月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

平成終了まであと少し 改元対応のポイント

2019-04-22 11:38

2019年4月30日をもって、30年続いた「平成」が終わりを迎えます。
新元号「令和」の発表で盛り上がる昨今、改元に伴う混乱はまだまだ続きそうですが、企業活動においては具体的にどのような影響が出るのでしょうか。改元のタイミングがわかっているのが今までとは異なる点。残りの時間で何をすべきか、何に注意すべきか、業務を滞りなく行うためにも、対応のポイントを確認していきましょう。

法務の視点から見る改元とは

「元号」と「改元」

 元号とは、「年に付ける呼び名」(大辞林参照)を意味します。特に、中国において漢の武帝の時代に「建元」と称したものを最古として、わが国では645年の「大化」が初めての元号とされました。30年前に昭和から平成に改元されたことを覚えている方も多いと思います。

 現代日本の元号は、「元号法」を根拠としています。この法律はとても短い法律で、「元号は、政令で定める」「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める」という2つの項から構成されています。

 改元は、元号を改めることを意味しますが、元号法の2項によれば、皇位の継承に伴って改元されます。つまり、皇位継承に際して、内閣が新しい元号を定めた政令が施行されたときから改元されることとなります。

天皇の退位等に関する皇室典範特例法の概要

 ところで、2017年6月16日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(以下、「皇室典範特例法」)が公布されたことをご存じでしょうか。

 「皇室典範」とは、皇位継承等皇室に関する事項を規定した法律です。皇室典範第四条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とありますから、原則として天皇崩御に伴って改元されることになります。

 しかし、今上天皇陛下が生前退位について、強いお気持ちをお示しになられたことから、皇室典範特例法が制定されました。皇室典範特例法第一条では、同法の趣旨を次のように述べています。

 「天皇陛下が、昭和64年1月7日の御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする」

 皇室典範特例法は、「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する」と定め、退位した天皇を「上皇」とし、上皇の后を「上皇后」としています。  さらに、皇位継承に伴い、皇嗣となった皇族については、皇室典範に定める事項について皇太子の例によるとしています。

 では、改元は企業法務にどのような影響を与えるのでしょうか。

企業法務への影響は

 改元されると、それ以後、古い元号を使用しなくなります。しかし、国や地方公共団体では、年号を元号で表記することが一般的であり、法律上も記載されているものもあります。

 たとえば、2020年に実施される東京オリンピック・パラリンピックについては、「平成32年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会」と表記されています。しかし、平成の元号は2019年4月末日をもって終了し、改元されることになるので、「平成」を冠したオリンピック等ではなくなるわけです。このような場合、法律を改正する必要があるのかが気になるところでしょう。

 この問題については、「昭和」から「平成」に改元された際にもありましたが、法律改正は不要であるとの結論となりました。なぜなら、たとえば「昭和70年」の場合、西暦何年であるかは自明であり、昭和を平成に置き換えれば事足りるため、法律を改正するまでもないからです。

 このことわりは、法律のみならず、一般の会社の契約などについても同様です。たとえば、平成33年12月末日まで有効な契約について、平成が終わり改元されたからといって、契約書を訂正する必要はありません。平成33年が西暦2021年であることは自明だからです。

 したがって、企業法務面において、改元による負担や影響が出ることはありません。もちろん、伝票等の帳票を元号表記している場合は、新しい元号にする必要がありますが、法的に強制されるわけではありません。

「元号」と「商号」

 元号を「商号」に使用することに制限はありません。会社法六条第一項は、「会社は、その名称を商号とする」と規定し、商号は登記事項とされているため(同法第911条3項2号)、会社である以上、必ず商号を登記する必要があります。その際、「昭和産業株式会社」や「平成商事株式会社」などの商号の会社を設立して登記することは可能です。

 実際、元号を商号に使用している会社は多くありますし、目にしたこともあるでしょう。

「元号」と「商標」

 前記のことから、元号を商号に使用することは可能であるとわかりました。では元号を「商標」として登録することはできるでしょうか。

 商標とは、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」と定義されています。また、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できない商標」は、商標登録ができないとされています。これを商標の「自他商品識別機能」と呼び、識別力のない商標は登録することができません。

 そして一般的に元号は、自他商品識別機能がないとみなされています。たとえば、「平成」は現在の元号として広く国民に認識されていますが、それは単に「現在の元号」として認識されているにすぎません。このことから識別力がないとみなされ、商標登録ができないのです。

 これは、「商標審査基準【改訂第13版】」において、「現元号として認識される場合(「平成」「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する」とされ、現元号に識別力がないため商標登録の対象とならないとされていることからも明白です。新元号の発表はまだですが、この点は留意しておきましょう。なお、これは旧元号についても同様とされる予定です。



小沢・秋山法律事務所弁護士
香月裕爾さん

1987年司法試験合格、1990年4月弁護士登録(東京弁護士会)主要著書:『Q&Aよくわかる高齢者への投資勧誘・販売ルール』『金融機関コンプライアンス・オフィサーQ&A』『アパートローンのリスク管理』共著(金融財政事情研究会)