総務辞典

著作権法について

二次的著作物の利用

小説を映画化したり、外国語の論文を日本語に翻訳したり、楽曲を編曲したりして作られた作品も著作物として扱われますから、その著作権が保護されます。ある著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化などしてできた新たな著作物を二次的著作物といいます。他人の著作物を翻訳したり、編曲したりする場合には、翻訳・翻案権者等(第27条の権利を持つ人)からの許諾が必要です。

(1) 翻訳権、翻案権等
第二十七条: 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

(2) 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
第二十八条: 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。

(3) 第27条の権利
翻訳:言語の著作物を他の言語で表現しなおすこと
編曲: 音楽の著作物をアレンジして付加価値をつけくわえること 
変形: 美術の著作物の表現形式の変更など(写真をデジタル加工するなど) 
脚色: 小説等の内容を演出等の目的で書き換える
映画化: 小説等の著作物を映画として表現する。以上の行為を行う場合は、その著作物の権利者から許諾が必要です。そして、このようにして創作された著作物を「二次的著作物」といいます。

(4) 翻訳権の存続期間についての経過措置
現在の著作権法施行(昭和46年1月1日)前の発行された著作物については、原著作物が発行されたとき(正確には翌年の1月1日)から10年以内にその翻訳物を発行しなかったときは、その翻訳権は消滅します。

(5) 二次的著作物を利用するときの注意
二次的著作物には原著作物の権利もあります。
?原著作物の二次的利用に関する権利(第28条の権利)
?原著作者から許諾を得て翻訳、編曲、変形、脚色、映画化した人の権利 (つまり二次的著作物を創作した著作者の権利)。
ですから、二次的著作物を利用するときには、両方の権利者からの許諾が必要となります。 

(6) 例1: 「星の王子様」を利用するとき
有名な「星の王子様」という作品があります。作者はフランス人 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900?1944年)。この「星の王子様」という題名は、日本人の翻訳者がつけた名前です。原作の題名は「LE PETIT PRINCE」、直訳すると「小さな王子様」といったところでしょうか。日本で人気のある「星の王子様」は、原作者が サン=テグジェペリ、二次著作物である日本語版の著作者は翻訳者である内藤濯氏(岩波文庫版)です。 「星の王子様」を映画化する場合には、原著作者からの許諾が必要でしょう。ただし、原作の著作権が保護期間経過により消滅していれば、原作の権利者からの許諾は不要です。☆翻訳者の権利は別です 仮にサン=テグジェペリの作品の保護期間が経過していたとしても、翻訳者の権利は翻訳者が死亡してから50年間は存続します。二次的著作物である「星の王子様」の日本語版を自由に利用できる日は、まだまだ先のようです。しかし、サン=テグジェペリが描いたと思われるイラストやストーリーの原文については、権利が消滅していれば利用できるということになります。

(7) 例2: 「大きな古時計」
歌手の平井堅さんが歌ってヒットした「大きな古時計」も二次的著作物であるといえます。原曲の作詞作曲はアメリカのHenry Clay Work(1832-1884)という人によるものです。これを保富康午氏が日本語訳した歌が「大きな古時計」という名で親しまれています。保富氏は多くのアニメヒットソングを手がけた方です。 Henry Clay Work氏が亡くなってかなりの期間が経過していますので、この曲を商品化する際には、現在では原著作者の許諾は不要となりますが、保富康午氏が翻訳した詞を使用するとなれば、保富氏はまだ亡くなられて間もないので、保富氏から著作権を承継した方からの許諾が必要になります。もし詞を自作すれば誰からの許諾も得ずに使用できるということになります。また、原曲が誰かに編曲されていて、その編曲された二次的著作物を利用する場合も同様に許諾が必要です。

(8) 著作権を譲渡するとき、二次的著作物に関する権利に注意
著作権を他人に譲渡するとき、または著作権を他人から譲り受けとき、単純に「著作権を譲渡する」という契約を結んだだけでは第27条と第28条の権利は移転しなかったと推定されるので注意が必要です。著作権法 第61条1) 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。2) 著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
つまり、第27条と第28条の権利(つまり著作物の二次的利用に関する権利)については、「第27条と第28条の権利もあわせて譲渡する」などのようなとりきめをしておかないと、二次的利用に関する権利が譲渡人に留保されるということです。これは、一般的に弱い立場あるクリエイターを保護するための規定です。例えば懸賞広告の条件で「著作権はわが社に帰属します」とあった場合、その懸賞に応募した作品を映画化やドラマ化する場合には、あらためて応募者(27条と28条の権利者)から許諾が必要になるわけです。ただし、条文にあるとおり「留保されたものと推定される」わけですから、権利が留保されたという推定をくつがえす事情や証拠があれば話は別です。
(執筆:のぞみ合同事務所 行政書士日野孝次朗)

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