧告や企業名の公表、再発防止命令などの措置がとられる。
近年、働き方改革やテレワークの拡大により、委託取引の形態が多様化していることを受けて、下請法の適用範囲や運用についても柔軟かつ厳格な運用が進められている。たとえば、IT業界における受託開発やクラウド業務の外部委託も下請取引とみなされるケースが増えており、発注側企業には従来以上の注意が求められている。
また、書面交付義務(契約内容を記載した書類の発行)や支払期日の明確化といった基本的な遵守事項を怠った場合でも、行政処分の対象となるため、企業の法務・購買・経理部門においては、取引内容の事前チェックと社内教育の徹底が重要となる。
とくに多拠点展開や複数部署による発注が行われる企業では、下請法に関する社内ガイドラインの整備や、システム上での契約・支払プロセスの可視化がリスク回避のカギとなる。