パンデミック対策における法務問題:想定されるケース

最終更新日:2010年03月03日

次に想定し得る法務問題について例示します。企業の法務担当者は、このような問題が発生することを事前に把握し、各種規定・契約書の改定や、労働組合との協議等を進めなくてはなりません。

<従業員の出社拒否>

まず、事業を継続するケースで、感染リスクを理由として、従業員が出社を拒否する可能性が挙げられます。対人接触が多い等、感染リスクが高いと思われる職種においては十分想定できる状況です。しかし、社会的機能維持を使命とする事業者にとっては、クリアしなくてはならない非常に悩ましい問題です。

<事業停止・自宅待機時の賃金支払い>

罹患者との濃厚接触や、発生地域への滞在、感染が疑われる症状等、事業者が従業員に自宅待機を命じる状況が想定されます。また、感染蔓延期においては、非中核業務は停止し、事業所を閉鎖することも十分に考えられます。

このようなケースにおいて事業者が通常通りの賃金を支払い続けた場合、パンデミックが長期化するであれば資金繰りの悪化が懸念されます。財務状況に余裕のない中小企業にとっては死活問題になりかねません。

<一部の従業員への業務の集中>

中核業務に従事する従業員に業務が集中して、1人あたりの労働時間が増加することが懸念されます。また、感染蔓延期には欠勤率が増加し、更に負荷が増すことも想定しなくてはなりません。その場合でも、労働基準法に抵触しないような事業運営が求められます。

<従業員の勤務中の感染による補償>

感染蔓延期に、業務上の理由で罹(り)患した場合は業務上の疾病となり得ます。因果関係の立証は困難ですが、業務上の外出以外に罹(り)患する原因が無ければ、認定される可能性は十分あり得ます。労災保険でカバーされない損害が発生した場合は、事業者には補償を行う義務が生じ、多大な負担となる可能性があります。

<契約不履行による補償>

感染蔓延期において、従業員の欠勤率の上昇や、サプライチェーンの停止により、顧客へ約束している納品やサービスを履行できないケースが十分想定されます。その場合、予見が可能であると認められるにもかかわらず、適切な対策を実施していなかった場合は、補償を免れることはできません。

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