総務のトピックス

【労務トピックス】:

【裁判例の解説】懲戒処分と降格の有効性

2016-09-16 10:52

 昨年最高裁で判決が出た労働裁判例の中から、人事労務担当者にとって知っておくべき判例として、L館事件(最二小判平27.2.26労判1109.5)を取り上げます。
 これは、部下に対するセクハラを理由とする懲戒処分・降格の有効性を問うものでした。
事件の概要、判決のポイント、実務上の留意点を交え解説いたします。

1.事件の概要

 水族館等を経営するY社で、X1、X2は、女性派遣社員Aらに対して性的に不快な言動を繰り返し行っていた。申告を受けたY社は、X1らからの事情聴取などを行ったうえで、出勤停止の懲戒処分をし、併せて、X1らの資格等級を1等級降格し職位異動した。これに対し、X1らが懲戒処分や降格の無効を主張し、未払賃金の支払いなどを求めて提訴した。1審がY社による懲戒処分と降格を適法としたことに対し、2審は懲戒処分を濫用・無効としてXらの請求を認めた。Y社による上告に対し、最高裁は2審判決を破棄した。


2.判決のポイント

(1) セクハラ言動は懲戒事由に該当するとした点。
(2) 今回の懲戒処分は相当であり有効とした点。
(3) 懲戒処分を理由とする降格は人事権の濫用とは言えず有効とした点。

 結論として、一つの事由に対し懲戒権の有効性とその懲戒処分を根拠とする人事権の有効性が同時に認められたという判例です。


3.実務上の留意点

(1) セクハラ言動は懲戒事由に該当するか

 使用者が懲戒処分を適法に行うには、懲戒権行使の根拠(就業規則等で懲戒事由及び懲戒処分を行う定めをする)が必要です。最高裁は、X1らのセクハラ行為は、Aらの「執務環境を著しく害するものであったというべきであり、当該従業員らの就業意欲の低下や能力発揮の阻害を招来するものといえる」としています。
 併せて、管理職の職位にあったX1らは、Aらに対し、少なくとも1年以上にわたってセクハラ行為を繰り返しており、同社の就業規則に定められている懲戒事由「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」「服務規律にしばしば違反したとき」に該当するとしています。


(2) 懲戒処分は相当か

 2審判決では、Aらからの明確な拒絶が無かったこと、及び、X1らが処分前にY社から具体的にセクハラ行為を止めるよう警告や注意などを受けておらず、Y社のセクハラ行為に対する具体的方針や取組みを認識する機会がなかったことなどを理由に、処分は権利濫用としました。しかし最高裁は職場でのセクハラ行為については、被害者が職場の人間関係の悪化などを懸念して抗議や申告を控えることがあること、Y社ではセクハラ防止を重要課題として研修を実施する等日常的・継続的に取り組んでおり、管理職として指導すべき立場であるX1らは当然に認識すべきとし、懲戒処分を有効としています。


(3) 懲戒処分による降格は人事権の濫用か

 本件では、X1らの降格についても争われました。降格は、就業規則の降格規定等に法的根拠を有すること、職能資格制度を定めた規則において等級の引き下げが有り得ることを明記している必要があります。最高裁は、Y社の資格等級制度規程は懲戒処分を受けたことを降格事由としていること、現に非違行為があって懲戒処分が有効である限り合理的だとし、降格の処分内容も相当として人事権の濫用とは言えないとしています。

 上記を踏まえ、今一度、社内の懲戒規定や等級制度の運用が法的に有効であるか確認しておく必要があると言えるでしょう。


連載協力:税理士法人AKJパートナーズ
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