月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

オープン型コミュニケーションに有効なITツールの使い方

2020-11-25 10:00

オープン型コミュニケーションにはITが欠かせません。ITツールを効果的に使うポイントを紹介しましょう。

オープン型のコミュニケーションモデル

 これからの時代は、一言でいうと「オープン型」の時代です。
 すなわち、自分たちの悩みや課題、「私たちはこれができます」などをオープンにし、組織内外の解決できるパートナーと素早くつながり(=コラボレーション)、トライ&エラーをして、素早く解決する、あるいは新たな価値を見いだすというものです。今はこれができる組織と個人が勝つことができる時代です。
 このような時代において、職場コミュニケーションの取り方も統制型(ピラミッド型)からオープン型に進化する必要があります。

オープン型に進化するためのツール

 オープン型コミュニケーションは、ただ働き方を自由にしたからといって自然発生するものではありません。それを支えるツールとそれらを使いこなすスキル、あるいはリテラシーも必須です。
 ここでは、オープン型のコミュニケーションスタイルに進化するために外せない4つのツールを紹介していきます。ビジネスチャット、オンラインミーティングツール、グループウエア、オンラインストレージです。筆者はこれら4つのツールを「4種の神器」と呼んでいます。

4種の神器

▼(1)ビジネスチャット

 ビジネスチャットは、メンバー同士、テキストでの会話やファイル共有などをタイムリーにやり取りできるコミュニケーションツールです。「Slack」「Microsoft Teams」「Chatwork」などが有名です。
 テレワークなど、デジタルな環境に身を置いて仕事をするメンバー同士の円滑なコミュニケーションには、ビジネスチャットはもはや欠かせないツールといっていいでしょう。
 ビジネスチャットは、テレワークのためのツールと捉えられがちですが、決してそんなことはありません。
 たとえば、公共交通機関での移動中、静まり返った/騒がしいオフィスなど、声を出しての会話がためらわれるシーンにおいても威力を発揮します。
 また会議中、その場ではいいにくい発言をテキストチャットでやり取りするなど、問題や課題の「いえる化」のあと押しもできます。
 メールは手紙を作文するような心理的な手間があったり、送受信のタイムラグが発生したりと、会話のようなシームレスなコミュニケーションを阻害してしまいます。その点でもビジネスチャットは有効です。

▼(2)オンラインミーティングツール

 オンラインミーティングツールは、いわゆるビデオ会議、音声会議ツールです。離れた相手同士で映像および音声を使用してミーティングが行えます。
 かつてはテレビ会議システムなど大掛かりな設備が必要でしたが、最近はパソコンやスマートフォンなどのモバイルデバイスを使用して個人レベルでの実施が可能となりました。
 「Zoom」「Microsoft Teams」「Webex」「Skype」「FaceTime」のほか、「Facebook」や「LINE」といったSNSでもビデオ通話や音声通話が可能です。
 ツールによっては1対1や1対Nの打ち合わせのみならず、N対Nのミーティングや講義、グループ分けをしたワークショップなども実施できます。オープンなコラボレーションの幅が広がります。

▼(3)グループウエア

 グループウエアは、組織内(外)の情報共有のためのツールです。スケジュール共有、情報掲示板、文書管理システム、ワークフロー、タスク管理などの機能を備えています。「G Suite」「Microsoft 365」「Garoon」などが有名です。
 中には、ビジネスチャットやオンラインミーティングツールを兼ね備えるグループウエアもあります。

▼(4)オンラインストレージ

 オンラインストレージは、インターネット上で電子ファイルやデータの保管や共有を行えるクラウドサービスです。代表的なものに「Google Drive」「box」「Dropbox」などがあります。

 社内に閉じたファイルサーバーと異なり、これらインターネット上のクラウドサービスは社外とのコラボレーションがスムーズになります。
 いずれも社内外のコミュニケーションを、場所や時間の制約を受けずにスピーディーに行うために欠かせないツールといえるでしょう。
 テレワークなど、離れていてお互いが見えにくい環境下はもちろん、オフィスで集まって仕事をする上でのコミュニケーションやコラボレーションも格段にしやすくなります。

 これら4種の神器を使って、シームレスかつ迅速なコミュニケーションが可能です。4種の神器を有効に活用できる例は次の通りです。


(1)チームメンバーとビジネスチャットでの相談や雑談を通じて問題や課題を言語化し、打ち合わせが必要だと感じたら

(2)グループウエアのスケジュール管理ツールで相手の空き時間を確認し

(3)すぐにオンラインミーティングをつないで議論

(4)ミーティングの資料や議事録をオンラインストレージに格納

(5)オンラインストレージに格納した資料や議事録のリンク先をビジネスチャットで共有(その場にいない関係者ともメールやビジネスチャットで共有しやすい)


 お互いの空き時間をメールや口頭でやり取りして、全員の空いているスケジュールを確認して、空き会議室を探して、資料を人数分印刷して、会議室に移動して......このような間接業務が格段に減っていきます。
 社員や取引先が、そのためのストレスから解放されるメリットも大きいでしょう。
 これら4種の神器を使いこなしてスピーディーにつながって仕事ができる組織と、そうでない組織ではビジネスの成長スピードにも格段に差がついていきます。働き方格差、ビジネス力格差にも直結するのです。
 テレワークのような、ITをベースとする柔軟な働き方を通じて得られるスキルやリテラシーを図にしてみました(図表)。

opencommunication01.jpg


 全項目の解説は控えますが、たとえば「1.ロジカルコミュニケーション」は「結論からいう」「手短に話す」「発言の種類を明確にする」「論点をナンバリングする」など、いずれも後述するビジネスチャットやオンラインミーティングツールを使ってスピーディーに仕事をするために欠かせません。
 このようなスキル、リテラシーがある人材は、間違いなく価値が高いです。「テレワークをするため」だけではなく、対面での仕事も迅速かつ高い
品質で進められるようになります。人材と組織の育成とアップデートのためにも、オープン型の仕事のやり方に果敢にチャレンジしていただきたいと思います。

ITを使った効果的なコミュニケーションのポイント

 オープン型に対応し、なおかつテレワークなど柔軟かつサステイナブル(持続可能)な働き方を実現するためには、IT活用は必要不可欠です。
 ここではその代表格となる、ビジネスチャット(「Slack」「Microsoft Teams」など)、およびオンラインミーティングツール(「Zoom」「Microsoft Teams」「Skype」など)を用いて効果的なコミュニケーションを行うためのポイントを解説します。

ビジネスチャット編

▼(1)短く、テンポ良く

 ビジネスチャットのメッセージの基本は「短く」「テンポ良く」「スピーディーに」。
 目安として、1行から3行程度にまとめるとよいでしょう。
 「相談があります。まず○○の件で......、次に△△の件で......、それから□□の件で......」と長大な文章を書き連ねる人もいますが、画面も小さく、読みにくいものです。相手に画面を延々とスクロールさせ、ストレスも発生させてしまいます。
 全員がパソコンを使っているとは限りません。スマートフォンなど、モバイルデバイスの小さな画面を使ってやり取りをしている人への配慮も必要です。
 たとえば


「相談が3点あります」 → ここでいったん送信
「一点目は......」 → ここでいったん送信
「二点目は......」 → ここでいったん送信


くらいが適切です。
 文章を短く区切れば、相手が質問をはさんだり、補足したり、「今、取り込み中なのであとで回答します」など状況も伝えやすくなります。
 ビジネスチャットは会話をテキスト化したものだと考えるとよいでしょう。
 テンポ良く、相手とキャッチボールするようなコミュニケーションを心掛けたいところです。
 ただし、相手が不在、なおかつ取り急ぎ用件を伝えたい場合(つまり「書き置き」をしたい場合)などは、その限りではなく、まとまった分量の文章を一気に送ってもかまいません。

▼(2)あいさつ文や過剰なクッション言葉は不要

 「お疲れさまです」「お忙しいところ恐縮ですが」などの冒頭のあいさつ文や、クッション言葉はビジネスチャットにおいては不要です。
 長い文章は、相手にストレスを与えスピード感のあるコミュニケーションを阻害します。また、あいさつ文やクッション言葉がないからといって「失礼だ」「礼儀がなっていない」と腹を立てるのもご法度です。メールや手紙のビジネスマナーは忘れ、シンプル&スピーディーを優先しましょう。

▼(3)結論、発言の種類を最初に書く

 画面のスペースが限られるビジネスチャットだからこそ、結論を最初にシンプルに伝えましょう。


「賛成です」
「承知しました」
「良いと思います」


 こう伝えた上で、背景や理由を説明する流れがスムーズです。
 発言の種別(あなたのその発言が、「質問」なのか、「相談」なのか、「共有」なのか)を最初に伝えるのも大事です。長々とした文章が展開されたあとに、「?なのですが、どう思いますか?」と問われても、相手は「え、私質問されていたの? 答えなければいけないの?」となり、最初から読み直す手間が発生します。
 最初に「○○さんに質問があります」と伝えておけば、相手は答える心の準備をしながら、あなたの文章を読むことができ、そのあとのやり取りもスムーズです。

▼(4)誤字脱字や「てにをは」の間違いを許容する

 ビジネスチャットのコミュニケーションは、スピードとテンポが命です。多少の誤字や脱字、あるいは「てにをは」の間違いに目くじらを立てていたら、スムーズなコミュニケーションが成り立ちません。
 メールと違い、あとから修正できるのもメリットです。スピードとテンポ優先で、間違いには寛大、寛容に。

▼(5)意思表示をシンプル&スピーティーに

 離れた人同士で仕事をしているからこそ、相手の反応は気になるものです。とはいえ、いちいち「了解しました」「良いと思います」など文章を打つのは手間となります。
 また、人数が多ければ多いほどタイムライン(画面)が意思表示の文章で埋まってしまい、元のメッセージを探しにくくなります。
 「いいね」ボタン(ニコニコフェースやサムズアップなどのアイコンで表示されています)やスタンプも活用し、シンプルかつスピーディーに意思表示をしましょう。

オンラインミーティングツール編

▼(1)「議題」「アウトプット」「参加者への期待」をまず明確にする

 離れた相手同士でも手軽につながりやすいオンラインミーティング。その分、なんとなく集まり、ダラダラと続けてしまいがちです。


1.何をする場なのか?(例:「決める」「情報共有」「意見交換」「アイデア出し」「報告」「連絡」「相談」)
2.目指すアウトプットは?(例:「提案書の完成を目指す」「予算案を3つ絞り込めている状態を目指す」)
3.各参加者への期待は?(例:「Aさんには品質保証の観点からの意見がほしい」「新入社員のBさんは、この会議を通じて社内用語に慣れてほしい」「Cさんにファシリテート(議事進行)してほしい」)


 この3点を明確にして、オンラインミーティングに臨みましょう。
 あるいは、この3点を考える過程で「わざわざ会議しなくても、チャットでやり取りすればよいのではないか?」などと気付くかもしれません。
 会議はあくまでビジネスを遂行するための手段です。目的やアウトプットに応じて、よりシンプルかつスピーディーなやり方を選択しましょう。

▼(2)話すスピードや「間」の調整を

 オンラインミーティングでは、通信状態や相手との環境の違いによってお互いの声が聞き取りにくく、ストレスになることもあります。また、相手の意思や表情、場の空気感も読み取りにくくなり、情報のロスやコミュニケーションの行き違いも生まれやすくなります。
 話すスピードを調整したり、「間」を意識的に小まめに置くことで、相手が理解しているかどうかを確認したり、質問や「音声が途切れました。今の部分リピートしてもらえますか?」など相手のフィードバックをはさみやすくなります。
 小まめな「間」があれば、あなたの声が聞こえなかったときのリピートの幅も短くて済むみます。すなわち、手戻りが少なくなります。
 話すスピードは「初めはゆっくり、徐々に速く」をお勧めします。出だしはいつもより気持ちゆっくり話し、お互いの通信状態や聞き取りやすさを探り、また画面越しの相手同士の話すスピードに慣れます。慣れてきたら、徐徐にスピードを上げ下げすれば混乱も少ないでしょう。

▼(3)顔出しを強要しない。ネットワークにも負荷をかける

 離れていながらお互いの表情を見ることができるのが、オンラインミーティングツールのメリットです。とはいえ、顔出しの強要は考えものです。
 オフィス同士の会議ならともかく、自宅からのテレワークなどプライベート空間のようすを見られたくない人もいるでしょう。
 テレワークとは、仕事がプライベート空間を「間借り」している状態です。プライベートにも配慮しましょう。


1. 静止画(顔写真やアイコン)の表示でよしとする
2. 最初だけ顔を出してもらって、そのあとは「画面OFF」でよしとする


 また、常時顔出しはネットワークにも負荷をかけます。
 「今日はWeb会議システムの挙動が重たいな」「通信が途切れるな」と思ったら、参加者全員いったん「画面OFF」にしてみて、声とテキストだけの参加に切り替えるなど柔軟に運用してください。

▼(4)ビジネスマナーを強要しない

 過度なビジネスマナーの強要も禁物です。前述の通り、統制型(ピラミッド型)の常識はオープン型の非常識。従来の常識やビジネスマナーは、オープン型コミュニケーションを阻害します。そして、オンラインミーティングやビジネスチャットでのコミュニケーションは、オープン型に適したコミュニケーションスタイルです。


1.服装は自由とする(スーツ&ネクタイ強制NG!)
2.顔出しを強要しない
3.「上司がログオフするまではログオフしてはいけない」「上司より先にログインする」のようなことをいわない/強要しない


 旧来のビジネスマナーの強要は、オンラインのメリットをすべて台無しにします。
 テレワークの場合、生活音が入ることもあるでしょう。
 「子供が話し掛けてくる/泣き声が入る」「ネコが乱入する」「インターホンの音が鳴る」といって、目くじらを立てるのは、あなたがオープン型に適応できていない証拠です。
 雰囲気の良い職場では、みんな笑顔で受け入れて流しているでしょう。その空気が、そのあとのコミュニケーションと人間関係を円滑にしていきます。
 ある意味で、職場の風土や組織の「徳」が試されているといえます。たとえば、ネコが「ニャーン」と鳴いたら、「ニャーン」と返してみるくらいの楽しむ余裕がほしいものです。

▼(5)チャットを併用する

 ビジネスチャットツールの併用も、オンラインミーティングを効率良く進行するためのポイントです。


1.通信状態が悪くなり、音声が聞き取りにくいためビジネスチャットで会話を進める
2.議事メモをビジネスチャットで取り、参加者とリアルタイムに共有する
3.参考情報が記載されたWebサイトへのリンクなどをビジネスチャットで送る
4.質問をテキストチャットで投げ掛ける/回答する


 音声のみの会話よりも効率的かつ会議の質を高めることができます。「Zoom」「Microsoft Teams」などはビジネスチャット機能を兼ね備えていますので、そちらを活用してもいいですし、「Slack」など別のビジネスチャットツールを併用してもいいでしょう 。

▼(6)小まめに休憩を取る

 特に慣れないうちは、オンラインのミーティングは意外と気力と体力を消耗するものです。
 目はもちろん、イヤホンやヘッドセットを長い時間装着していると頭や耳にも負担をかけ続けます。対面の会議以上に、小まめな休憩(目安は45分-60分に1回程度)を取り、リフレッシュしましょう。

▼(7)最新のデバイスを活用しよう

opencommunication02.jpg 最近は通信デバイスも進化しています。最新のデバイスを使えば、オンラインミーティングのストレスや体の負担もかなり軽減されます。
 たとえば、筆者が愛用しているヤマハ株式会社のコミュニケーションスピーカーフォン「YVC-200」(写真)。手のひらサイズで持ち運びがしやすく軽い上に、ささやくような声でも相手に明瞭な音で伝わり、野外でも雑音が伝わりにくいなどの技術により快適な音声コミュニケーションが可能です。筆者はダムが好きで、ダムの際のあずまやや、止めた車の中でWeb会議・音声会議をすることも珍しくありませんが、快適な音声コミュニケーションができています。
 ヘッドセットが不要なのも魅力です。頭や耳に負担がかからないので、複数人対複数人の多拠点会議、トークイベント、講義などでも重宝しています。
 こういった最新技術を使った、新しいデバイスを活用しましょう。間違いなくコラボレーションをあと押ししてくれます。

※『月刊総務』2020年8月号総務のマニュアル「チームを強化するこれからの時代の効率的な情報共有のポイント」CHAPTER3を一部改変して掲載



●執筆者プロフィール
あまねキャリア工房 代表 沢渡あまね
1975年生まれ。作家、業務プロセス・オフィスコミュニケーション改善士。あまねキャリア工房代表(フリーランス)/なないろのはな 取締役・浜松ワークスタイルLABO所長/NOKIOO 顧問/ワークフロー総研 フェロー。日産自動車、NTT データ、大手製薬会社を経て2014 年秋より現業。経験職種
は、ITと広報。300以上の企業・自治体・官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書に『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』(翔泳社)、『職場の科学』(文藝春秋社)、『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』『業務デザインの発想法』(技術評論社)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)など。